生命旅行記−生きる意味を求めて旅をする−

雛奈.

第1話 生きる意味なんて…

僕は亡音生太なきね せいたどこにでもいる、おそらくはごく普通の人間だ…

僕にはひとつどうしてもわからない疑問がある…

それは…

人はなぜ生きようとするのだろうか…

わけがわからない、どうせ死ぬのに…

その意味が、わからない…

死ぬことがわかっているのに、そのことに抗うのか…

そんなことを考えながらいつも外を歩く…

そしていつも同じ場所に辿り着く

15分ほどの所にある病院…?少し古ぼけた…

なんだか少し僕に似ている気がして気がついたら来てしまっている…

たぶんここが、この場所が僕の疑問の答えに1番近い場所だから…

だから、来てしまうのだろう…


その日は大雨だった…

僕は傘をさし、それでも病院に向かった。

そして、1人の少女に出会った

少女は大雨の中、傘もささずにいた それでも美しかった…

こんな僕が、見とれてしまうくらいには…

「あなたは?」

僕は少女に声をかけられた

「亡音生太…」

思わず普通に答えてしまった…

すると少女は笑みを浮かべ口をひらく

「なきねせいたくんか…いい名前だね、だけど、この辺りだとあまり聞かない名前だね、字はどういうふうに書くの?」

「なきは人が亡くなるで、ねは音楽の音、せいは生きる、たは太いって字を書くんだ…」

僕がそう答えるとまた微笑み口をひらく

「亡音生太くんか、じゃあ、生太くんって呼ぶね!生太くん…太く生きる。うん、いい名前だね!」

いい名前か…僕とは正反対の名前なんだけど、まぁ、褒められて悪い気はしない…

「あ、ありがとう…それで 君は?」

そう尋ねると少女はくるっとまわってみせた

「私はめい いのちって書くの…」

いのち…儚いもの…

そこにあって、そこにないような…そんな……

「めいさんも、いい名前だね」

僕はそう返事をした…

今考えるととてもありきたりで薄い言葉だったと思う

…と同時にこれでよかったんだとも思う。

だって…

「ありがとう、生太くんっ!」

こんな素敵な笑顔が見られたんだから

「あ、うん…ところでさ」

僕は今この瞬間の1番の疑問をめいに聞くことにしたんだ

「なぁに?」

「君…いや命はなぜこんな所にいるの?あ、なぜっていうのはこんな場所にってのじゃなくて こんな雨が降っているのにって意味で…」

その問いに対して命はクスクスっと笑い腕を大きく広げて見せた…

水しぶきがとびちり深く深呼吸をすると 命はゆっくりと口をひらく…ちいさく、そしてゆっくりと……

「生きてるってそう感じられるから…」

「生きてる…?」

そういう風に言う人はいままで何人もいた、だけど誰もが具体性に欠けていた

だけど彼女はその具体性の答えまでも持っている気がしていた…

「雨が冷たい、肌が寒い、雨水の匂い、傘をささないと、いろんな感情がいっきにはいってくる。だから、生きてるって感じるの…」

僕は心を奪われた…そのたった少しの時間、言葉で

僕は彼女に…命に奪われてしまった…

「生きてる意味ってなんだと思う…」

命なら僕の人生1の疑問の答えでさえ持っている気がしてそれも問うた

「んー…ごめんね、私にもそれは分からないかな。」

勘違いだった…僕はまわりの誰が見てもわかるように 言葉通りガクりと肩を落とした。

「そっk…」

「でもね、私はその生きている意味を見つける為に生きているんだ!」

鳥肌がたった…

なぜ僕はそんな簡単なことに気がつかなかったんだろう、僕もそうしてきたように疑問を抱いていたように

生きていることに疑問をもち、その答えを探しながら生きている…

「じゃあ、僕と一緒に……」

僕と一緒に生きる意味を探そう…そう伝えようとしたその時僕達は黒づくめの集団に囲まれていた…。

「ごめん、生太くん……」

命は笑っていた、どこか悲しげに笑っていた……

意味がわからなかった…

足が…いや、身体が動かなかった。

「生太くんは逃げてっ!走って!」

命の言葉に僕は走り出す。

無我夢中に走る、ただひたすらに…

途中、銃声のような音が聞こえたが気にせず走った…

今思えばあの音は…

かなり走ったと思う、さっきいた高い建物がもぉ見えなくなっていた 僕は立ちどまりその場に座りこんだ


いつの間にか眠りについていた…

気づけばあたりは薄暗く日がのぼろうとしていた…

僕は立ち上がりさっきいた病院?を目指す…

着いた頃には日が完全に登りきっていて 僕が見た光景は地獄絵図としか言いようがなかった…

血が飛び交い、肉塊のようなものがいたるところに散らばっていた…

その光景をみて僕は意識を失った…んだと思う。

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