(電撃文庫51位)【スキル使用可】リアル脱出ゲーム

すぱとーどすぱどぅ

プロローグ

第1話 ゲームの概要を説明させていただきます。

「それでは、ゲームの概要を説明させていただきます」


 その声で、その場にいた人々が目を覚まし、声のする方に意識を向ける。


佐伯博人さえきひろともその1人だ。


数人の連中がそそくさとその場を後にするのを横目に見ながら、博人は説明の続きを待った。


「これからみなさまには、30日間の船旅の後、得た【スキル】を駆使し、無人島にてサバイバルを行っていただきます」


 スーツの男から衝撃的な説明がされたというのに、誰一人として声をあげなかった。


――おかしい。

 不審に思った博人も小さく声を出すべく口を開いた。


「……」


――声が出ないな。

 のどが震える感覚はあるのに、音にならない不思議な感覚。周りを見ると多くの人が驚きの表情を浮かべていた。


「今、多くの方々が実感した声が出ない現象、これも【スキル】の一つです」


 スーツの男の淡々とした声が続く。


「このような【スキル】を船内にて集め、サバイバルを勝ち抜くことがゲームの概要となります。ゲームは明日の12時からです。解散」


 淡々とした声が終わった瞬間、一気に音の波が押し寄せてきた。


「意味がわかんねえよ!」


「ここはどこなの!だれかたすけてええええ」


「ママああああああ」

 


 会場中がパニック状態だ。


――こんな簡単な説明じゃ、何をするかもわからないな

 博人は音のない溜息をついた。

 



 そして、パニックに巻き込まれないように、その場を後にした。




 さて、今現在この戦場にいるプレイヤー(人々)は二つに分かれている。


 一つは今初めてゲームの概要を聞かされたプレイヤー。

 そしてもう一つは、事前にゲームの概要を聞いているプレイヤー。


 みなさんのご想像の通り、パニックになっている人々は前者。

 会場をすぐに出ていった人は後者となる。


 さて博人はどちらなのか。



 それは、船に乗せられる前にさかのぼる。



 ※ご覧いただきありがとうございます。

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