第58話 第3弾ガチャの終了と問題



 ガチャ屋は三回目にして完全にカオスとなった。むしろこれまでが順調過ぎたのだ。そろそろ、問題が積み重なってアクシデントと化してもおかしくない。今回はまだ大丈夫だろうが、時間の問題だろう。

 その傾向は既に見られている。

 ただでさえ、以前からガチャに爆死した者達が発狂しているヤバい店ではあったのだが……今はもっと悪化しているのである。もちろんアルバイトとして雇われた者達が逐一注意を行ったりしているが、おかしな挙動をする者達が多過ぎて収拾がついていない。ガチャ屋が生み出してしまった悲しき被害者に今度はガチャ屋が苦しめられるはめになっているのだ。人はそれを自業自得という。


 迷惑な客達の内訳としては――――、

 


「……また強化パーツ当たっちゃったよ……!? もういいって……!! 魔剣が無かったら意味がないんだから!!

 あぁ……もう! 前回も外したから、今回こそはって思ったのにぃ……!!」

 

「キーホルダー……キーホルダー……キーホルダー、何度見てもキーホルダー……。……………………………………ア、アアアアアアアアアアアアアア!?!?」


「魔剣どこ……魔剣……当たって……」



 一つ目は、ガチャで爆死して発狂する者。これはまぁいい。いや、良くはないのだが――これらの人達はガチャを始める前から出るのが分かっていた問題だ。一般客の人達からしたら、不安を煽られるのでやめてほしいものなのだが、田中にとっては素敵なbgmのようなものなので、特には規制をするつもりはない。田中のガチャを始めようと思ったキッカケでもあるので、これを規制するなんて有り得ないことだ。


 問題はここからである。田中がまったく予期していなかった者達。

 それが二つ目の、ポーションを飲みに来た、美食家を名乗る者達。


「ふむ……これが我らが同士、ポーション愛好家君が熱く語っていたポーションか――――――どれどれ……まずは一口。

 ――――これは……美味い!? 今まで味わったことのない味だ!? まさか世の中にこんなスープがあったなんて……私は今……猛烈に感動している!!」


「――――素晴らしい。そうとしか俺はこの味を評価することが出来ない! 味覚をこうも刺激する」


「俺は決めたぞ! 必ずポーションを世界三大珍味に加えて、世界四大珍味にしてみせる!

 それだけのポテンシャルがポーションにはあると感じた!」


 彼等はその場で、ポーションの味を評論し始めるのだ。ポーションの間違った使用法を広めている原因でもある。

 

 そして、他にも、願掛けに投げキッスをする者達。これは主に以前にあったダンジョンのゴミ拾いオフ会に参加した者に多い。開祖? である魔剣好き好き戦士がヘドロ臭かったりと嫌な物もあるが、何だかんだいって最高レアの魔剣を手に入れれていることから、効果があるのではないかと考え実行しているのだろう。筋肉ムキムキの厳つい男達が投げキッスをする姿は、見た者全てに精神的ストレスを与えること間違いなしだ。


「チュッ」


「チュッ」


「チュッ」


 オカシイ者達が一カ所に集結したばかりに一般客はもちろん田中達運営でさえも困惑していた。

 なお、単体でその場にいる全員を疲れさせる魔剣好き好き戦士は殿堂入りしている。

 

 しかも、迷惑客のグループ一つ一つはそんなでもないが、それらが同時に出没すると、大変鬱陶しいことになるのである。


 今回は特に高レアの魔剣を目立った人物が当てることはなかったので省き、第三弾ガチャの終了コメント時には――――――、


「えー、第三弾魔剣ガチャは品切れした為「チュッ」……これにて終わります。「魔剣アタラナカッタァァァァァーー!!大爆死だぁぁぁぁぁ!!」……次回のガチャでは数の総数を増やしますので、「ポーションもっと飲ませてくれぇー!」……またのご来店をお待ちしています」


 ――――このように、まともに閉会式すらも行えない。まるで動物園のようになってしまった。かつては、拍手の方が音が殆どであったのが、もう末期だ。

 光の魔剣という魔剣の中でも人気が出る物を売りにして沢山の新規客を呼び寄せることに成功した第三弾ガチャ。しかし、同時にとうとう浮き彫りとなった、ガチャ屋の問題。 

 これを田中達はどう乗り越えるのだろうか?

 


――――――――――――――――――――



 店屋にシャッターを下ろしながら、田中は今日のことを思い返す。


「散々だったなぁ……」

 

 爆死して発狂する冒険者達の嘆きはまだ許せる。だが、問題なのは他のポーション中毒者達と投げキッスを手当たり次第にしてくる者達がかなり鬱陶しい。

 田中はこのまま放置していいのか、と自問自答したが結論はすぐに出た。――このままでは不味い、という結論に。誰が見てもそうだ。

 爆死を見て愉悦し、客達を振り回す側に立つ予定だった自分が何故かいつの間にか振り回される側にまわってしまっているという事実に気付いた田中。

 彼はふと、心の中で疑問に思っていたことをつい口に出して呟いた。


「客が狂ってる奴らばっかりなの……本当にどうなってるんだ??

 特に魔剣好き好き戦士ニキ。何より、問題集団の中で、投げキスをしまくる奴等が一番害が無いっていうのが全体の狂いレベルが高さが分かる……」


「魔剣好き好き戦士…………ヘドロの臭いに嫉妬ってどういうことなんだろう……?」


「まだ考えていたのか。共感出来たその頃には第二の魔剣好き好き戦士になってそうだし、やめといた方が身の為になりそうだぞ?」


「第二の…………なりたくない。考えるのやめる」


 改善案を見つける為に、田中達は話し合い続けるのだった。





  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る