同じ時間に同じ病院でうまれたオレたちは、まさか…まさかのっ⁉︎

猫の集会

オレたちって…

 とある二軒のお宅で連続おめでたがありました。

 

 なんとその夫婦たちは、お隣同士。家族ぐるみで交流がございました。

 

 

 そして出産日も同じ月。

 

 なんとも偶然!

 

 

 そんなこんなで月日が流れました。

 

 

 

 妻たちがそろそろ出産間近ということで、これからしばらくはバーベキューもお預けとなるので最後にバーベキューをしようと、四人仲良く車に乗り込み近くの河原へと出かけていったのです。

 

 楽しい時間は、あっという間に過ぎていきました。

 

 ふた家族はうまれてくる子どもの性別判断をしておらず、どっちがうまれてくるのかなぁなんて楽しみにして会話が盛り上がったのです。

 

 そんな帰り道、後ろの車を運転していたおばあさんがアクセルとブレーキを踏み間違えて、四人の乗った車に激突。

 

 …

 

 急いで妊婦二人は病院へと運ばれました。

 

 

 静かだった病院は、とてもバタバタと落ち着きを無くしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…オレたちがうまれた。

 

 オレの母親は、女社長。どうやら美容関係で頑張っているらしい。

 

 父親は、普通のサラリーマン。

 

 たまに父親が、忙しい母親にかわって母親代わりをしている。

 

 まぁ、仕事が忙しいんだし…そんなものなのだろうと割り切っている。

 

 

 そして、オレと同じ日にうまれた結美ゆみは…どうかしている。

 

 

 鬼に一度たましいを喰われたのかもしれないくらい、オレに冷たい。

 

 昔は、仲よかったし…親同士も仲良しでさ…なんならきょうだいみたいにいつも一緒だったのに…思春期といわれる時期からどうも結美は、おかしいのだ。

 

 てか…なんかさ…

 

 最近オレの母親に似てるんだよなぁ……

 

 とくに後ろ姿なんかもうどっちかわからないくらいなのだ。

 

 そして…この二人はとても気が合うみたいで、よく一緒に美容の話で盛り上がっている。

 

 家族ぐるみでよく会食するんだけど…さ、なんか…なんか最近結美の父親がジーっとオレを凝視するんだよね…。

 

 なんっすか?って思うんだよね。

 

 

 結美のご両親は、母親がパートに出ていて、父親は公務員。

 

 

 よく結美はオレに、

「つとむの両親がわたしの親だったらなー。あーあ」

 なんてほざいている。

 

「オレたちきょうだいだったらよかったな」

 と結美に言うと、結美は…

「そんなの絶対ダメ‼︎ダメだから‼︎」

 と怒る。

 

 …そんなに?

 

 結美の怒りポイントがいまいちわからない…。

 

 たぶん…いつの日か知らない間に、結美の肩あたりに大っきいとげができたのだろうとオレは思っている。

 

 なんか…刺々しい気がする。

 

 

 

 

 そんななか、本日はクリスマス。

 

 両家が集まりどんちゃん騒ぎだ。

 

 でも、オレたちはお酒を飲めないからテレビの前でおやつパーティをしている。

 

 

「結美ってさ、最近よくオレを睨んでるよな。何?オレなんかした?したなら謝るからさ、ちゃんと言ってほしいな。」

 

 …

 

 そんなオレの言葉を聞いて結美は、

「えっ、別に睨んでないよ。睨む意味がわからないよ。ってか、そんなにいつもわたしを観察してるんだぁねぇ〜っ。」

 とからかわれた…。

 

「みっ、みてねーし」

「あはは、必死かなぁ?」

 

 …

 

 もしかしたら結美は、何かに取り憑かれているのかもしれないな。

 

 昔は、あんなに素直でいいこだったというのに…。

 

 

 そんなある日、オレは結美のおとうさんと駅から帰りが一緒になった。

 

 

 そしておとうさんに意味深なことを言われた。

 

「結美が言っていたんだけど、おとうさんとつとむって似てるよねって言うんだよ。」

 と。

 

 え…

 

 あぁ、だからこの間おとうさんはじっとオレを見ていたのか…。

 

 

 …

 

 えっ…

 

 もしかして…もしかしてオレたちって…やっぱり…うまれたとき…とり間違えられた⁉︎

 

 たしか同時間に同じ病院でうまれたんだよな…。

 

 

 …

 

 言われてみれば…結美もオレの母親に似てるんだよなぁ…。

 

 

 とある日曜日、結美がオレんちのリビングでくつろいでいた。

 

 

 今日は、親が仕事で二人きりだった。

 

