第44話 敵同士
上から、山奈が巨大なまな板を持って、地面を叩いてきた!
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォン
広範囲に地面が平らになり、アントニオは潰れてしまった。
山奈は彼を睨む。
「(心臓の防御が疎かだ。今ならやれる)」
包丁を手にし、山奈はアントニオの心臓部へ!!
「⁉︎」
ガツンッッ
心臓に突き刺さる直前に、アントニオは刃を掴んで、へし折る!
「!…チッ」
山奈は腕から針を生やして、彼の首に刺し、傷を入れた!
「ゔぉぉ⁉︎⁉︎」
「(このまま刺し続けて内側から眼球を攻撃すれば、こいつの視覚を失わせる事ができる。
その瞬間に奴の心臓を破壊すれば良い)」
その時、アントニオが突然 浮遊し始める。
「(ん、倒したのかな)」
↑山奈
ブシャァァァァァァァ
アントニオは無言で、背中から生やした巨大なフォークとスプーンを取ると、彼女に向けて突き刺した!!
「(くっ、抜けない!)」
↑山奈
フォークは山奈の腹に刺さり、スプーンは彼女の腕を抑えつける。
おかげで食器で狙撃する事も不可能だ。
「今度こそ1分で倒す!」
アントニオが怒鳴った。山奈が焦る!
「(ヤバい、終わる!早くこの危機的状況を抜け出す道は⁉︎
ダメだ…思いつかない!ハァやだ、まだやだ!やだやだやだやだ…)」
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
刺さっているフォークの先が急カーブし、山奈の心臓に触れる。
山奈は悟った。
「(私は里奈みたいに強くて世界に貢献できるような人間じゃない)ひっく。
(最初から逃げてばかりだった。でも今は逃げられない。だから早く)ひっく。
(このフォークを抜かないとヤバい…だがスプーンが邪魔で腕を動かせない)」
そんな時、彼女の頭に誰かの声が浮かんできた。
「本来なら逃げるべきだ。平和を願う者は、常に戦っている者だけではない」
「(……イレス様?確かこれはアレースに入ってすぐに言われたと思う。
里奈の昇格に焦って逃げた時、イレス様は私に道を作ってくれた…)」
山奈は歯を食い縛って叫ぶ。
「早く逃げて!イレス様ァァァ!!」
この声はイレスの耳に届いた。しかし彼女はアンタレスを前に、逃げる様子を見せない。
アンタレスも今の声を聞いたらしく、イレスに尋ねた。
「逃げないのか?それとも逃げられないのか?」
「…いや、逃げたくないんだよ」
↑イレス
山奈はフォークの先で心臓を刺された!
ブシャァァァァァァァ
「⁉︎……」
「終わりだッッッ」
ズシュズシュズシュズシュズシュズシュズシュズシュ
ズバァァァァァァァァァァァァン
山奈の心臓がフォークによって体外に吹き飛ばされ、アントニオが皿をぶん投げて撃ち抜く!
ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
「(あぁ………)」
山奈の腕が消滅し始めた。彼女は泣きながら再生を試みたが、全く再生できない。
「(あぁ、終わった…)」
「ごめん」
アントニオが、山奈に向かってこう喋った。
「え?ひっく」
↑山奈
↓アントニオ
「なんとなくは、申し訳ないと思ってるよ。
俺だって○しは好きではないが、仕方なくやった事だ。
だから、ごめん」
「ハァ?何言ってんだ。
お前らが、ぼーーーっと過ごしたクリスマスは、お前らが○した人々が生きたかった時間なんだよ!」
「わかってるよ、俺だってそんくらい。
ただ、俺らが敵同士じゃなかったら、もっと生きたいと思ってたかもなって」
「え?」
「敵同士に○しは必要不可決だから、しゃーない。
でも、もし俺らが敵同士ではなく、友達同士だったら、多分もっと生きたいと思ったと思う」
「えぇ…何言ってんだか、わからない…」
「わからなくて良いよ。敵の発言なんて」
「……………」
山奈は無言で消滅していった。
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