TSメイドですけれども、お嬢様を釣ろうとしたらストーカー腹黒執事長が釣れた件

第1話

「貴方、わたくしの側仕えにならないかしら？」

あの日、俺は女神に出会い日常が１８０°変わった。まず、過程は省くが俺は最高の職場にTS美少女になって就職した。まず時給が良い、あと主人が美女、有給も在るこれ以上アットホームな職場は無いだろう。そんな幸運な俺の自己紹介をしよう、俺はルルレイア・ルジュ・ルブール。前世が健全な男子高校生だがよくわからんが死んで魔族の美少女中の美少女になり魔族領の令嬢として育った。が、俺のパパンである魔王が人間界の勇者にアッパーされちょっとダウンしてしまいお金持ち自由令嬢生活終了。幸か不幸か俺は顔がいいからと見ず知らずの勇者が俺を嫁にと望み結婚のあと一歩のところで男は嫌いだから逃げた。逃亡ウェイ⤴で、俺は女神のメイドとして働いている訳だ。大丈夫、パパンには一応『娘LOVEなら大目に見てくれや』と手紙を残しておいた。別にパパンは優しいから許してくれるよな！うん。だよね、パパン。娘置いて死なないよね。そんな事を心配しながら俺は廊下を歩き我が女神であり主人である人間の公爵令嬢シャルロット様に捧げるお食事を厨房から受け取りに行く

「おーい、料理長！お嬢様のメシできたー？」

「ルルちゃん！ちょうどいいわぁ。アツアツだから気をつけて運びなさいよぉ」

俺に笑顔で香ばしい料理を渡すエプロンを付けた屈強な化粧を着けた男性。彼女はジャスティン・グック。年齢不詳のムキムキなオネェ様である。余談だが娘と息子がいるらしい。あと女子力は公爵家随一を誇るレベルで高い。俺は一生彼女に女子力で勝つことは不可能に近いだろう。料理をワゴンに乗せ食器を置き小走りで廊下を走る。早くでもお嬢様にアツアツの朝食を食べて頂くために。だが料理の配膳係ではない。お嬢様の身の回りの支度は8割が執事長であるアスモデウスが担当する。あとの着替えとかを入れた二割は専属メイドである俺の担当だ。お嬢様のお部屋の前で待ち構えているアスモデウスにワゴンを託す。

「お嬢様の朝食、託すぞ」

「なぜ朝食如きで貴方は毎回毎回、神に貢ぐ信者のようになるのでしょう？」

「それはお嬢様が女神だからな」

何こいつ、意味不明みたいな顔しているアスモデウスに俺はお嬢様の事を喋ると永遠に喋ってしまうので簡潔に、簡単に返答する。アスモデウスはその公爵家の執事長に相応しい整い過ぎた顔をしかめっ面から営業スマイルに変えお嬢様のお部屋に入っていた。チッ、羨ましいぜ。俺はお前の二割しか入れないっつうのに。俺は表情には出さないが少々苛立ってメイド服の裾を不自然に見えぬよう握る。あー、もうお嬢様と俺以外全員死ねばいいのになー。そしたら永遠にお嬢様を独占できるのに。でも今の俺の力じゃ消し飛ばせたとしても精々大きな島一個分だし、限界があるし。俺は心の何処かから湧いてきたメンヘラ思考を消し飛ばしホコリ一つ無い廊下を見渡す

「あっ、ホコリあった」

訂正します、ホコリはありました

軽く掃除しお嬢様の部屋にお召し物を替えるため化粧品などを倉庫から探しに行った

しばし歩いてから着いた倉庫に鍵で厳重な南京錠を開けて入る。中は沢山のお召し物や化粧品、他にも様々な用具なども置いてあった。それを手にいっぱい抱えお嬢様の元へ向かう

「お嬢様、お召し物をお変えに来ました」

軽くノックをし45°お辞儀をして恭しく入る。

「あら、ルル。今日もありがとう」

鈴を転がしたような声の持ち主は俺の女神であり主人でも在るシャルロット様。キャーかわい～！貴方の為なら死ねます！むしろ喜んで死にますぅ！！！表情に出ないよう笑ってから表情固定（アルティメット）モードに変えてお嬢様に近寄る。

「食事を下げてくるわ、お嬢」

入室する俺と入れ替わるようにお嬢様にタメ口を使って食器を片付けに去るアスモデウス。お嬢様はあんなヘラヘラして時に腹黒いやつのどこが好きなのか。お嬢様が化粧台に座ったので髪をとかす

「お嬢様、髪型をどうされましょうか？」

「ルルの好きなようでいいわ」

「かしこまりました」

やったー！お嬢様からお嬢様の髪をすきにいじる許可もらっちゃったー！手が震えてヤバいかも。そしたらお嬢様が突然俺に聞いてきた

「ルル、貴方最近困ってること無いでしょうね？表情が明るくないわ」

「ありません...と言いたいところですけどやっぱり分かります？実は私、誰かにストーカーされてるらしいです」

「ゴホッ」

いきなりお嬢様が咳をし始めた

「大丈夫ですか！お嬢様！！！」

「大丈夫よ、ルル」

お嬢様はそう言って健気に笑うが...大丈夫なのだろうか