神様はつくれますか?
秋田 夜美
プロローグ
「くっ、このままでは……」
辺りには強風が渦巻き、先ほどまで着用していた黒の
しかし、男はそんなことを気にしている余裕はないようで、手にした
視線の先のひとつには、小柄な女がいた。
平時はキレイに整えられているであろう灰色の長い髪は、やはり風に
この女もまた、必死の形相で
「はぁ……はぁ……」
その表情は
ガクガクと震えだす身体を押さえこもうとしているあたり、
視線のもう一つには、黒のマントを
この男だけは
さらに不思議なことには、
最小限の
恐らく、この男の錬成は一段抜けた存在なのだろう。
ただ、そんなマントの男の身体にも異常が発生していた。
精気が、表情が、ないのだ――。
顔つきは病院のベットに横たわっている病人とそう変わらない。目の下には濃い
「耐えてくれ……耐えてくれ……耐えてくれ……」
その震えが男の祈りであることには、神様さえ気付かなかったのかもしれない。
「おお…!」
ボッと火が
いつの間にか、この半円上のドームに十数人の錬成士が入ってきていたようだ。
だが、その高揚感も
錬成士たちの
三人が
そして、互いに力強く
思わぬ形で
どれほど時間が
自らが発する光によって
その光がドームの頂点にたどり着くと、ガラスのような透明な素材で構成されている円形の天窓を破壊することなく貫き、ぐんぐんと空へと昇っていく。
「あと少しだ……」
黒マントの男が再び精気の失った表情で、その光に追いすがる。
先ほどよりも希望が込められたその言葉は、錬成の成功を予感させるようであった。
しかし――。
それは正しくなかった。
男が呟いた直後、
「なん……だと」
男は
その光景に目を見開いた男の表情は、正気を取り戻した時のそれだった。
「ノーテぇぇえーーー!!!!」
女の名であろうか、男は絶叫した。
だが、時すでに遅く、
「どうして――。みんなは、どこへいっ……」
男が辺りを見渡すと、背後に白い何かが
それは――。
厚く信頼しあっていた仲間たちの
「あっ……あぁぁあ゛あ゛ーー!!!!!」
泡を吹いて失神した者。血を吐き崩れ落ちた者。身体が砂と化して散った者。
いずれも
彼らは、錬成を成功させるため――いや恐らくは三人を生かすため――限界を超えて
黒マント男は極限状態の錬成に全てを
もうこのドームで立っているのは、この男と
沈黙が支配するこの空間で、
何が起きているのかは想像に
マナを大量に溜め込んだ
しかし、今その
錬成は失敗したのだ。
ひと際大きなビシッという音が響いた後、
その余りの眩しさに目を
あの黒ローブの男の悲しい
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