訳あり落ちこぼれ学生は世界平和を望みます
柳瀬 San
序章
これは古い時代の物語。闇と光が混じり合い有象無象の何かが闊歩していた暗黒期。
まだ数が少なかった「ニンゲン」と「魔族」は条約を結び、互いの狭い生活圏を脅かさないように暮らしていた。だが、早くに互いが精神と心をすり減らし終わりが見えそうな頃。
そんな救いの無い世界に嘆き、悲しんだ者達が世界に舞い降りた。
かの者達をニンゲンはこう呼んだ。強力な魔力と武力、知略を兼ね備える者を魔女。魔女と共に現れ全てを蹂躙し無に還す天空の覇者を竜と。
そして、地上の汚れを浄化し平和を迎えた世界。天空から現れた白銀の竜は、己を神の使徒と宣言した。陽の気配が強い大陸にはニンゲンを、陰の気配が強い大陸には魔族の土地とし争わないように再び互いに誓いを立てさせたのだ。竜は天に帰る前に1人の魔女を陽の大陸の見張り役に任命した。
此度の戦いにおいて圧倒的な力を見せた1人の魔女だった。魔女は深紅の髪をたなびかせ5人の弟子達と人々を導く。
ニンゲンは魔女と協力し強く豊かな国を築いた。ニンゲンは毎日が祭りのように楽しかったという。魔女も笑っていたという。
次第にニンゲンも魔女も数を増やし楽園のような国になろうとしていた時だった。
──深紅の髪の魔女はどうしてか命を落としてしまった。
いつ、どこで、どのように。
いくつもの資料や書物を読み漁ったが、魔女の死に関してはどこにも記載されていなかった。
そして国は内紛と魔族の進行によって崩落した。魔女の弟子達の行方も不明とのこと。
魔女に関して残されている
何故。
私は考える。思考する。導き出す。
意図的に彼女は隠されたのではないかと。
残してはいけないモノがそこにはあると。
「はぁーーークッソ、」
駄目だ。考えれば考える程にハマる。まるで這い上がることができない底なし沼の様だ。
一旦頭を冷やそう。
私は小窓を開け新鮮な空気を肺に入れた。
輝く星を見上げながら自分に問いかける。何故、私は豊潤な魔力を持っていないのかと。
「魔力さえあれば、呼び出せるのになあ」
ポシェットの中からひんやりとしたソレをそっと取り出しぼんやりと見つめた。
「キミにはどんな物語があったのかなあ」
蝋燭の火が揺らめき、歪な形でソレに反射している。そろそろ行かなけば。
火を静かに消し、本を元に戻す。
私は見張りに見つからないように闇に紛れその場を後にした。
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