第3章 魔本家への召喚47 噂の女
気が付くと紫生は桃李と怜と共に桃屋旅館の本館と桃沢家の居住部分である旧館を繋ぐ渡り廊下にたっていた。渡り廊下と裏の双竜の滝にかかる赤い橋は獣道と繋がっているのだ。紫生はすぐにリビングに向かった。
リビングで海を見つけると紫生は「海、無事だったのね。よかった」と海を抱き寄せた。
「無事だよ、どうしたの?」海は不思議そうに紫生を見上げた。
「今俺たち、魔本家から帰ってきたんだ」
代わりに答えた桃李の言葉にプッチも驚愕した。
「本家? 何の用だったんだ?」プッチがソファの上に飛び乗った。
「うん。その件で後で爺に聞いてみたいことがあるからそのとき話すよ」
と桃李が答えると、代わりに昼にリサを見かけたことを思い出した紫生はそのことを怜に話して聞かせた。
「桃李、お前はリサを見たのか?」
「いや。俺がすぐに外を見た時にはいなかった」
「死人が生き返るなんてありえないよ」
「俺もそう思うんだけど」
「似た制服はいくらでもあるから、実際に似た人間がいるのかもな」
「ああ。それならあり得る」
「でもわたしは見たのよ」
「桃李」海が不安そうな顔で寄ってきた。「リサが生き返ったの?」
声が少し震えている。
「生き返ってないよ。どうやら俺たちの大学の近くにリサと似た高校生がいるらしいんだ」
「本当に? お姉ちゃん見たんでしょ?」
「紫生が見間違えるくらい似ているらしいんだ。でもリサじゃない。死んだ人間は生き返らない」
「本当に?」
「本当さ」
「気にするあまり、神経質になり過ぎて似たような制服の子を見間違えたのかもね。最近、似た制服の子を見るたびにリサじゃないかと確認してたから。同じ高校の子もあの辺によくいるし。今日も女子高生がたくさんいたでしょ?」
「ああ。まあね」桃李は頷いた。
確かにあの時、通りには似た制服を着た女子高生がたくさんいた。
「とにかく死人が生き返るなんてことは絶対にない。僕は他人の空似だと思う」と怜がいった。
「または幽霊? それも怖いわ」
「幽霊こそあり得ないさ」
「とにかく、俺が見たときにはリサはいなかった。きっと似た子がいたんだよ」
「そうね。もう忘れる! 海、大丈夫よ」紫生は不安げにみんなの話を聞いている海を抱き寄せると声を弾ませ話を変えた。「ところで怜。今日どこにいったの?」
それがやはり気になる。
「あ、ああ。服を買いに」
「服? 何買ったんだ?」桃李が聞いた。「荷物持ってねえじゃん」
「いや。僕じゃないんだ」
「女か?」
「まあ」
「え? 誰?」紫生が喰いつく。
「学長の姪だよ」
「ん? 誰それ?」
紫生は眉間に皺を寄せたが桃李はすぐに思い出したようだ。
「あの、永井記念館で会った女か?」
「うん」
「彼女と連絡取りあってるのか? いつの間に? 名刺もらったよな。まさか、あのあと連絡したのか? お前、やるなあ」
「いや、僕のメアドを調べて向こうから連絡してきたんだ」
「積極的だな。長野さんだっけ?」
「ああ。長野蝶子」
「ねえ、誰なの、その人?」
紫生が待ちきれずに聞いた。
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