第4章 男子禁制90 大将の首取ったど~?
翌日、怜はドクタ・カレンの研究室に出向き、リサの正体は姫野だったと報告した。
「そう。その姫野さんという子、かわいそうね。また元気になってあなたたちと一緒に学生生活を送れるといいわね」
「はい。そう思います」
「ただ、それに便乗させてもらいましょう。夏川リサの浄霊に成功したと学長に報告するの。そうすれば公認がもらえるわ」といった。
「いいんですか?」と怜が聞くと
「だってリサはもう現れないのだから同じよ。嘘も方便。それにリサが生き返ってないなら『死者の書』も嘘だってことだし、良かったわ。ご苦労さま」とカレンは答えた。
怜はカレンの研究室を出ると学食に向かった。
その頃学食では十日ぶりに姿を見せた桃李にモモノフは狂喜乱舞していた。桃李から連絡を受けたことで彼と特別な関係にあるとアピールすることに成功した美咲は当然のごとく桃李の隣にべったりと座っている。
「なんか、廣田さんすっかり彼女気どりよね」
いつもの席でソフトプリンを食べながら巴萌がいった。
「でも桃李も桃李よ。まんざらでもなさそう」
「おや、焼きもちですか?」
「まさか」と答えたものの、あんな女に優しくして欲しくなかった。形式とはいえわたしは婚約者なのに。「廣田さんがわたしにわざと見せつけてくるのが不快なのよ。わたし関係ないのに勝手に勝ち誇ったような顔して」
「向こうも女の勘で何か勘づいているんじゃない?」
「何を?」
「紫生と桃李の関係」
「だからわたしたちは関係ないのよ」
「へえ」と巴萌は意味深な笑みを浮かべた。「あ、怜様よ」
怜が学食に入ってきた。すると飼い主を待っていた犬の群れのように黒沢会が一斉に立ち上がる。しかし怜はそのまま紫生たち秘境クラブのテーブルにやってきた。
「ほかの奴らは?」
「まだ授業みたい」と紫生が答えた。「ドクタ・カレンどうだった」
「それがもしかしたら公認になれるかもしれない」
「やったあ」と紫生と巴萌は喜んだ。
そこへ美咲がやってきた。桃李はランチのプレートを下げにいったようだ。
「黒沢君、これどうぞ」といってモモノフと黒沢会の視線を一身に集めながら、小さなリボンのかかった包みを差し出した。
「何?」と怜が聞くと
「インフルエンザのお見舞いと回復祝い」といって茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。
「インフル? いや、インフルなんてかかってないけど」
「え? 桃沢君が黒沢君の親戚の家に法事に行ったら二人ともインフルに掛かったっていったけど」
「法事? インフル? それは桃沢が適当についた嘘だよ。僕らはボランティアに行っていたんだ」
愕然とした表情で美咲はプレゼントを引っ込めた。周りを見ると二人のやりとりを聞いていたモモノフと黒沢会はシラケた目で自分を見ている。
咄嗟に壁にはめ込まれた大きな鏡を見るとついさきほどまで女王のように自信に溢れていた自分の外の殻が粉々に砕け散り、中から現れた惨めで貧相な女がそこに映っていた。思わず目を背けた。
「そうなんだ」というのが精一杯で一人で学食を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます