男弱女強のエロゲ世界

あぎとん。

第一章 幼年期〜少年期

第一話(前編) 異世界転生きちゃあぁぁあ!!!


「行ってきます」


 そう言って俺は家を出た。


 なにも変わらない日常だったはずだ。

 なのにその日は少し違った。


 いや、少しではないな。

 ―なぜなら俺は死んでしまったのだから。




 俺は実家暮らしの何処にでもいる大学生だった。

 萌えアニメをこよなく愛し、恋愛シミュレーションゲーム、所謂いわゆるギャルゲを徹夜でプレイするような2次元大好きなオタク。

 中学からドがつくほどの陰キャで、もちろん中二病は経験済み。リアル女氏と関わり合うことも家族以外では皆無だった。


 そんなクソ童貞陰キャオタク大学生が俺だ。


 昨夜は、エロゲ界隈で話題沸騰中の遊べるエロゲRPG『えちえちダンジョンで学園ハーレムを!2』通称えちダン。そのシリーズの二作目を徹夜でプレイしていた。


 その疲労が祟ったのか定かではないが、大学への道のりを歩いていると突然飛び出してきたトラックに撥ねられてしまったという訳だ。


 何とも馬鹿な話だが、異世界転生トラックだ!!なんて、少し期待してしまったのも轢かれた理由にあったかもしれない。


 トラックに跳ねられた俺は気付いたら十メートル以上は吹っ飛ばされ、凄まじい痛みに体を襲われ、指一つ動かせないでいた。

 

 楽に死ねなかったと言ったほうがいいのか……。多分運が悪かったんだと思う。


 体は焼けるように熱く、自分でも最早痛いのか熱いのかもわからない。それが永遠に続く地獄。


 痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱いいたい…あつい…いたい…あつい…いたい…あつい…いたい…あつい…いたい……あつい……いたい………あつい………いたい…………あつい…………。



 永い永い地獄の中、俺が命を落としたのはおそらく救急車で運ばれていた最中だったと思う。


 いろんな人たちが懸命に声をかけてくれていたけれど、意識はどんどん痛みがなくなるほうへ引っ張られていった。




 〜△〒€☆°%〜〜



 なんだ?


 なにか聞こえる。



 〜◯□+:^%〜〜



 声か……?


 未だぼんやりとする意識を懸命に手繰り寄せる。どうにか体の一部がいうことをききそうだ。


 少しずつひらけていったまぶたの先には二人の男女がいた。


 黒髪の青年と栗色髪の女性。

 男は女の方に泣きながら何か話しかけており、女は俺の方を慈しむように見つめていた。


 どんどん意識が鮮明になってくる。


「〜〜〜〜!!!!」


 誰の声!?と一瞬驚いたが、ようやくここで俺は気付いた。


 が大きな声をあげて泣いていることに。



 (も、もしかしなくても、これって異世界転生ってやつかぁ??!!!?!!!)


 心の中で叫ぶと、俺の泣き声もそれに釣られ大きく鳴いたのだった―。



―――――――――――――――――――――


 転生してから一ヶ月ほどが経過した。


 あれから落ち着いて置かれた状況を確認してみると、どうやら目が覚めた時に目の前にいた黒髪と栗色髪の男女が俺の両親らしかった。


 有難いことに二人は日本語で会話をしていて、話の内容がわかったことが幸いした。

 更には時計が置いてあり、前世と同じく秒・分・時・日・年と時間の概念が同じであることが判明したのも、こちらにとって都合が良かった。

 つまるところ、ここはかなり元居た地球に近いのだ。


 もしこれが、言葉もわからない、時間の数え方も違うとなれば、覚えるのに相当時間がかかったことだろう。



 家族構成は父、母、息子の三人で形成されているようだ。


 まず父である男の名はバリー。


 髪は黒の短髪。175〜180はありそうな身長と日本人と言われても違和感がないほどの顔立ちは、地球ならばモテモテだろうなと容易に想像できてしまうほどだ。

 見た目からして年齢はおそらく二十歳前後だろう。


 バリーは毎日お昼からどこかに出掛けているようで、腰に剣を携えていることや、会話の節々から魔物という単語をよく聞くため、おそらく魔物退治や護人もりびとのような仕事をしてるのでないかと予想している。


 もし魔物退治をやっているようなら、今後是非とも剣を師事してもらうとしよう。


 そして、そんな父を支える母の名はジェシー。


 栗色の茶髪を肩にかかるくらいのボブヘアーにしていて、おっとり美人という言葉が似合うような優しい雰囲気を纏っている。誰が見ても可愛いと思えるだろう容姿は正に異世界クオリティと言っても過言ではないだろう。

