第2章 モモノフvs黒沢会23 秘密6
「あるわけないだろう」
桃李はすぐに否定した。
「でも、どうしてリサの目撃情報があるの?」
「それは誰かの悪戯だよ。死者の書が流行っているからそれに便乗した誰かが、リサの目撃情報を悪ノリで書き込んだんだとしか思えない。うちの高校から来た内部性なら誰だってリサのことを知っているんだから」と怜はいった。
「そうよね。やっぱりそうよね」
紫生は自分を納得させるように、そう繰り返した。
「そもそも、その死者の書ってのはどうやって死人を蘇らせるんだ? まじないって山之井がいっていたよな?」
桃李が怜に聞いた。
「僕も、さっき調べたんだけど。やりかたは簡単だ」
怜はそういいながら自分のスマホを取り出して、ボードを声に出して読んで聞かせた。
「メールアドレスに『shisyanosyo@yomigaeri.com』と入力して、タイトルに生き返らせたい人の名前を書いて空メールを送るだけ。すると、死人が生き返ると書いてある」
「それだけなの?」
呆気ない方法に紫生が少々拍子抜けすると、怜はスマホを見ながら続けた。
「そう。『死者の書 やり方』で検索したらいくらでも出てくる。でも必ず宛先不明で戻って来るそうだ。つまり存在しないアドレスってことだ」
「だったら余計インチキじゃないか」
桃李は腹立たし気にいった。
「うん。最初に書き込みをしたのは誰だか知らないけど、こういうのはあっという間に拡散するからね。しばらくすればみんな飽きて忘れるよ」
「そうね」
「お姉ちゃん、リサは死んだんでしょ?」
紫生たちの話を聞いていた海が声を震わせて不安そうに聞いてきた。海は夏川家でのことを話したがらず思い出すだけで怯える。
「そうよ。もう亡くなっているのよ。お葬式もあったでしょ?」
「うん。でも学校でも『死者の書』って誰かがいっていたよ」
「もう小学生の間で流行っているのか?」
「むしろ小学生の間で流行って、それが大人に広まるんじゃないのか?」
怜がいった。
「きっとそうよ。子供が好きそうじゃない、こういうの」
「まあな」
「ねえ、一年前の『呪いの手紙』も小学生の間で流行ったわよね」
「呪いの手紙」とは、呪いたい相手のことを書いて手紙を出すと、手紙を出した本人が死んでしまうというもので、一年前に巷で大流行した。その手紙の宛先は、ほかならぬ貂天童子火分神である黒沢家だったのだ。
「ああ。あの当時、あのデマのせいで僕のところにもたくさんの呪いの手紙が来たよ」
「今度も単なるデマよね」
紫生の質問に桃李が答えた。
「あたりまえだろ。一年前は、呪いの手紙の差出人の念を利用して怜がスピリットをおびき出して鬼退治をしたけれど、『死者の書』は俺たちと無関係だ」
「そうよね」
そこへプッチが足音も立てずにやってきていった。
「おい、
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