勇者にみんな寝取られたけど諦めずに戦おう。きっと最後は俺が勝つ。

さとう

【route 1】

1・お荷物の盾


 幼なじみ姉妹、義理の妹、そして近所のお姉さん。

 物語なら恋愛対象、それこそ小さい頃は結婚するだのずっと一緒だの言うこともあるだろう。

 

 俺ことアークも、そんな誓いをしたことがある1人だ。

 

 「アーク、盾!!」

 「お、おうっ!!」

 「そのまま待機!! ユウヤ、今ですっ!!」

 「おおっ!! ゴールドスラッシュ!!」

 「う、がぁぁぁっ!?」


 現在、俺たち勇者パーティーは、漆黒の龍と戦闘中。

 俺のスキルである《輝く盾》で龍のブレスをガード。その隙に勇者ユウヤの持つ、『聖剣アンフィスバエナ』が黄金に発光、衝撃波となり龍の首を切断した。


 龍の首を切断するほどの衝撃波は、近くに居た俺をも吹き飛ばす。

 勇者の放つ1撃は強力で、俺の盾なんてないに等しい。っていうか盾はあっさり砕け散り、俺は地面を何度も転がった。


 「やったねユウヤ!! 黒龍を倒したわ!!」

 「さすがユウヤです。これで『龍の封印』はあと4つ。魔王城への道が開かれますね」

 「うふふ、お姉さん惚れ直しちゃったわぁ……」

 「ちょ、フィオーレ姉さん!! ユウヤにくっつきすぎよ!!」

 「あはは。これもみんなのおかげだよ、ありがとう」


 俺のことなんて眼中にないのか、勇者パーティーは全員ユウヤの傍に行く。

 盾のおかげだろうか、打ち身や打撲はあるが何とか動ける。俺は立ち上がり、自分の状態を確認した。


 「い、てて……」


 俺の装備は一般的な鉄の軽鎧と剣。

 衝撃で鎧にはヒビが入り、顔には擦り傷のせいか血が流れてる。

 適当に顔を拭い立ち上がった。


 「ちょっとアーク、龍の素材をはぎ取って食事にするわよ。さっさと解体に入って」

 「わかってるよ、シャオ」

 「兄さん、魔力を消費したので食事はたっぷりお願いします。ステーキなんていいですね」

 「わかった、ローラ」

 「アーク、ジュースちょーだい。みんなのぶんね~」

 「待ってろよ、ファノン」

 「アークくん、龍の素材は高価なので、鱗を剥ぎ取るときは気を付けて下さいね」

 「はい、フィオーレ姉さん」


 幼なじみ姉妹のシャオとファノン、義妹のローラ、近所のお姉さんのフィオーレ、そして勇者のユウヤ。

 これが魔王を倒すべく選ばれた、パーティー。


 「アーク、まずは食事を作ってくれ。食べられる分の龍肉を先に解体してくれ」

 「………ああ」

 

 俺の負傷なんて誰も見ていない。気にしていない。

 俺が簡易テーブルと椅子を出すと俺を除く全員が座り、今の戦闘を称え合っている。

 ユウヤがあーだこーだ、だけどみんなもスゴかったあーだこーだ。だれも俺の仕事を見ていない。


 そりゃそうだ。

 だって俺は、このパーティーのお荷物で盾役。

 勇者ユウヤの命令で、使い捨ての盾として選ばれた平民だから。



 俺は痛む身体に渇を入れ、ドラゴンの解体に入った。

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