第2章 モモノフvs黒沢会25 ドクタ・カレン1
一週間後、秘境クラブの大学の公認サークルへの申請は却下になった。
却下理由は、最低人数はクリアしているものの、活動期間が短いというものだった。いつもの談話スペースに集まった秘境クラブのメンバは全員渋い表情でしばらく黙り込んでいたが、口火を切ったのは高梨だった。
「絶対公認取れると思ったんだけどなあ。活動期間が短いっていわれるとどうしようもないよなあ。新しいんだから」
「サークルの申請が多いから、そう簡単には公認が取れないんだな」山之井も肩を落とした。
「すまない。申請書のアピールが下手だったのかもしれない」
怜が謝ると、メンバはこぞってそれを否定した。
「怜が書いて駄目なら、誰が書いてもだめよ」
「申請書の問題じゃないよきっと」
それを聞いていた桃李がボヤいた。
「そんなこといわれたら、新規のサークルは絶対公認とれないじゃないか」
「新規でもよほど公共性が高いとか、社会に貢献できるとか、そういう理由が認められれば公認が取れるらしい。ボランティアとかさ」怜が説明した。
「じゃあ、秘境巡りのガイドボランティアをやりますとかならいいわけ?」
紫生の質問に怜が頷いた。
「そんな感じだ。でもそういうサークルってほかにもあるから歴史と実績のあるとこが有利だ」
「じゃあ、公共性があって新しいことをやればいいってことか?」桃李が聞いた。
「簡単にいえばね」
「あるわけないよなあ。そんなの」
高梨が胸の前で腕を組んだまま天井を仰いだ。その時ちょうど怜のスマホにメッセージが届いた。
「ドクタ・カレンからだ」といって怜はメッセージを開いて読んだ。「いまからドクタ・カレンの研究室に来てくれだって」
「えーなんだろう?」
紫生が聞くと怜は首を黙ってひねった。
「たぶんサークルが公認をとれなかったことに関することだろうな。とりえあえず、今日はこれで解散しよう。みんなはもう先に帰ってくれ」
サークルのメンバは、ベンチを立って帰り始めた。
すると怜は「桃李、ちょっといいか?」と桃李だけを呼び止めた。
「なんだ?」
桃李が一人だけその場に残ると
「ドクタ・カレンがお前も一緒に連れきてくれっていうんだ」と怜が伝えた。
「え? 俺? 何で?」
さすがにこれには桃李も驚いたようだ。
「このまえの永井記念館のことじゃないか? それしかないだろう。俺たち二人って」
「どういうことだよ。あの女、お前が口封じしたじゃないか。ちなみにこれは掛詞だぜ」
桃李は我ながらうまいことをいったといわんばかりに得意げな表情を浮かべたが怜は真顔で
「つまらないジョークをいうな。気が変わって何か報告されたのかな」
「やばいなぁ。俺とお前があそこでやったと思われたか。それともお前があの女にキスしたことか。またはその両方。でもなんでドクタ・カレンのところに?」
「わからん。仕方ない。いざとなったらひたすら謝罪しかない。とりあえず行ってみよう」
二人は一緒にカレンの研究室のある七号館に向かった。
カレンの研究室は七号館の二階の一番奥にあった。ドアをノックすると中から「どうぞ」というカレンの声が返ってきた。
「失礼します」と怜がゆっくりドアを開けて二人が中に入ると、部屋の奥のデスクでパソコンの画面に向かっているカレンがいた。
「どうぞ。こっちに来て」
カレンはパソコン画面を見たまま、二人に入るように促した。部屋の中は、いろんな言語で書かれた書籍が所狭しと置かれていて、本棚に入りきらないものは、テーブルの上にも平積みになっていた。ほかにも世界中の民族の人形や、仮面や、調度品が一つの棚にびっしりと並べられていて、カレンが世界中の文化や言語に精通していることが伺われた。混沌とした部屋には似つかわしくない、強めのアロマの香りが部屋には立ち込めている。
「悪いわね」
二人がデスクの前に行くとカレンは、ようやくこちらを向いた。
「いいえ。何でしょうか?」
やや緊張した面持ちで怜にいきなりカレンが聞いた。
「あなたたち、永井記念館で何やったの?」
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