残酷過ぎる異世界転生。

@kasago1192

第1話 異世界転生。

「――大丈夫ですか?……大丈夫ですか?」 


 微かに聞こえてくる声。

 その声とともに、意識が朦朧となりながら全身に激痛が走りだした。


 あぁ……そうだったそういえば……

 オレ刺されたんだった‥


「状態が酷すぎる、手は施すが期待はしないでくれ。」

「あ、ありがとうございます。」


 医者らしき人と……母親との会話か……


 オレみたいなニートの為に、頭を下げないでくれよ母さん。

 そういえばオレ、、今まで迷惑ばかりかけてたなぁ、思い返しても母さんはいつも謝ってばかりだ、オレみたいなダメ息子の為に何度も頭を下げて‥‥何やってんだよ。

 

 そうだ、この手術が終わったらちゃんと働こう。


 大丈夫だよ母さん……オレ……

 自慢の息子にはなれないと思うけど……精一杯頑張ってみるから。


「――先生。麻酔が効き始めました。」


その言葉を最後に、朦朧とする意識がプツリと途切れていった。


 

▲ ▲ ▲ 



 ‥‥ん?

 なんだ‥‥?


 ぼやけた視界に映ったのは見たこともない天井。


 ‥‥あれ?

 手術は成功したって事で‥‥良いんだよな?


 遠くから薄っすら聞こえてくる笑い声。


 笑い声と共に、二人の人影がオレの前に近づいてくる。


 「&%3じぇi4hj」 


 ‥‥‥え?

 な、なんだお前ら!

 

 「じゃ#&%とえい」


 言葉の意味が理解できない。

 こ、ここは日本語ではないのか、、、


 ぼやけた視界が、だんだんとハッキリ見え始めてきた。


 男性と……女性……?

 

 この男性は、茶髪で二十代後半……いや、三十代後半にも見えなくはないな。

 髪の毛もボサボサ、どういう生活をしたらこんな頭になるんだか。


 それに比べて女性の方はとても美しいではないか、金髪ロングで年齢は二十代前半くらいか、目鼻立ちがクッキリしていてオレ好みの女性だ、ニートのオレがこんな女性を拝めるなんて神に感謝しなきゃな。


 ……痛っ!

 なんだこの痛み……


 右目に激痛が走り、またしても意識が途切れて行った。



 ▲ ▲ ▲



 あの手術から約一カ月が経過した。


 その間に分かったことが幾つかある。


 まず一つ目。


 オレは異世界に転生したらしい。

 アニメやゲームで話題になってるあの異世界転生だ。


 普通の人間には信じられない出来事かもしれないが、オレは普通の人間ではない。


 ラノベアニメを観つくしたオレにとっては想定の範囲内の出来事だ。

 

 でも転生するならこんなボロい木造の家より、貴族みたいな立派な家が良かったな。


 そして両親らしき人が着ている洋服、明らかに中世ファンタジーに出てくる洋服ではないか。


 しかもその洋服はボロボロときたもんだ。

 おいおい、キミたちはしっかりお金を稼いでいるのかねと少し心配になるが、ニートのオレに心配する資格なんてあるわけないよな。


 次に二つ目に分かった事は。


 オレは赤ちゃんに転生したみたいだ。


 正直これはありがたい、今まで何度も異世界転生したらと妄想してきたが、今までの記憶が残ってる状態で転生できた事は、オレの日頃の行いが良かったと思っておこう。


 まぁ前世ではニートだったけどなぁ。

 いや、ほんと、自分で言うと悲しくなるよ。


 そしてオレの名前はローグというらしい。

 ローグ・センティア。

 

 まぁありきたりな名前ではあるが、気にする程の事ではないな。


 それからこの世界のオレには家族というものが居たらしい。


 父親はガイア・センティア


 母親はフラン・センティア

 

 オレの五つ上に、コニー・センティア 姉という存在がいる。


 転生してからというものの、コニーが毎度毎度ちょっかいを出してくる。


 どうやら弟が出来て嬉しいみたいで、下の世話まで率先してやってくれるんだが、まぁ悪い気はしない。

 

 というか、なにか罪悪感のようなものが芽生え始めてきたんだが。


 前世では三十一歳だったんだぞ!世間的にみたらおっさんだぞ!

 

 言葉が発せないオレはコニーの優しさに甘えるしかなかった。



 月日が経つにつれてオレは少しずつこの世界の言語を覚えていった。


 身体は赤ん坊でも知能はおっさんだからな。


 いつものように遊んでいるオレに、コニーは一つの絵本を持ってきてくれた。


 「ローグ、これは私が大事にしている本なんだ」


 そう言ってコニーは絵本を読み聞かせてくれた、本の内容はいわゆる剣と魔法のファンタジー。


 まぁ五歳の子供が憧れるのも分からなくもないが、大人になっても憧れるのは良くないぞ、オレみたいに引きこもりになってしまうぞ!そう心の中で思っていると。


 「……ブワッ!?」


 ……え、なにこれ?

 火が、、出てきた……?


 「凄いでしょローグ、私の職業賢者なんだ!」


 コニーはにっこりした笑顔でオレに炎をみせてくる。


 「私は将来、この絵本に出てくる様な立派な賢者様になりたいんだ!」


 こんなに目を輝かせたコニーは初めてみた、うんうん立派な夢じゃないか。


 ってかこの世界魔法が使えるのかよ!!!!


 「コニー!家で魔法を使うのはダメって言ってるでしょ!」


 「ごめんお母さん、ローグに自慢したくて」


 ちょっと待てよ!ってことはオレも魔法が使えるんじゃないのか?


 今まで見てきたアニメを思い出して、魔法の取得を試みたが全くダメだった。


 なんだよ、異世界アニメ使えねーじゃんかよ。


 その日は不貞腐れながら眠りについた。


 そして月日が流れローグが三歳になった頃、我が家に訪問者が現れた。

 

 『コンコンコン』

 

 「センティアさんのお宅ですか?わたくし王都の使いの物です」


 は、、はい、今開けます……


 両親が珍しく、かしこまった口ぶりで対応している、きっと身分が高い人が来たんだろうなぁと軽く考えていたが、話の内容はこうだ。


 ・コニーはこの世界で千年ぶりに出た賢者だそうだ。


 ・それを両親は今まで隠していたのがマズかったらしい。


 この世界では五歳になると、神から”職業”というものが与えられるらしく、職業は星★~★★★★★に分類され、コニーの職業である賢者は星五というとても珍しい職業だそうだ。


 この世界の掟では、星五の子供が出てきた時点で必ず王都に報告し、身柄を引き渡さなければいけないそうだ。


 ガイアはコニーと離れたくない一心で嘘をついてしまった、そのことが王都上層部にバレてしまい、コニーとガイヤは王都に連れ去られてしまった。


 初めて家族が揃わない晩御飯、フランは食事に一切手をつけることなく、ひたすら泣いていた。


 これからコニーと遊べなくなると思うと、オレの目にも涙があふれてきた。

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