好きなだけ食べていいぞ

イヤマナ ロク

好きなだけ食べていいぞ

飲食店が賑わうゴールデンタイム。

とある町のバイキングレストランは今日も賑やか

「いらっしゃまっ…せぇ。……何名様のお越しで?」

「7人です。」

父親らしき人物が答える。

店員は中を見渡し、… 30分は稼げるなと心中でつぶやきながら

「それでは、こちらに名前を書いて少々お待ち下さい。」

父親は順番待ちの紙に名前を書いて、家族と共に待機用の椅子腰掛ける。

「ねーおとーさーん待てないよー」

末っ子らしきの三歳児の男の子が大声で言う

「私もお腹ペコペコだからさー30分とかマジ無いわ。」

おそらく長女の中学生位の女子もそれに合わせてつぶやく

「2人とも子供みたいなこと言うなって、あんま父さんと母さん困らせるなよ」

「高校生ぐらいの長男がたしなめる

でも、確かに30分は長いわ。別の店にする?」

お母さんらしき女性が夫に呼びかける。

「いやでも、この時間なら多分どこもおんなじ位待つだろうな…もう食べちゃうか」

と言って、父親が椅子から立ち上がる

「よーし好きなだけ食べていい、がぁっ!」

父親の頭に衝撃が伝わってくる。

先程の店員が後ろから走って飛び掛かりドロップキックを食らわしたのだ。

「佐々木さん、今です!」

鬼気迫る顔で、店員は言う。厨房係の佐々木は後ろからの攻撃を喰らい前方によろけた、顔面に思い切り包丁を突き立てる!口内に包丁は喉仏を突き刺し、えぐりとり、血肉を溢れさせ、店内は凄惨な状況になるかと思いきや…そこには客が食事を楽しむ空間が引き続き続いていた。

ガリ、ガリ、

「うーんちゃんと研いでないなぁ。サビの味が若干する。」

父親は冷静に答えながら、前まで包丁の刃をバリバリと噛み砕いていた。

「そもそも金属は好きじゃないんだ。やっぱり肉だな。」

言葉を出さずに固まっていた佐々木の腕を引き抜き父親は平げる。父親はもう片方の腕、頭、足、胴体も次々に口に運んでいく。彼の食べっぷりは人を食べていると思えないほどに綺麗で、1歳の体液もカスも落とすことなく

食べ残しも一切なく食べ終えた。

「うんうまいじゃん。人間にしてもまあまあだったなぁ。」

「お父さんフライングは禁止でしょ。」

「ってそういうお前もさっきの店員食ってんじゃん。」

「だって待てないもん。」

さっきの店員もこの家族の餌食になっていた。

「じゃあ改めて、好きなだけ食べていいぞ。」

好きなだけ食べた家族は腹八分目だったそうだ。








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