第24話 「最初の」前世はもっとすごい?
キィ、と扉が開く音がした。
その方向を見ると、雪の様な真っ白な髪と、闇の様な黒髪が見えた。
こんな感じの白黒ペアと言って真っ先に思い浮かぶのは、ジル殿下とティア様だけど……この二人は、既にこの場にいる。
今入ってきたのは、もう片方のペアの、フリード様とリリー様だ。確かに、この二人も白黒だった……。
「待たせてしまってすまない。マリー嬢も、病み上がりなのに申し訳ない」
「いえ、大丈夫です」
暴走状態から起きたのにも関わらず、まず最初に思ったのが、「ルーナ可愛い」でしたから。
そう言おうとしたけれど、完全に余計なことなので、そっと心の奥底に仕舞っておくことにした。ちなみに私は暴走しているとき、ルーナに手を掛けようとしたらしい。首を切って詫びます。本当に申し訳ありません……っ。
……と、ここまで私がハイテンションなのも、この場の空気が重すぎるから。
場の空気と反比例していくかのように、私の気分は上がっていく(正確には、無理矢理上げている、だろうか)。
こんな重い空気が苦手だから、何とか平静を保とうと、無意識にハイテンションなのかもしれない……。
それにしても、と周りを見る。なんだかやっぱり、奇妙なメンバーだ。でも、なんでこんなに奇妙なメンバーなのかということは、予想がついている。
ここにいる全員は、恐らく、というかほぼ確実に、四大神の生まれ変わりに関係してる人たち、だろう。まさかリリー様とティア様まで関係してるとは思わなかったけど。
「皆さん、本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。マリーも、病み上がりなのにありがとう」
エルザが、いつも変わらないキリッとした様子で話し始めた。
「本日は、私たちからマリー、ジル殿下、フリードリヒ殿下、ルイス様にお伝えしなければならないことがあります」
ああ、来るぞ来るぞ。あ待って、どんな反応すればいいか何も考えてなかった。ちょ、一旦待って、一旦待っ────
「単刀直入に申し上げますと、皆様四名は、四大神様たちの生まれ変わりとなります」
……上手く反応できなかったのを誤魔化すように、私は思わず、他の三人を見た。
ジル殿下は怪訝そうにしかめっ面をし、フリードリヒ殿下は純粋に驚いていて、ルイス様は相変わらず無表情だけどその雰囲気が困惑を物語っていた────といったような表情をしているんだろうな、と予想していたんだけど。
あれ、おかしい。皆そこまで驚いてない。いや、ルイス様は私と一緒にルーナたちの話を聞いてたから、「ああやっぱり」ぐらいなんだろうけど。ジル殿下とフリードリヒ殿下が、そんなに驚いてない。反応に困ってる顔はしてるけど。
その雰囲気を察したのか、エルザだけじゃなく、他の三人も戸惑ったような表情を見せた。
「……皆様、そこまで驚かれないのですね」
「え、あああいや驚いてるよ? 驚き過ぎて上手く反応がね、追っつかないだけだよ〜ねえルイス様」
「……ええ、驚き過ぎて、表情筋が上手く反応しません」
ルイス様の表情筋は元から全く動かないけど────というのは心の内に秘めておいた。
「ええ、と。まあ、そこまで驚いていないのなら良いのですが……まず、このようなお話をするに至った経緯を説明させていただきます。先にティア、お願い」
ちょっと戸惑っていたエルザも、先ほどのようなキリッとした感じに戻った。というかエルザ、ティア様のこと本当は呼び捨てで呼んでたのね……。
「先日、レイス王女殿下、ジル殿下、ルイス様、マリー様が謎の男に奇襲をかけられたのは、皆様記憶に新しいと思います。ジル殿下とレイス王女殿下を襲った犯人はそれぞれ捕らえられ、尋問した結果、魔王軍の手下であるとの報告を受けました」
ティア様が、報告書のような書類を私たちに手渡した。見ると、小さい肖像画付きで色んな情報が書いてある。
「彼らの情報によると、やはり、500年前にフォルティメ様に封印された魔王が復活し、勢力を取り戻しつつあるとのことです。あちら側は皆様が四大神様の生まれ変わりであるということ、それが誰であるかも把握しています。また、今回の襲撃は、こちら側の勢力を確かめるためのものであったとのことです」
ふむ、随分大胆なことをしたもんだ、その魔王様とやらは。
……そういえば、私を襲ってきたあの人は誰だったんだろう。でもこの感じ、あの人も魔王軍の手下なのかなあ。いや、人っていうよりかは、魔族なんだけど。
「……それと、マリー様を襲った者ですが。恐らく、あれは魔王本人ではないかと我々は予想しています」
「ああ、なるほど、ご本人」
…………ご本人!?
四人して驚きの声を上げてしまう。そりゃそうだ、どうして魔王様ご本人がわざわざ。
まあ、そんな反応になるよな、みたいな表情でティア様はまた話し始めた。
「あくまで、予想、でございます。ルーナ様とエルザ様曰く、現場には魔王のものらしき魔力の……残り香、と言うのが分かりやすいでしょうか。そのようなものがあったそうです。しかし、これはあくまで直感的なものですし、物的証拠があるわけではございません。参考程度に、お聞きください」
ティア様はそう滔々と話した。いや、参考程度にって。
……でも、もし仮に、あの人が本当に魔王だとしたら。なんで私はあんなに、胸が締めつけられるような感じがしたんだろう。
「今回、このようなお話をしたのは、再び魔王軍の勢力が我々人間に甚大な被害をもたらすと予想されるからでございます」
ううーん、と心の中で首を捻っている中、先ほどよりも固く真剣な声が耳に入った。話し手は、ティア様からエルザに変わったらしい。
「魔物は、魔王の力によってその規模や強さが変わります。あの魔王は、一度フォルティメ様────勇者様に討伐されましたが、近年の魔物の出現を見るに、魔王は以前と変わらぬ力を保持したまま復活しています。……生まれ変わったのか、それとも、本当は完全には討伐しきれていなかったのか、定かではありませんが……」
エルザは一瞬だけ、悔しそうに下唇を噛んで、膝の上にある両方の拳に力を入れた。本当に、一瞬だったけれど。
「魔王軍が完全にこの世界を支配する前に、我々の手で、今度こそ本当に討伐しなければなりません。そして、魔王が復活する前に、この世界を『神界』に戻さなくては」
「……『神界』?」
聞き慣れない単語に、思わず聞き返してしまう。エルザはハッとした顔をした後、少し悲しげに俯いた。
「……申し訳ありません。『神界』だけでは伝わりませんよね。……どこから、話しましょうか」
エルザは、少し遠い目をした後、決意を込めたような目を私たちに向けた。
「少し、昔の話をします。私たちがどうやって生まれたのか、以前のこの世界はどのようなものだったのか、なぜこのような世界になってしまったのかを、掻い摘んで説明させていただきます」
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