言葉には力なんて無い

あんちゅー

どうせ必要のないものなのに

言葉を通して人は想いを伝え合うのに


言葉を通して人は心を支え合うのに


アニメや漫画の登場人物達は言葉で人を救った


詩や歌を歌う人達は人の心に沢山の夢を見せた


成功者達は自身の熱意を伝えるだけで人の生き方を変えた


けれど本当は言葉には何の力もないみたいだ


誰かを励ましたくて


誰かを喜ばせたくて


誰かを慰めたくて


誰かを救いたかった


言葉にはそれだけの力があるんだと信じていた


なのに現実は言葉には少しの力もない


言葉にはなんの重みもない


自分の言葉にはこれっぽっちの力も無くて


口にした途端に霞んで消えるように軽い


まるで寒い日に吐く息のように


あの日夢見ていた言葉の力は


あの日憧れた彼らの言葉の力は


実在しない魔力みたいなもの


力ない者が振るえるものでは無いから


現実は無情だ


現実は不変だ


現実は御伽噺のようなものでない


きっと変わらないこと変えられないことが現実で


だから言葉にだって何かを変える力はないのだ


言葉を紡ぐだけ無駄だ


力を込めるだけ哀れだ


なのにどうしてこんなにも


涙が溢れてくるのだろう


言葉を紡がなければ


どうしてこんなにも苦しくなるのだろう


僕はいつだって言葉を吐いた


僕はいつだって想いに夢を見ていた


無駄だとわかっていたはずなのに


それでも言葉を吐いて


それでも喉を枯らしている


大きな木は何百年もそこに立っていて


言葉なんて口にしないのに誰よりも雄弁だった


それは憧れよりも力強い


あの日の言葉に感じた力強さだ


僕はちっぽけだから


僕の言葉には何も乗っていない


重さがなくて軽い言葉なのに


それでも飽きることなく吐き続ける


夢など見ていないし


憧れなんて抱かない


現実はそんなもんだと分かっている


けれどいつまでも言葉を吐くんだ


そうしていれば変えられるかもしれないから


僕は言葉を吐くんだ

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