第46話 ブラックコーヒー

 私は甘いコーヒーが好きだった。砂糖2杯にミルクたっぷり。


 その嗜好が変わったのは社会人になってからだった。


 本当に仕事が忙しい時期のことだった。コーヒーどころか飲み物をとりに行くことすらできなかった。そんな中、時間のある人がお盆にコーヒーをのせて持ってきてくれた。


「ミルクや砂糖はいる?」


 私は速攻で答えた。


「いりません!ありがとうございます!」


 そして冷まして、一気に飲み、仕事に戻る。ミルクや砂糖を入れることすらできなかった。


 そうしているうちに、ブラックコーヒーがおいしくなってきた。豆の違いで味や香りもわかるようになってきた。今では甘いコーヒーの方が苦手なくらいだ。


 特にブラックが飲めるからどうなったということもないが、ブラックコーヒーが飲めるようになり、プライベートでも頼むようになってきたころのことだ。


 男の人と一緒にカフェにいき「オレンジジュースとブラック」を頼んだことがあった。私の目の前には甘いオレンジジュースがおかれ、相手はブラックが飲めないのにブラックコーヒーがおかれ、「あ……反対だね」と交換し、なんだかちょっと気まずい雰囲気になった。


 世間一般のイメージってあるのだなぁと思った。ウエイトレスをバイトでしたことがあるから、店員さんの気持ちもわからなくもないと思った。

 

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