第41話 サーミャの力

「希望の力に目覚めたのですか?」


「うん。そうみたい。それにまだ覚醒はしてないけど、博愛と秩序の力も私にはあるらしいよ」


 そういうと、サーミャは驚いたような顔をした。その後、柔らかい笑みを浮かべ、俺にこう言った。


「ユーニャ様にほんと、そっくりですね」


「私は先代ほど強くないんだけどね?」


 先代は聞くところによるとサーミャですら手も足もでないほど強かったらしいし。俺じゃ、逆立ちしてもサーミャには勝てないだろうし。


 いや、もしかすると【希望】の力でもしかすると戦いになるのかもしれない。


「ふふ、試してみます?」


「さすがにやめておこうかな……」


 今日は2人しかいないんだから、どちらかが怪我するとダンジョンの攻略が大変になる。まぁ二人とも吸血鬼だから回復速度はめちゃくちゃ早いけど。とはいえ、ね。


「でも、いつかは挑戦させてもらうよ?」


「もちろん、お待ちしています」


 すると、どうやらサーミャの探知範囲に魔物が入って来たらしい。


「弱い魚の魔物のようですが……。ミーナ様、戦いますか?」


「いや、多分オニサバだろうし、いいかな。徘徊ボスでも探そう」


 技を教えてもらう以外のここでの目的は徘徊ボス、スカイマグロ。A級最上位で、超うまい食材をドロップする。


「お言葉ですが、ミーナ様。お教えする血液操作の精度向上には体躯の小さいオニサバがふさわしいですよ?」


「あー確かに、じゃあ行こう」


 サーミャに案内してもらって、オニサバの元にたどり着くと、普通のサバより少し大きい程度のサバが100匹以上塊になって空を飛んでいた。


 あれを打ち落とすのは確かに練習になりそうだ。


「さて、それでは授業を始めます。とは言っても、教える内容は簡単でして。魔力と血の混ぜ合わせ方、これをマスターすれば、血液操作で様々なことができるようになります。単に剣、盾のようなものを具現化するだけのものからさらに精密に、そして、硬くするだけだったものをしなやかに操作するようにしたりなどとできることは多岐にわたります」


 サーミャの手から糸のように細い血液が伸び、一匹のオニサバを貫くと、サーミャはオニサバを手繰り寄せて見せた。


 血の糸は、とても細いのに切れることはなかった。俺があそこまで細くしようとおもったらまずできないし、できたとして、それはすぐに切れてしまうものになるだろう。


「さすがだね、サーミャ。私も頑張るよ。えっと、血液操作に使う魔力のブレンドを変えるんだったっけ……」


 やってみると、なかなかに難しいが、確かに血液が変質しているのが分かった。


 ああ、これを調節していけばいいんだ。そして、サーミャはこれの調節が目標に合わせて瞬時にできるんだろう。


 やはり年の功か。


「いい感じです。ミーナ様も1匹、やってみましょう」


「やってみる」


 糸のように練った血をオニサバに向けて飛ばす。その血はオニサバを貫きはしたものの、引き寄せようとすると糸が切れてしまった。難しいな。


「いい感じですね。その調子で繰り返していきましょう」


◇◇◇


 群れを全滅させるころにはいい具合に血液操作で糸が作れるようになっていた。


 ただ、粘性を増やしたり、魔法を纏わせたりとかはできるようにならなかった。


 サーミャは途中他の群れを探し出し、粘性を増やした血液の糸で漁をして遊んでいた。


 その後に雷の魔法を纏わせて電気ショックですよとか言ってたり、遊び感覚でやってるんだよな。


 俺もそんな感じに魔法を使えるようになりたい。


 途中徘徊ボスことスカイマグロに遭遇したが、サーミャが瞬殺した。ドロップアイテムの特上大トロは後で寿司屋に持ち込もうと思う。


「さて、いい時間ですね。今日は切り上げて帰宅しましょう」


「そうだね。でも、せっかく小樽に来たんだから、帰る前にご飯を食べて行こうよ。運河ダンジョン出てすぐに寿司屋もあることだし」


 高級な感じらしいけど、今なら全然大丈夫!


 配信とかの収益に魔石やドロップアイテムの収入もあるし。


 衛生管理も良いと聞くから、持ち込みの特上大トロは調理してくれるか怪しいが……。


 とにかく行ってみよう!


「寿司、ですか。初めての食べ物です」


「美味しいよ?」


 運河の灯を見ながら食べる寿司。ずいぶんと懐かしいなぁ。


◇◆◇


 いかがでしたでしょうか。もしよろしければ同時連載を始めた「悪役転生!? どうでもいいからモテさせてくれ!」もご一読くださいな!


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