黒い美学

千葉の古猫

序章

第1話 プロローグ

'''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''' ●始めに ''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''


 この作品は、2002年にプレステ2にて発売された、日本初のオンラインRPG「ファイナルファンタジー11」に刺激されて、2002年か2003年に、私が初めて書いた小説で、近未来SFものです。


 その前作FF10については派生作品も含めて2作ともプレイして次回作も期待してましたが、FF11はオンラインによる不特定多数の人が参加する方式に変更されて、ひどくがっかりしました。

 見知らぬ人とゲームを一緒にプレイすること自体怖かったし、仮に参加した場合、自分の都合の良い時間にやめられるのかというプレッシャーもあってプレイしませんでしたが、代わりに小説を書いてみようかと思い立ちましたw


 そんな訳でMMORPGについては、当時のゲーム雑誌の紹介記事を元に、ほとんど想像で書いてますので、詳しい方にはもの足りない、あるいは違和感を覚える箇所があると思いますが、そこをご承知いただいた上で、お読みいただければ幸いです。


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「黒い美学」

     星野一ほしのはじめ 改め 千葉の古猫ふるねこ



'''''''''''''''''''''''''''''''' 序章 '''''''''''''''''''''''''''''''''''


第1話 プロローグ


 二〇二〇年…… この年、遂にサルの大脳を利用したスーパーバイオコンピュータが実用化された。

 この完成にはいくつかの偶然が重なった。


 一匹の天才ボノボの出現、大脳組織活性保存技術の飛躍的発展、バイオコンピュータ研究が米国新防衛計画に織り込まれ大予算化がタイミングよく実現したことなどがそれである。


 実用化初期段階における必要不可欠な関連技術もその前に完成していた。

 チンパンジーの幼児から取り出した大脳と組み合わせる為の「人工臓器」と「人工四肢じんこうしし」である。


 「神経系統の接続技術」と、「大脳のアナデジ混合信号を、アナログ信号とデジタル信号に分離変換する技術」については、無論のこと見逃してはならない。

 何故ならそれこそが、バイオコンピュータの根幹技術の一つなのだから。

 この有機的結合により大脳の指令で四肢ししが動き、脳幹で臓器の情報をフィードバックさせ、生命を自ら維持するのだ。


 消化器系の仕組みを簡略化する為に、栄養の摂取は自然食物からではなく、高機能栄養液のパックを利用する。

 このパックを自らの四肢を操り、人工の口腔こうこうに取り込み、人工臓器で分解し、動力エネルギーを作り出し、また、大脳組織維持に必要不可欠の物質を合成し吸収する。

 そして、毒素老廃物の濾過循環を行った上で、不要物質は人工肛門から排泄する。


 バイオコンピュータ実用化初期段階の考え方では、生体組織活動をできるだけ忠実に模すると云う立場を取っていたので、これらは全て、短期間で大脳組織を成長させる為に必要な仕組みだったのである。

 このシステムで唯一のネックが人工ではない大脳だったが、サルの大脳組織活性保存技術が飛躍的に進み、長期間安定を保つことが可能になったのだ。

 この頃から大脳促成教育プログラムも完成に近づいて来た。



 さて、その十年ほど前に世界を騒がせた、人語を理解する類人猿ボノボ、トミーについては、多くの人がまだ記憶していることだろう。

 その後の研究は秘密裏に進められていたが、トミーは学力を上げ続け、小学生高学年の知能レベルにまで達していた。


 サルの大脳を利用したバイオコンピュータの研究は、前述のように相当程度進んでいたが、インターフェイスを音声人語とするに当たって、曖昧あいまいな命令を理解し高速で実行すると云う命題に対しては、サル脳では明らかにポテンシャルが不足していた。

 一説には、極秘で死刑囚の人脳を使った実験が行われ、その成功例があるとも言われている。

 しかし人脳利用は明らかに違法であり、公表された実験記録などは一切ある筈が無かった。


 トミーの加齢が進み、遂に重体に陥ると、かねての計画に従って、トミーは極秘施設に移送され、生きたまま解剖に付されることになった。

 そしてこの時を待ち続けていた、スーパーバイオコンピュータのプロジェクトチームが、トミー大脳をシステムに組み込む為、極秘施設に召集された。

 このチームには人脳移植実験を推進したと噂される、某国の天才科学者と天才脳外科医も加わっていた。

 トミーの大脳は、天才脳外科医の手により完璧な状態で取り出された。

 その大脳組織は細心の注意を払って、大脳組織活性保存技術により新開発された、高機能生理食塩水に保存され、栄養を与えられ続け、活動水準を高度に保持したまま次の移植先を待った。

 そしていよいよ、トミーの為に用意されたコンピュータ群が、アナデジ変換回路とそのセンターを介して接続される。

 脳神経とセンターユニットの接続は、ゴッドハンドと呼ばれる医師の手で完璧に行われた。

 初のスーパーバイオコンピュータの誕生である。


 また、トミーの身体からはDNAと、再生に適した細胞が大量に採取され、その細胞培養によって大量のトミーがコピーされ、その大脳を取り出す目的だけの為に成育された。

 そうしたDNAクローン培養などの再生技術は既に確立していたのだ。


 スーパーバイオコンピュータは、アメリカのスペースウォーズ防衛計画に配備された。

 これも一説にはトミーではなく、人脳を利用した「ウルトラスーパータイプ」と言われているが、その真偽は定かではない。

 明らかな事は、それまで不可能とされていたスペースウォーズ防衛計画がスーパーバイコンによって現実として機能し始めたことである。



 二〇三〇年が明けた頃……

 日本では古く二〇〇〇年十一月に成立した、クローン人間を生み出すことを禁止する「ヒトクローン技術規制法」の再改定問題が、前々年より審議されて来た。


 同様の規制法を持つ英国、フランス、ドイツなどで、ヒト遺伝子を組み込んだサル脳の改造などには、この規正法を当面適用しないことが決まると、国際競争力の低下を恐れた関係各方面から様々な圧力がかかり、審議会は無期限見送りを政府に答申した。

 そして、それを受けた政府は英仏独と同様の措置を取る。

 アメリカが突出して研究開発が進んでいる現状を憂慮ゆうりょした学会、産業界、その支持を受けた国会議員などが世論をリードして、少数派の倫理的な意見はかき消されて行ったのだ。



 アメリカのスペースウォーズ防衛計画で、スーパーバイオコンピュータの分野において、日本の技術協力が果たした役割はかなり大きなものがあった。

 日本のチームが「ウルトラスーパータイプ」の実用化に当たって、中心的役割を担っていたという話は、あながち信憑性しんぴょうせいの低いものではなかったのだ。

 関連性は不明だが日本はアメリカから、相当量単位のトミー細胞を早期段階で優先的に譲渡され、それを元に着々と研究を進めていた。

 その成果として、「ヒトクローン技術規制法」の再改定問題が決着するのを待っていたかの様に、日本でもトミー細胞を増殖培養して、トミー大脳のクローンが大量生産されるようになる。

 ヒト遺伝子を組み込んだ「改造型ウルトラスーパータイプ」が実用化されたのも、同年の二〇三〇年である。



 ビジネス用途を皮切りに、翌二〇三一年、いよいよ家庭型「パーソナルトミー」が新発売された。

 既に家庭に普及していた高性能パソコンと比べて、サイズも価格も大だったが「パーソナルトミー」は、その圧倒的計算能力と、使い易いインターフェイス及びエンタテインメント拡張性能が支持されて、発売後僅か二年間で先進主要国の各家庭に一台の割合で普及するようになった。

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