記憶

午後になると、瑠生が病室に来た。

「美月〜!!体調はどう?今日はね〜」

「うわ、また来た...」

「うわって!!ひどいなぁ。あ、そうそう、藤井先生から手紙もらってるよ!目が覚めたって言ったら、すごく喜んでたよ!良かった〜って。みんなも喜んでた!また後で読んでみて!」

すごい一方的に喋るなあ。藤井先生?担任の先生なのかな?

「あ、うん。ありがとう。あのさ、私って何歳?あと、藤井先生?みんなって誰?」

「美月は14歳!!あともうちょっとで誕生日だよ!病院だけど小さいパーティーならできるんだって。楽しみだね〜あと、藤井先生は僕らの担任の先生で、みんなは...一人ずつ名前言ったほうがいい?恵梨香と、進と、圭人と...」

「ストップ!分かった、ありがとう。」

「ううん!あ、僕そろそろ塾だから今日は帰るね。また明日!」

そう言い、瑠生は病室を去っていった。病室に一人残された私は、大量に与えられた情報を一つ一つ整理していった。何から手を付けたらいいのかわからないので、とりあえず瑠生に渡された手紙を読んで見ることにした。『美月へ 谷崎さんへ みつきへ みっちーへ 美月さんへ みーへ 』これ個人で書いてあるんだな。一人ずつ字も違えば私の呼び方も違う。一枚一枚見ていくと、ふと気になる一枚を見つけた。みんなの紙はきれいで、すこしよれているけどきちんとしているのに、これだけくしゃくしゃだ。宛名もない。それに、何これ。アラビア語か何か?解読不可能。

『また入院かよ。本当に堪え性のないクズだな。

 つきあってらんねえ。          

 てか生きてる意味ないわお前。

 るいに告られたからって調子乗ってんじゃねえぞ。ばぁか 』

え...。何これ...。私いじめられてんの?てゆうか、るいってもしかして石井のことなの?え、私あいつに告られてたの!?だからあいつ毎日毎日ここにくるのか...。私OKしてたのかな...?今だったらする?いやいや、だめだ。私には早馬さんという超かっこいい王子様がいるんだからっ!もし仮にOKしてたのなら悪いけどお断りしよう。それはそうと、本当にこれ誰が書いたの?きったない字。字からして女子ではないのかな?でもこれっていわゆる嫉妬でしょ?なら男子ではないよな...いや、可能性は....?うーん、謎。てかこれ何分かけて読んだと思ってんのよ。すごいボロカス言われてんだけど私。次瑠生が来たらこれ見せて問い詰めてやろう。ということで、これは一時保留。

そして、私は、14才。ということは、中学二年生。仮に早馬さんが高校3年生だとしたら...18歳。4歳差か。私に兄弟がいたのかはわからないけれど、お見舞いに来ないのできっといないのだろう。そう考えるとなんだかお兄ちゃんみたいだな。お兄ちゃん、なんて呼べたらな...年的に先輩のほうがいいか。早馬先輩。言ってみてなんだか恥ずかしくなってきた。これじゃあ彼女みたいじゃん。...彼女いるのかな?いたらどうしよう。失恋して一人泣いている姿が容易に想像できる。思い浮かべるだけで、泣きたくなってくる。お願いだから早馬さんに彼女がいませんように〜!人間とは勝手なものだ。昼とは打って違う祈りをどこかの神様にお願いしながら、私は眠りについた。

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