未熟な僕ら

大和滝

Prologue

 自分がゲイだと気がついたのは9歳の頃だった。

 クラス替えでできた新しい友達に僕は初恋を捧げて、そしていとも簡単な言葉で砕かれた。


「男なのに気持ち悪いよ」


 この言葉はインフルエンザのように広まっていき、あっという間に、香取伊月かとりいつきという僕の名前と、……、などの単語の間にイコールが入るということが常識となってしまった。

 誰も僕を受け入れてくれない。そう絶望してしまえば楽だと思った。

 だけど大丈夫だった。僕にはたった2人、だけど偉大な2人の親友がいた。星野渡ほしのわたると、日比木護ひびきまもるだ。

 僕ら3人は、例えるならジグソーパズルが隣り合わせでピッタリ噛み合っているように、誰一人として代えの効かない存在だった。

 僕らはお互いの足りない部分を補い合って、常に3人は一緒に行動をしていた。あの頃も、きっと今でもそうだ。僕らは僕らの世界がある。

 そう。僕らだけの聖域だ。


 中学に進学しても僕のことは知られていた。喧嘩っ早い護は、僕のことを庇って手を出して、逆に怒られていて……、そのせいで不良だと目をつけられてしまっていた。当然一緒に行動している僕と渡も危険視されるようになって、僕らは浮いた存在へと変わってしまった。

 俺のせいでごめんと謝る護に僕は言った。

「勉強しよう。めっちゃ勉強頑張って、みんなでいい高校にいこう。そうしたら頭の悪いクラスの奴らなんていないよ」

 別々の道に進む。そんな考えは無かった。中学生になって僕らはお互いの足りない部分をより理解したために、今まで曖昧に埋めていたものが実態を持ったことになり、離れることはできなかった。


 そして僕らは欠けることなく、僕らの住んでいる町の隣町にある名門、芽蒙がもう高等学校に入学を果たした。

 知っている人は今僕の両隣のいる2人だけ。新しい高校生活を僕は謳歌したい。そんな単純な願いが、僕らの幸せになる。

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