第5話 懐かしきハラスメント

自分が社会に出た時と比べて、今はハラスメントに厳しい時代となった。自分にとってはとてもいい時代だ。


新入社員の時代は、今となってはハテナな事が多々あった。


小さな会社だったので掃除は自分たちでやっていたのだが「新人は就業時間前に来てゴミを回収する」という習慣があった。ゴミ集めぐらいだったら何て事ないのだが、苦手だったのが灰皿の掃除である。すれ違いで当たる煙さえも避けたいぐらいタバコは嫌だったのに「人が吸った吸い殻を集め、そしてお皿を洗う」という作業を朝からするのは本当に苦手だった。

残業中や休日出勤の時、自席でタバコを吸う人がいて、その時の煙も嫌だった事を覚えている。


飲み会でも嫌な思い出がある。お客さんとの飲み会では「うちの若いのがお注ぎします」と圧力をかけられ、いやおうなしにお酌していたのを覚えている。

究極なのは、焼酎を作る作業をやっていて「どんな感じにしますか?」とお酒と水の割合を聞いたところ「美味しく作って」と言われた事である。


その道のプロならともかく、まだ社会に入って1年目の小娘にはかなりの難題であった。「美味しくって、どんな割合だろう」と真剣に悩んで、同期の子にも「これでいいかなぁ」と相談した記憶なのだが、今思うと我ながら初々しいと思う。


あの頃は、灰皿掃除もお酌も新人の仕事と思っていた。嫌な感じしか残っていないので「ハラスメント」という定義がついて、あの時嫌だと思っていたのは正解だったんだとホッとしている。





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