学園1絶対的アイドルの幼馴染みが、アイドルオタクの俺の部屋で突然寝てたんだけど。今、告られた気がするのは気のせいですか。

空豆 空(そらまめくう)

第1話 俺の学園にはアイドル並みに一番人気の女子がいる。

 ――俺の通うここ、天音あまね学園高等学校には、学園一の人気を誇る女子がいる。その子の名前は 時枝 杏花ときえだ きょうか


 なぜ一番人気だと言い切れるかと言うと……


「みなさんこんにちは!! 学園祭、楽しんでますかー!? 今日はたくさん集まってくれてありがとう!! 私たちのパフォーマンス、ぜひ最後まで楽しんでいってくださいねっ!!」


 杏花は、現在世間で絶大な人気を誇る国民的アイドルグループ 「IアイDOLLドール」の絶対的センターである瀬戸 紫苑せと しおんにそっくりな上、その「I☆DOLL」のコピーダンスを中心に活動している、我が学園ダンス部の精鋭たちで構成されたアイドルユニット 「YOUユゥDoドゥ knowノゥ」の絶対的エース。


 さらに、歌唱力、ダンス、MC力も群を抜いていて、見るものを惹きつけてやまない圧倒的パフォーマンス力を誇っている。


『遠くのアイドルより、近くのアイドル』そう言わんばかりに、この学園では本家の紫苑より人気があると言っても過言ではない。それくらい男子からはもちろん、女子からも大人気なのだ。


 今日の学園祭の大トリももちろんYOU☆Do know。そして――


「ちょっと、大翔ひろと君!? ちゃんと脚立支えててね!? 今日もばっちり杏花のライブ写真、可愛くカメラに収めるんだから!!」


「はいはい、わかってるって……」


 そんな杏花の写真を脚立に乗って撮ろうとしているのが、杏花の親友でもある高見たかみ 理恵りえ。高見は新聞部と写真部を兼任していて、学園内で起こるイベントや部活動の写真を撮りまくり、記事にし、人気の学生の写真をプリントしては販売している。


 とは言っても、その収益は写真部と各部活に配当され、撮影される側の許可もちゃんと取ってあるのだが。


 そんな写真の中でも杏花の写真は、学園内の誰よりもダントツに売れている。まさにそれが、杏花が学園一の人気者という動かぬ証拠なのだ。


 そして今、脚立を支えるという地味な雑用をしている俺は、写真部でも新聞部でもなく、細々と活動をしている地味な将棋部部長、水沢 大翔みずさわ ひろと


(やっぱり杏花、可愛いよなあ……)


 実は杏花と俺は幼馴染みなのだが……今となっては杏花は高嶺の花。すっかり疎遠になってしまい、いつも高見に頼まれる雑用の傍ら、こっそりと杏花のパフォーマンスに見入るだけのただのモブと化している。



「きゃー!! 杏花ちゃん可愛いー!!」


「きょ・う・か! きょ・う・か!」


 パフォーマンスもいよいよクライマックス。黄色い声援が飛び交う中。


 ――バチッ!!


 俺と杏花の目が完全に合った気がした。その瞬間。


 杏花は曲に合わせて、オレを撃ち抜く仕草と共にウインクをした。


「きゃ――――――!!!!!!」


 一気に最高潮に達する歓声。けれど。


(……今、杏花が指差ししてウインクした相手って……俺!?)


 バクバクと心臓が高鳴り出して俺は気が気じゃない。

 

 俺は子供の頃からずっと杏花のことが好きなのだ。


 しかしすぐに冷静さを取り戻すのはいつものこと。


「よし、杏花ナイス!! 今ばっちり良い写真撮れたわよぉおお!!」


 今日もカメラを構えながら高見はをしている。


(ああ、そうだった。杏花のウインクは、俺にじゃなくカメラに向かってしているもの)


 杏花と目が合ってドキッとするのも、その後カメラに向かってだと気付いてがっかりするのも、もはや毎度のこととなっている。

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