第27話 第2弾ガチャ終了
物欲センサーでポーションがすり抜けした結果、LRの魔剣を当てたポーション愛好家は帰り、残すLRの魔剣はラストワンのみとなった。
本来望んでいた物とは違う物が、出てきて欲しくない時に限って出てくる。それが、物欲センサーの恐ろしいところだろう。
ポーション愛好家にして見ると、たとえ希少で且つ強力な魔剣よりも、一本でも多く、美味しい?スープであるポーションの方が欲しかったのかもしれない。
その後も、ラストワンの魔剣を求め、冒険者達がガチャをまわしていき――――特に語ることもない、普通の冒険者がキーホルダーを当てた際にガチャガチャの中身が売り切れることとなる。
「やったーー!!! ラストワンだ!!! LRの魔剣がデタゾォォォォォォ!!! ヒャッホーゥゥーーー、 俺の運ヤバすぎぃぃぃ!!!」
当てた普通の冒険者は、まるで宝くじの一等が当たったかのように小躍りした後、バックテンを決めて、ハシャぎ――――
周りの冒険者達に、
「調子に乗ってんじゃねぇぇぇぇ!!」
「ムカつく踊りをしやがってぇぇ!!」
「爆死した俺を馬鹿にしてんのかよ!! なんなんだその踊りは煽ってんのか!!」
大バッシングを受けたことでビビったのか、いそいそとLRの魔剣を交換して貰うと、すぐさま冒険者用ショッピングセンターからスキップしながら、帰って行った。
「スキップしやがって」
「逃げるんじゃねぇ」
「おい、俺の愚痴を聞きやがれ。お前にはその責任がある」
――――逃げていく背中に向けて、投げ掛けられる言葉は辛辣な物ばかりだった。彼らの精神状況的に、今は何をしても好意的には受け取られないのだろう。
――などの出来事が起こったぐらいで、それを除くと他には特筆すべきようなことはなかった。
――こうして、ラストワンのLRの魔剣も名も知らぬ冒険者の手に渡り、第二弾のガチャは終了。
そこからは、前回通りに田中がまだ残っている客に向けて終了挨拶を行い、「ガチャ屋ロマン」の二度目の営業は終了するのだった。
――――――――――――――――
その日の夜。
祝賀会を開いて、お腹一杯食べた田中と灰華は、今日の出来事について話し合っていた。
そして、何故か田中の前にはご飯が置かれている。まだ何か食べる気なのだろうか?
「今日さ……なんか変な人が二人来たじゃん?」
「来たね。魔剣が好きな人とポーションを飲むのが好きな人」
「そうそう、その二人。特にあの魔剣が好きな人ヤバかったよなぁ……あの人が持って来てた壊れた魔剣……たしか朱莉?だっけ。人の名前みたいな名前だし、なんで剣に付けたんだろうな……」
「……わからない 」
「そりゃそうか……」
「……そういえば。直す依頼断ったのは何故?」
「え……?そもそもあの破片状態じゃあなぁ……。 破片と普通の剣を合成したとしても、合成の合成ってことになるから、性能的にも弱体化するし……。
それに、直すのまでやってたら、仕事がアホみたいに増えそうだから、やりたくないな。……もしかしてマズかった?」
「特には。ただ、あまり会いたくないだけ」
「あー……絡まれてたもんな……。変なアドバイスを訳知り顔でしてきてたし……」
「あれ、ほんと意味がわからない」
田中達は溜め息をついた。
「ところで……あのポーションをガブガブ飲んでた人いたじゃん?」
「うん、いた」
「あの人がさ、なんかポーションはご飯と合いそうだって言ってたんだけど、どう思う? ちょっと試してみようかなって思ってるんだけど」
「正気? 絶対美味しくない……」
「まぁ物は試しって言うし、やってみよ」
田中はポーションの予備を取り出し、ホクホクのご飯へと振りかけた。
ポーション掛けご飯の出来上がりである。
「醤油とかも入れるべきなのかな……? まぁ初めはそのままで食べてみるか」
「少し気になる」
灰華もなんだかんだ気にはなっていたのか、田中がポーション掛けご飯を食べるのを興味深げに見つめている。
「じゃあ、いただきまーす。もぐっ――――――うーん、何が美味しいのかよく分からないな。ポーションはいくら飲んでも、よく分からない味だ。……醤油も掛けてみるか、もぐっ――……ヴッ…………」
「ヴッ……?うまいって言おうとした? もしかして美味しいの?」
「……ごめん、トイレ行ってくる」
「……行ってらっしゃい」
田中は青い顔をして、トイレへダッシュして行った。
――トイレから帰って来た田中。
果たして、ポーション掛けご飯の気になるお味は――――!?
「……なんか脳が拒絶反応を起こした。今までに経験したことがない味なせいもあって、受け付けられない」
「なにそれ……」
醤油とポーションが何かの化学反応でも起こしたのか、劇物が出来上がったようだ。
卵かけご飯には醤油は合うが、ポーション掛けご飯は“まぜるなキケン”ということなのだろう。
「ほんと、ポーションのどこが美味しいんだろうな……」
「そもそも味目的で飲む物じゃない……」
「……正論だな」
「でしょ」
ポーション愛好家曰く、珍味らしいので、食通な人にしか分からない魅力があるのかも知れない。
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