第11話 ダーグ司令官の命令
ワルカ用の斧が完成する。チタン合金製で柄と一体形で斧の形をしているが刃は付いていない。
ワルカに乗り込んだアウレールは左手に盾を持ち、右手で斧を掴む。するとワルカは斧の形状を把握する。さらに彼が斧を持ち上げると斧の重さに合わせてバランサーが作動する。
彼は斧を振り回してみる。問題はないようである。近くで様子を見ていたカイが言う。
「試しに装甲車と自走砲の残骸をつぶしてみるか。」「分かりました。」
エリア29の入り口には、先日の戦闘で廃棄された装甲車と自走砲の残骸が放置されている。
アウレールは装甲車の残骸に斧を振り下ろす。装甲車はつぶれ、2つにちぎれる。
様子を見ていたギャラリーから「おおっ」と歓声が上がる。次に自走砲に斧を振り下ろすと同じくつぶれて2つにちぎれる。
ギャラリーが「いいぞー、俺たちは勝つぞー」など歓声を上げている。
アウレールは、これらに乗っていた人のことを考え、気分は良くない。
タウンズビルの司令官ダーグ・ヘーグバリの元にエリア29での敗退の報告が入る。
「なに、自警団に負けただと居眠りでもしていたのか。」「いいえ、人型の兵器が現れたとかで。」
「自警団がガントかウォーカーを使ったのか。」「いえ、見たことのないタイプで地面から出てきたそうです。」
「そんなものに負けたのか。損害はどうだ。」「死者3名、負傷者4名です。」
「そんなこと聞いておらん。車両に被害はあったのか。」「装甲車2両、自走砲1両大破です。」
「何だと、現場の士官は一兵卒に降格だ。」「挽回の機会を与えてはどうですか。」
「車両を3両も損失した無能だぞ。必要ない。地区担当の大尉にエリア29をつぶすように指示する。」「つぶすのですか。」
「皆殺しだ。自警団も住民も全員だ。」「それでは自治機構が黙っていませんよ。」
「そんなもの、うまく報告しておけ、何とでもなる。力を持っているのは我々だぞ。」「ガントは出しますか。」
「ガントはまずいだろう。軍本部が口を出してくるからな。」「分かりました。」
「代わりにヘリを貸し出してやれ。」「はい。」
命令は即日、クルト・バール大尉に伝わる。彼はエリア丸ごと皆殺しにしろと言う命令に従うことはできない。
彼は、フィクサーに内部告発の手紙を送る。フィクサーは各都市の軍の不正や横暴の対処するために作られている。
彼は出撃の準備をする振りをして時間を稼ぐ。しかし、ダーグ司令官は刻限を切ってくる。クルト大尉は、仕方なく出撃する。
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