第2話 鳥族惨殺事件

「改めて自己紹介。俺は鳳翼おおとりたすく高校三年生、こちらは耶弥耶翼かみやよく中学一年生」


イケメンのお兄さんが、口を開いた。

隣で可愛いくまの帽子を被った男の子が頷いてる。


よくある喫茶店の一角で、つばさよくたすくの3人は真剣な表情で向かい合っていた。


「突然の事で驚いてると思う。俺とよくの2人は小さい頃から羽根が生える体質で、まぁ遺伝なんだけど、君もその血筋をひいてる筈なんだ」

「はぁ…」


そりゃ驚いてる。いきなり羽根が生えたと思ったら、自分が鳥人間だとか言われるなんて。

今まで普通の女子中学生として生きてきて、つまんない人生だと思ってた。


「なんで仲間を集める必要が?」

「良い質問だね」


つばさの質問に、よくが答えた。たすくが言葉を続けて言う。


「平たく言うと、君が1人だと、君自身に危険があるかもしれないってことだ」

「危険???私が???」


「鳥がいるって事は猫も居るんだよね」


よくが簡単に説明した。


「猫が鳥を捕食するのは知ってるよね?猫の一族とは、もう大分前に、和解した筈だったんだ。我々には人間の血が入ってるし、向こうも同じくヒトとしての知性を有している筈だった。俺達は和解して、段々猫や鳥としての能力を使わなくなる事で動物としての能力は退化して来てるから、君みたいに血を引いてても気付かないとかはザラなんだけど、事態が少々変わってきていて…」

「はい…?」


たすくが詳しく説明していく、その内容に、何とかつばさはついていく。


「数年前に、その種族間の約束が破られた。お互い干渉せずに人間として生きてく筈が、鳥族の仲間が惨殺されたんだ。警察は普通の強盗殺人事件として片付けた。でも原因は猫族と鳥族の争いな事は明らかだった。何故戦いが現代になって蒸し返されたのかは、まだ不明だけど、俺達は身を寄せ合って、情報を集めて、守りあって、また戦いを終わらせなきゃいけないんだ。俺達は、君を守りたいし、君の力を借りたい」

「私の力?私にも何か力があるんでしょうか?」


「君が君で居てくれるだけで、役に立つんだよ」


よくが言った。


「猫族は不安定な能力、まだ完成されてない君を狙う確率が高い」

「え???」


それってあたし、ピンチなのでは…


「俺の友人に、榛琳紗はしばみりんさと言う能力者が居るんだ。所謂平和の使者みたいな感じで、昔から猫族と鳥族の間を取り持つ様な働きをしている一族がいて、数年前に猫族に襲われた時は、見つからない様にバリアみたいなものを俺とよくにかけてくれたんだけど、君みたいな能力に目覚めきってない鳥族は見つけられないから護りを張れなかったんだ。でも、最近君が目覚め始めた事で、俺達は君を見つけた。そして多分、猫族も君を遅かれ早かれ見つけると思う」

「つまり、ぼくとたすくは護られてるけど、君は向こうから丸わかりになる」

「数年間、ずっと動かなかった事件が動くかもしれない。幼すぎて対応出来なかった、何も出来なかった自分が、今度こそ…」

たすくは事件を解決したいと願ってる。ぼくは仲間として協力したい。君は危ないから護りたい」

「…それって、私は囮みたいな感じって事ですか?」

「悪く言うとそんな感じだね」


たすくは苦笑した。


「それはいくら何でもネガティブ過ぎるよ」


よくは少し呆れたように言う。この子、中一であたしより年下だし、見た目もくまの帽子なんて被ってるし、髪色はピンクブラウンで、顔だって可愛い。

なのに、どこか大人びてる感じがする。明るいだけのあほなクラスメイトとは、違う明るさを内包している感じがする、上手く言えないけど、侮れない感じがして、惹き込まれそうな魅力を感じた。


「じゃあ、素直に護ってもらえるんだと喜んでおきます…」


足をプラプラして、少し納得いかない様子で、呟くと。


「君がどう思うかに関係なく、事態はもう動きだしてるんだよ」

「と言う訳で、よろしくね、つばさちゃん」


「…呼び捨てで、いいわよ」


よくがにこにこして手を差し出すと、つばさは今度こそおずおずと手を差し出した。


「…よろしく」



その時、退屈な毎日が、塗り替えられる予感が、した。

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