【信長side】悪魔の薬

【信長side】

尾張のとある港町で、南蛮人が女を襲った。


その南蛮人は、その町の住人の報復によって殺され、奴の故郷..........スペインは、謝罪の品を要求してきた。


俺や親父の家臣達は、南蛮人達と戦うつもりだったものの.......あろうことか、親父はあっさりと謝罪の品を渡し、その問題を解決してしまった。


このことに、当然ながら家臣達は怒っていたが...........俺が思うに、親父がそう簡単に品を渡すことはない。


だとすれば....


信長「何かしらの訳アリな品を渡した.....ということか?」


親父のことだ。


美濃の斎藤道三と同盟を組んだのも、スペインと戦をするためだったに違いない。


信秀「フッ....だとしたら、お前はどうする?」


俺の方を向きながら、ニヤリと笑う親父。


信長「全く......どうりであっさりと謝罪の品を渡したわけだ」

信秀「アレは謝罪の品ではない。だ」


嫌がらせ....か。


信長「それで?具体的には、どんな嫌がらせなんだ?」

信秀「そうだな......奇跡の妙薬と語って、人の心と体を蝕む毒を、【あへん】を渡しただけだが?」

信長「ふぅん、毒.....毒ぅ!?」


人の心と体を蝕む毒!?


信長「そんなトンデモない毒が、この世に存在するのか!?」

信秀「あぁ、存在する」


俺の言葉に対し、淡々と答える親父。


信秀「南蛮人の奴らは、【あへん】を奇跡の妙薬と信じ、国へと持ち帰るだろう。そうすれば......」

信長「スペイン国内で徐々に【あへん】が流通していき、やがて、国の力が低下していく.....親父にしては、中々恐ろしい作戦だな」


俺がそう言うと、親父はフッと笑った後


信秀「何を言っておる、この作戦を考えたの儂ではない」


と言った。


信長「.....は?」


親父の言葉に対し、思わず、そう言葉を漏らす俺。


じゃあ、一体誰が.....?


.....ん?待てよ?


信長「..........まさか!?」

信秀「そのだ」


俺の言葉に対し、そう答える親父。


.......なるほど、どうりで恐ろしい作戦なわけだ。


信長「だが、仮にスペインと戦うとして......戦う術はあるのか?」

信秀「あるにはある。だが....」

信長「だが?」

信秀「が完成するには、時間が掛かるのだ」


時間が掛かる.....か。


信長「面白いじゃねぇか!!」


俺がそう言うと、親父は


信秀「......やはり、お前は儂の息子だな」


と呟いた後、少しだけ口角を上げるのだった。

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