陰陽の道

Umi

一章 空亡

第1話 プロローグ

 ここは【千葉県立美浜高校】。

 比較的新しいこの学校に国のとある調査機関が訪れていた。その者達は今の日本人には珍しい狩衣を身にまとっていたため、生徒たちの好奇の目に晒されていた。しかしその者たちは好奇の目に晒されるのは慣れているのか、気にする素振りはみせなかった。


「なぁせいめい、あれが陰陽師ってやつか?」


「はぁ、何度言えば分かるんだよ。俺の名前は晴明せいめいじゃなくて晴明はるあきだから!陰陽師かどうかなんて知ってる訳ないだろ?」


「いやだって、せいめ――」


「はるあきな」


 この俺こと倉橋晴明は小さい頃からせいめい、せいめいと間違え続けられたため、【せいめい】という言葉には反射的に突っ込んでしまう身体になっていた。


 そしてこの【晴明】という名前のせいで、陰陽師だろとか言う弄りを小学校高学年くらいから今の今までされ続けて来たから陰陽師なんかになるつもりは無い……はずだったんだが。


「なんと!陰陽師の家系に産まれた訳でもないのに【甲】の判定が出るとは!!」


 俺の目の前でそう叫ぶのは、陰陽寮人事部所属の佐藤さんだ。


「あー、いい判定が出て喜んでるところすいませんけど、俺は陰陽師になるつもりなんかないんですけど」


「……それは難しいですね。政府の発布した【陰陽師育成令】では甲の判定が出た者は【陰陽寮付属高等専門学校】への入学が義務付けられているので」


「そうなんですか……」


 俺は陰陽師になるための学校へ通う義務があるらしい。俺の甲という判定は、十干と呼ばれる古代中国の数字で用いられていた物で下からしんこうていへいおつこうの10個であり、俺の判定である甲は最高位であるってことだ。


 ちなみにさっき俺と話していた友達の町田君は癸判定だったらしい。いいな羨ましいよ。


 甲という判定が出てからトントン拍子で俺の転校が決まり、甲判定が出て数分後にはもうこの学校の生徒じゃなかったらしい。せっかく勉強して高校に入ったのにこの仕打ちは少し酷いと思うんだ俺は。まあほぼ勉強してないからいいんだけど。


「では一週間後陰陽寮の迎えが来ますので、それまでに荷物をまとめておいて下さい」


 ちなみに佐藤さんが敬語なのは俺が甲判定だったからとかではなく、学生の調査に派遣される職員は皆敬語という陰陽寮の方針があるらしい。


「もしかして寮生活だったりします?」


「ええ。【陰陽寮付属高等専門学校】は全寮制の学校であり、外部との連絡が緊急時を除いて基本禁止になっております」

 

 きっと全寮制の学校は厳しいと思ったから、迎えが来る一週間後まで遊びまくったよね。そしたら前日になって全部準備する羽目になってちょっと後悔したよ。


 こうして俺は【陰陽寮付属高等専門学校】に向かうことになった。

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