ガチャ廃人、ユニークジョブ『アルケミスト』を手にいれる~最強の魔法武器を作れるようになったので、景品にしてガチャ屋を開いたら大繁盛しました~

出来立てホヤホヤの鯛焼き

第一章 ガチャ屋 始動

第1話 みんなをガチャ沼に落とそうぜー!


 1人の青年冒険者がいた。

 飛び抜けた才能もないD級冒険者。


 冒険者歴は三年にもなるが、命を懸けて戦うことは避け、これからも平凡な冒険者として生きていくであろう人間。


 それが――田中太郎という人間だった。

 キラキラネームというわけでもなく、名前からしても普通という有り様である。

 特徴といえば、ダンジョンで得たお金をソシャゲで溶かす、ガチャ中毒者というぐらいだった。



 ――そんな田中にある日奇跡が起きた。


 ユニークジョブである『アルケミスト』というジョブを手に入れてしまったのである。

 


 この世界にはジョブというものがある。ダンジョンに潜っていると、たまにゲットできる探索において役に立つ代物だ。条件はなく、全ては運に掛かっている。


 ジョブは、ユニークジョブであるかどうかも含めて、ダンジョンの入り口にある石版に触れるとそのジョブに関する情報が文字で浮き上がり、確認することが出来る。そしてジョブが無ければ何も反応を示さないのである。

 普通のジョブでも冒険者の中でも1000人に1人しか持っていないと言われており、このジョブがあると、スキルと呼ばれる謎の技が使えるようになる。無ければB級冒険者には上がれないほど重要なものだ。



 さて――ジョブに対して、ユニークジョブはというと、ジョブの所持者の中からさらに1万人に1人といわれている。

 それに加え、ジョブは同じものを複数人所持者がいるが、ユニークジョブ持ちは1人だけしかいないのだ。

 つまり、田中以外に『アルケミスト』というジョブを持つ者はいないのだ。しかし、レアなだけあり、恩恵も凄まじく他にないような強力なスキルを手に入れていくことができる。ユニークジョブとはそういうものである。



 田中のユニークジョブ『アルケミスト』に初めから備わっていたスキル「合成」は、その名の通り、物と物を合成できる能力だった。


 炎系モンスターが落とす、ドロップアイテムの炎の石と剣を合成すると、炎の魔剣に


 光の石とヘルメットを合成すると、光り輝くヘルメットに


 ――といった具合である。


 一見、大したことがない能力に見えるが、ジョブである『鍛冶屋』は切れ味の良い普通の武器や防具を作るのは得意でも、魔剣といった魔法武器は作れなかった。

 つまり、漫画の作品などで発想としてはあるものの、空想の産物だったのだ。


 これに気づいた田中は浮かれた――魔法武器というのはある種のロマンだ。魔法とは、魔法使いというジョブだけが使える超常現象。サブカルチャーでも魔法使いが主人公が多いことからも、一度だけでも魔法を使ってみたいと夢見る者は多い。そういう者達に売ればお金には困らないだろうし、人生安泰なのは確定したようなものだ。それに一度はやってみたいこともあったので、それを実現してみたいとも思っていた。

 

 だが、ふと気づく。

 魔剣を作れるのは自分だけ……

 (――これはもしかして、自分の身が危ないのでは?)ということに。


 装備チートが出来るとはいえ、中身はただのD級冒険者に過ぎない。脅されて奪われたりしてしまうかもしれないし、より強い魔法武器を作るためには、貴重な素材を集める必要があったが、それにも限界があった。



 ――つまり、必要だったのだ。自分より強い仲間が。



 それから田中は仲間を探し続け、半年後条件を満たした、とある少女と出会った。

 少女――逢海おうみ 灰華はいか


 強い仲間と共にダンジョンに潜り続け、試行錯誤を繰り返し――完成ともいえる強力な魔剣を生み出すことに成功。今でもよく合成に失敗してすぐに壊れてしまう物が出来るが、成功する確率は最初よりも遥かに高くなっている。


  

 そうして準備が整い、やりたかったことが実現できるようになった。

 田中の夢、それは――


 強力な魔剣を有力な冒険者達に売り込みたい――


 ――わけではない。


 ならば、作った魔剣を使って最強を目指す――


 ――というわけでもない。


 田中のやってみたいこと――――それは自分がガチャの運営側にまわることだった。


 田中はロクデナシである。

 ――ガチャの次に好きなものは、他人のガチャの爆死報告というどうしようもないロクデナシだった。

 

――――――――――――――


 この魔法武器ガチャを回させるには、まず宣伝する必要があった。なにせ魔法武器は今まで誰も作った者がいないのだ。偽物はよく出回っているので、本物だと証明する必要がある。


 どうするか悩んでいた田中だったが、少し前にあった一つの出会いで解決する方法を思いついていた。


 ある日、モンスターに襲われていた人を助けたら、その人が人気配信者だったのだ。

 その際、お礼をしたいと言ってきたので、田中は宣伝代わりに店のパンフレットを渡していた。


 そして現在、ネットでは田中達で持ちきりだった。モンスターの群れを瞬殺する美少女とお礼の代わりに怪しいパンフレットを渡してくる男。インパクトがありすぎである。


 宣伝計画として思いついたのは、自分達もダンジョン配信をすることだった。

 今であれば、田中達が配信したら見る人はそれなりにいるだろう。田中は、灰華にガチャの商品である魔剣を使って、強いモンスターを蹂躙させることで魔法武器の製造が出来たことの証明になると考えたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る