 身長はとても低く、おそらく150ないかもしれない。バリーと並んでいるとその身長差が際立って見える。

 歳はバリーと同じくらいだろうが、容姿が良すぎて判別がつかないほどだ。


 俺を産んですぐの頃は、体を休ませ安静にしていたが、一週間もすると元気になったのかジェシーはずっと俺の世話や家事をしてくれている。


 赤ちゃん語に翻訳されてしまうのだが、ママァ〜!と呼ぶとすぐに駆けつけてくれるので、本当に良き母である。


 そしてそんな赤ん坊こと俺、名前はシルクと言うらしい。


 掲げた手を見ると、赤ん坊特有のぷっくりとした手で愛らしさを感じる。

 ただ、幼くも身体はしっかりしているようで、尿や便、食事など、ありとあらゆるものをしてくれと身体が訴えかけてくるのだ。


 その度に母のジェシーに「うんち!」だの、「おなかすいた!」だのを赤ちゃん語で伝えると、母親とは恐ろしいもので、ちゃんと分かってくれるのだ。


 何と素晴らしい家族愛だろう……。


 まぁしかし、中途半端な歳から転生しなくてよかったと思う。

 俺自身、半端な歳から転生でもしようもんなら、今まで生きていた子の人格はどこにいったんだとか、謎に思考を巡らせるタイプの人間だったし、0歳児からの転生は寧ろ好ましかった。



 俺たちの住まいは木造の一軒家で、元居た日本の別荘を想像してもらえればわかりやすい。

 その家の中の柵で囲まれた赤ちゃん用スペースで俺は日々過ごしていた。


「あぅあー」


 なにか喋ろうとしても、どうしても赤ちゃんのようにしか話すことしかできない俺を両親が愛おしそうに見つめている。


 身動きが取れない赤ん坊の内は、周りを見たり聞いたりすることしかできないので正直暇だ。


 実状、無意識にしてしまう便のおむつを替えてもらったり、ジェシーのおっぱいを飲んだりと前世だと考えられないくらい恥ずかしいことだらけな日々なのだが、どういうわけか今の俺はそれを受け入れられている。


 ジェシーの乳房を初めて見た時も劣情を抱くことはなく、ご飯!とおもえるくらいには食欲が刺激されるほど。

 もしかすると、家族にはそういった性の感情は向かないようになっているのかもしれない。


「あぅあー!あぅあぅうー」


「どうしたんだシルク?遊んで欲しいのか?」

「うふふ、可愛いわねぇ」


 とまぁ、暇な時は大概あぅあぅ言ってみれば、イケメンな父親と超絶美人な母親が可愛がってくれるので俺的にはやり得なのである。


 そうだそうだ、俺は可愛いだろ!もっとサービスして可愛い赤ちゃんになってみせるから大切に育ててくれよ!!と、内心そういったゲスい感情を抱いているのは内緒だ。


▼ ▼


 あれから数ヶ月が経過した。


 最近になって喜ぶべき情報が判明した。

 それは、この世界が俺の憧れた剣と魔法のファンタジー世界だったことだ。


 先日、ジェシーが料理をしている際、誤って怪我をしてしまったのだが、回復魔法?で指を治していたところをばっちりと見てしまった。

 それに、バリーが剣を腰に納めていたの見るにやはりここは俺が夢にまで望んでいた世界。


 そう、ここは剣だけでなく魔法も使える魔物が蔓延るファンタジー世界なのだ!妄想で何度も夢見た俺ツエェェェーーー!!!!!ができるかもしれないのである。


 早く魔法を使いたい。早く剣を振りたい。そう強く思わずにはいられない。


 そんな、俺ツエー妄想を浮かべていると、隣で甘い囁きが聞こえた。


 あぁ…今夜も始まりそうだな。


 ん、なにかって?


 そりゃあ夜のプロレスごっこさ。


「ねぇバリー、今日も、その、ね?」

「ごめんジェシー、今日はちょっと疲れてて……。それにシルクも起きてるしさ」


 バリーの肩に手を置き、ゆっくりと熱を含んだ瞳をし顔を近づけて誘惑するジェシーだが、バリーはそんなジェシーの誘惑を申し訳なさげに断った。


「は?」


 途端いつもの優しげな母からは想像できない声が漏れ出る。


「おい、何拒否ってんだ? 私が出せつッてんだから素直にその股間についてるもん出せよ! もしかして、仕事とか言って他の女にヘコヘコしてんじゃねぇだろうな? あァ"!?」


 こ、こわいよママァ〜〜!!!!!


 初め、この底冷えるような母の声を聞いた時は我を疑ったものだ。


 実のところ家族の立場関係は母>父であり、父のバリーがジェシーに一度でも逆らったところを見たことがなかった。

 今回も、というべきか、ジェシーの怒号を全身で受けたバリーはすぐさまズボンのみならず下着までおろした。


「最初からそうしてねバリー♡」


 バリーが素直に従ったと見るや、クスッと妖艶に笑うジェシー。


 先ほどの怖い顔と声はもしかして幻だったんじゃないかと信じたくなる様な変わりようだ。



 普段なら人様の夜のプロレスごっこを見ることに興奮を覚えるところなのだが、今の俺は男女の営みというよりは親の情事を目の当たりにした子の感覚に近い。


 産まれて間もないってのにお盛んだな。


 両親に性欲という感情が向けることができない俺は呆れつつ、眠ることに意識を集中させる。


 夜のプロレスごっこ中に眠れるようになったのも、もう慣れたものである。

 俺が産まれて暫く経つと、それはもうお盛んフィーバーだったのだ。むしろ夜泣きしない俺よりあっちのほうがうるさいのでこっちが睡眠不足になる。



 今夜も、眠ろうとする俺にお構いなしに二人はさらに熱が上がっていく。


 若い二人の行為がすぐに終わるわけもなく。

 嬌声が響く中、長い夜は更けていった―。

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