モンスターオタクの大地と歴史オタクの京子
菅原 みやび
第1話 深大寺周辺に観光に行こうず!
「調布駅、調布駅――――――!」
駅内アナウンスが流れ、俺は目的地に着いた事を知り、目を覚ます……。
今日は快晴の為か、電車の窓から射す強烈な陽光が正直痛い……。
耳を澄ますと、いや、澄まさなくともクマゼミのせわしい鳴き声も聞こえてくる始末。
俺は窓ガラスに映ったスポーツ刈りの自身の髪と柴犬のような眉、それに代謝の良いニキビヅラを見つめ、マスク越しに大あくびをする。
俺、花粉症気味なんで、ほぼ一年中、ブラウン色のスタイリッシュマスク着用してるんだよね……。
俺の名前は【
あ、でも帰宅部で散歩とモンスター好きで趣味でファンタジー小説を書いていたりする。
今日もブルーのTシャツにジーパンとラフな格好だしね!
「ほら! 行くよ!」
到着するなり、感傷に浸る間もなく、俺のマスクをグイグイ引っ張る彼女。
(コラコラ……そこは手をグイグイ引っ張るとこだろう!)
俺は脱いでいたブルーのスポーツサンダルを慌てて履き、電車から駆け足で出ていく。
彼女の名は【
夏休みに入るなり、深大寺周辺に遊びに行きたいと、ぬかしてきた。
なんでも、高校3年になり、受験が忙しくなる前に遊んでおきたいそうな。
「じゃ、女友達とキャッキャウフフしてこればいいだろ?」と言ったのだが、「ヤダ! 大地と一緒に行きたい!」と言って利かない……。
……という事で、俺達は今ここに来ている。
バス乗り場に向かう為、デカイ駅ビルやビックカメラを通り過ぎ、俺達はバスに乗りさっさと目的地へ向かう。
ほんのり黄緑色の稲穂が揺れるのどかな田舎の景色の他に、道中何故か、たくさんの蕎麦屋さんが見える。
「なんでも、深大寺は蕎麦が有名らしいよ?」
京子は俺の目線を追い、説明を入れる。
「何で?」
「んとね、なんでも土地柄で、お米より、蕎麦が適していたんだって!」
何やら嬉しそうに説明する京子。
バスの窓から射す、目をつぶる程の眩しい陽光……。
それに当たる彼女の素顔は、なんだかいつもより利発的かつ魅力的に見えた。
さらりと流れる長い黒髪がとても魅惑的で、こちらを見つめるブラウンの透き通った瞳ときりっとした眉がなんだかたまらなくて……。
(ああ……とても素敵だ……)
「へー……」
そんな彼女を見て、何だか俺も嬉しくなってくるが、照れ隠しをする為に軽く会話を流す。
この会話の流れだと、お昼は蕎麦で確定だろう。
「あ、えっと……深大寺、ここで降りなきゃ」
とりとめのない会話をしている最中に目的地に到着し、バスを降りる俺達。
「陶芸屋などは後にして先に深大寺に行こ!」
「お、おう……」
京子にマスクをグイグイ引っ張られ、俺達は深大寺に到着する。
(いや、だから……手を……)
「ねえ知ってる? この深大寺は733年に奈良時代に創建されたんだって! こんな大昔の物が残っているって凄くない!」
京子は両手を自身の目の前に組み、目をキラキラさせ感動している模様……。
俺的には正直、歴史的建造物にはあまり興味が無く、どっちかというと鬼太郎茶屋の方に興味があった。
「確かに凄いな……」
でも、歴史オタクの京子にはそんな事言えなかったので、とりあえず適切な言葉を得ぶ俺。
ちな、鬼太郎茶屋は、妖怪やモンスター好きの俺にはたまらない聖地で、ここが無ければ俺は今日ここに来ていなかっただろう。
俺、深大寺を参拝したら、鬼太郎茶屋でボルボックスや目玉の親父の写真を撮るんだ……(遠い目)。
「えへへ……」
彼女は照れくさそうに笑い、ステップを踏みクルリと一回転する。
何やら上機嫌の京子。
(一体何なんだろうな? 正直、男の俺には乙女心というものはさっぱりわからん)
階段を上り、真っすぐ進むと、桜の花弁の飾りを模した賽銭箱が見えたので、サクッと参拝する俺達。
「ねえねえ? 何をお願いしたの?」
「あ? ひ・み・つ!」
「大地のイジワル!」
「うっせ! お前の方こそ何だよ、教えろよ!」
「それは……私も後で……」
何やらモジモジしている京子?
「……トイレならあそこにあるぞ?」
「ばっ……。違っ……」
京子は何やら目と口を大きく見開き、怒りだす。
「痛っ! おまっ! 握り拳でポカポカするのやめいっ! ほら、腹減ったし飯にしようぜ! な?」
「むー……」
何故か凄い、ぶすくれている彼女。
きっとお腹が空いてたんだろう、という事で飯だ飯ッ!
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