「ねぇ、つとむ」

「んー」

「男の子ってね、お母さんに似てる人を好きになりやすいらしいよ?わたし…最近つとむママに似てない?」

 なんて言ってきた。

 

 ‼︎

 

「やっぱり⁉︎オレも最近思うんだよ!オレたちって…取り間違えられたんじゃねっ⁉︎」

 

「は?つとむの脳みそは、パンくずですかぁ?」

 と返された。

 

 え…

 

 パンくずって…

 

「そんな小さくなくない⁉︎ってか、結美は何か違和感とか親に感じないわけ?」

 

「ないな。つとむは?」

 

「オレは、少しの違和感?とか?よくわからんが」

 

「へー…まぁつとむは、パンくずだからしょうがないっかぁ」

 

 …人をパンくず扱いってさ…どうよ?

 

 

 あ!

 

 そっか‼︎

 

「結美、ちょっと待ってな」

 

 オレはさっき母さんから美味しい食パンあるから結美ちゃんと食べなーって言われてたんだ。

 

 んもー、結美は食いしん坊だからパンが食べたくてあんなこと言ってたのか。

 

 オレにパンを連想させたかったのか。

 

 オレは、パンをトーストに入れながら結美に、

「今、美味しい食パン焼いてるから待ってなー」

 と手際よく焼いていたんだけど…結美ったらさ…

 

「そういうのって、焼かなくない⁉︎生の方が美味しいんじゃないの?やっぱり脳みそパンくずー」

 と呆れられた。

 

 …

 

 あぁ、結美はもしかしたらパン奉行かもな。

 

「わりい。なら新しいやつ切るから待ってな!で、ジャムぬる?」

 

「もー、つとむってほんと知らないね。それ何もつけなくても甘いんだよ?」

 

 …

 

「結美って、アンパンみたい…」

 

「えっ?何で⁉︎」

「だって…ほっぺたパンパンにしてさ…まんまるで、かわいい」

「バカにしてる?」

「まさか。」

 

 …

 

「つとむってさ…やっぱり脳みそパンくず」

「もー、怒んなって。オレ、パンになるわ」

 

「は?」

 

「だって結美は、パン大好きなんだろ?」

 パン奉行なんだから大好きに決まっているだろう。というわけだ。

 

 オレは、最近刺々しい結美を気にしていたけど、きっとただの反抗期なのだろうと思っている。

 

 そんな反抗期の結美もオレは、大好きだ。

 

「えっ…どういう意味?」

「だから、結美に好かれたいから…だからパンになる!」

 

「そんなの…もう…もうずっと前から好きだよ…。さっき遠回しに言ったのに、つとむ全然わかってなかったし。」

 

 ⁉︎

 

「えっ、いつ?パンが焼かれたとき?」

 

「んもー、パン関係ないからー」

 

「あ、そ…そうなの?」

 

「うん、そうだよー。母親に似てる人を男の人は、好きになりやすいって言ったでしょ?だからわたし、頑張ってつとむママに似せて頑張ってたのに、取り違えとか言い出すからさぁー。」

 と呆れ顔になった。

 

 あー、そういうことか…

 

 じゃあ、この前結美のおとうさんが言ってたのも女の子は、おとうさんに似た人を好きになるって意味か。な?

 

 たしかに、血液型からしてお互い納得の血液型だもんな…。

 

 取り違えなわけないか。

 

 なら、オレたちは両思いなんじゃん⁉︎

 

 

 

「オレさ、パンはパンでもチョコロールパンになるわ!」

 

「は?なんでさっきからパン…てか、それなんかのクイズ?」

 

「ううん。オレはパンで結美は、チョコね。オレが結美を優しく包み込むから。」

 と、言いながらオレは結美を優しく抱きしめた。

 

「あったかい」

「あ、チョコ溶けちゃうな」

「もー、それはたとえだから」

「あー…、そうね。てか、オレチョコパンのてっぺんペロってするの好き」

「あー、わかるー」

「じゃあ、いい?」

「えっ?」

「結美の頭ペロってしてもいいの?」

「えっ、頭とかやだー…」

「なら、パンみたいに柔らかいところいただきます。」

 と結美の柔らかい唇をいただこうとすると結美は、プッと笑った。

 

「ちょっ…そんなパンいるー?」

「もう、何でさっきからパンに例えるのよ」

「だって結美、パン奉行なんでしょ?」

「いや、違うけど?でも、パン大好きだよ」

 

 チュ〜♡

 

 オレは結美から食べられてしまった。

 

 まさかの不意打ち…

 

 

 

 

 …

 

 

「おかわりください♡」

 

「オレにもちょうだいよ〜♡」

 

 チュ〜♡

 

 

 この世で一番美味しい最高のパンを見つけてしまいましたとさ♡

 

 

 おしまい。

 

 

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