葛丘に戦慄再び (週刊太陽 2005)

葛丘に戦慄再び 悲劇が連鎖する恭輝くん絞殺事件

週刊太陽2005.07


城山佳江の逮捕により治安が回復したと思われた葛丘で先月、再び凄惨な事件が起こった。6月9日夕刻、葛丘西駅から車で7分ほどの場所に位置する楠沢森林公園で、近くの小学校に通う白山恭輝くん(11)が首を吊って亡くなっているのが発見された。遺体には亡くなる直前に激しく抵抗した痕跡が残されていたことから、警察は直ちに事件として捜査を始めた。

しかし、恭輝くんの遺体が発見された公園は周りを木々に囲まれ、人の目に付きにくい構造になっている。さらに、事件当日の6月9日、葛丘市全域が激しい雷雨だったこともあり、事件発生から2ヶ月が経とうとする現在でも目撃証言はほとんどないと捜査関係者は言う。

警察は捜査本部を立ち上げ、300名の人員を投入して捜査を進めているが、葛丘の住人は気が気でないだろう。

1996年から2001年にかけて葛丘市を恐怖に陥れた葛丘市連続児童殺害事件は、主犯の城山佳江と夫で共犯の満生の逮捕で解決したかに思われた。共犯の満生は実刑判決を受けたが、主犯の城山佳江は精神鑑定の結果、責任能力を認められず無罪となった。

そしてこの事件が葛丘市を再び恐怖に陥れた。葛丘市では事件の前から、無罪判決となった城山佳江の目撃情報が相次いでいたのだ。


「城山佳江さんは適切な観察の下でしかるべき治療を受けています」


法務省は、城山佳江の現在についての編集部からの問い合わせに、こう回答した。


「(城山佳江を)このまえも駅で見かけましたよ。ニュースの写真そのままの、人を殺してても不思議じゃない陰鬱そうな女でした」


と、葛丘市のタクシー運転手(46)は証言した。彼女に無罪判決が下された直後から、見かけるようになったと言う。


「(城山佳江は)葛丘に戻ってきたって噂だけど、また何かするんじゃなかって不安だよ」


葛丘市に住む主婦(46)もそう述べる。

住人の中には葛丘市に戻ってきた城山佳江が恭輝くんを殺害したのではないかと疑っている者も少なくはない。彼女がつい数年前まで行ってきたことを考えれば当然のことだろう。

そして事件はさらなる悲劇を引き起こしていた。それはこの事件で亡くなった城山恭輝くんの母・美恵さんの自殺である。

恭輝くんの死の報せを聞いた美恵さんは、ひどく取り乱したという。警察は彼女の様子を考慮して、聞き取りを断念。しかしその日の深夜、城山美恵さんは自宅の洋服ダンスに引っかけたロープに首を吊って自らの命を絶った。


「恭輝くんのお母さんは、昼間仕事に行っていたんですが、あの(連続児童殺害)事件の犯人が捕まるまでは、毎朝恭輝くんを車で送っていました」


恭輝くんと同じ小学校に子供を通わせている女性は、そう語る。


「(美恵さんは)恭輝くんをとても可愛がっておられました」


生前の美恵さんをよく知る会社の同僚もそう答えた。


「旦那さんと別れられていますし、特にだと思います。(連続児童殺害)事件が解決するまでは、この街で子育てすることにとても不安を抱えていたはずです。ようやく犯人が逮捕されて安心できたと思ったのに、こんなことになってしまうなんて、本当にショックだったんだと思います(前述の同僚)」


警察も被害者の年齢や殺害の手口などから、恭輝くんの殺害と葛丘市連続児童殺害事件との関連を調べている。しかしながら現在も犯人逮捕には至っていない。

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