第三章 ビームはみんなのロマン
第48話 ビーム剣は即ちロマンである
ビームとは――即ちロマンである。
フィクションにおいてビームは定番であり、SFでは兵器が放ち、ファンタジーでは魔法を利用して放ったりしている。そして――総じてビームを用いた攻撃は強いという印象がある。
では――ビームとは何で出来てるのかと聞かれた場合、何をイメージするだろうか?
――それは光だ。
理屈は分からないが、光が凄まじい速度で打ち出され、斜線上のすべてを消滅させる。そんな普通に殺傷力がヤバすぎるが、それ故にロマン溢れる必殺技や兵器としてネタになっているのが、ビームである。
さて――田中達は炎の魔剣、雷の魔剣とをガチャの景品として出してきた。
そして今回――つまりは第三弾のガチャの目玉となるのが、“光”の魔剣だった。
そう“光”だ。光なのである。
つまり撃ててしまうのだ……みんなの憧れビームを!
しかも剣で放てるというおまけ付きだ。
光の魔剣を手に入れたのならば――まるで聖剣を手に入れたような気分になることこの上なしである。
聖剣を持って破竹の大活躍をするというのは、男の多くが中二の時に描いてきた夢だった。
田中達は、このロマン溢れる魔剣をとうとう解禁する予定なのだ。
これは――ビームを撃つことに憧れる者達の夢がとうとう叶うときが来たということを意味していた!
――――――――――――――――――
田中と灰華の次回のガチャ屋に関する打ち合わせはとても時間が掛かる。
それは――――話すことがありすぎるから、というわけではない。
「少し前にあったダンジョンでのゴミ拾いに見せかけた魔剣争奪戦は、掲示板で見ていただけだったけど楽しかったなー……最後はドン引きだったけど」
「結局、愛とか言ってたあの変な人が手に入れたんだっけ?」
「……あぁ、なんかヘドロまみれの汚い魔剣にキスをして争奪戦は終了したな。意味が分からん。
あの魔剣……これからも使うのかな? 臭いだろうに……」
「汚い……」
二人の脳裏に浮かび上がったのは、唇にヘドロを付けてサムズアップする魔剣好き好き戦士の姿だった。
「元の持ち主だった奴は、ゴブリン二匹と同時KOで倒れてるし、インパクトのある奴ばっかりだったなー。
さすが、掲示板のオフ会に参加する奴らだ……」
「……変な人ばかりだったね」
店を構えているいつものショッピングセンター内のフードコートでご飯を食べながら会話をする田中達。
会話の初めの目的としては、次のガチャの目玉となる“光の魔剣”ガチャの打ち合わせであったはずなのだが……。
――いつの間にか話は脱線しており、少し前に起きた二見がLR魔剣紛失したことから始まった、ダンジョンゴミ拾いオフ会についての話へと話題が変わっていた。
そう、打ち合わせにとても時間が掛かる理由――それは田中達がすぐに雑談してしまうからだった。
今回の場合、それが魔剣好き好き戦士の愛の物語(ラブロマンス)だったというだけの話だが、魔剣好き好き戦士の件の行動が印象深かったのも原因として少しある。
そして――――ダンジョンゴミ拾いオフ会に関連した話(無駄話)は三十分ほど行われ――――
ようやく元の路線に一時的に戻ったのだが――――またもやすぐに脱線した。今度は灰華が脱線させた。
当初からガチャ屋を始めた理由が、人の爆死を運営側から眺めたいという酷い物だったが、その時から世間の注目をこれだけ集めているのにも関わらずマイペースなのであった。
そうして、本来の真面目な打ち合わせへと戻ったのは、なんだかんだ一時間掛かった後のことである。
そして打ち合わせ自体は、そもそも新しく決めるようなことは特になく――――あくまで再確認のようなものであり。
「なんかガチャ屋のシステムで変えるようなことある?」
「……無いと思う。 基本みんな満足してるみたい」
「じゃあ現状維持でいっかー」
「うん」
この二回のやり取りで終わってしまった。排出確率などもっと直すべきところはいくらでもあるはずだが、そういうシステム的な面は一切改善されるようなことはなかった。
いや――――そもそも田中は爆死を望んでいるが故に、考慮するつもりなんてないのかもしれない。
今回の打ち合わせで前回と少し変わったのはたった一点。
その後、田中が思い出したように提案した案が採用された点ぐらいだった。
田中達は絶望的に店の運営に向いていないのではないだろうか?
「あ、そうだった。ちょっと前に掲示板を見てて、いいこと思いついたんだった。
今回も今まで通りに、事前に光の魔剣を使ってみせる配信をするわけなんだが……」
「うん」
「今回は趣向を変えて、ゲストでも呼んでみようと思うんだ。他の配信者だってコラボ?みたいなのやってるし、流行に乗ろうかなってこの案を考えついたんだ」
「ゲスト? 思い当たらないけど、知り合いの人?」
「いや、知り合いじゃないな。そもそも会ったこともないから、面識もまったくない」
「それ……他人」
「まぁ、打診して見るだけだ。光の魔剣のイメージに合いそうな奴を前に掲示板で知ったから、試しにゲストとして今回だけ、配信に登場して貰おうと考えただけって感じだな」
「あなたが店長だし、それでいいならいいと思う」
配信において、とある人物を呼ぶことを決めた田中達。
果たして、田中と直接の面識は無いが、掲示板で知ったゲストとは一体誰なのだろうか。
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