第23話 タフィリア・アルメスト① ~アルメスト帝国第三皇子、次期ダイド大公家当主~
「お帰りなさいませ、タフィリア殿下!
そしてようこそおいでくださいました、婚約者様!」
「おぉ、フィル!
久しぶりだね!」
婚約者を伴って数年ぶりに戻った帝城で、僕たちを迎えてくれたのは、父上の執事のフィルだった。
「おぉ…タフィリア殿下…ご立派になられて…婚約者様までお連れとは…私、感無量でございます…」
フィルが急に泣き出した。
「お、おいおい、フィル…」
ルイーザは横で少し呆れたように苦笑している。
「…お嬢様、お名前をお伺いしても?」
横にいた侍女長がルイーザににこやかに声をかける。
「あ、ルイ―ザ・レゼド…王国の侯爵家の娘でございます」
「まぁ、王国のご出身!
王国女性を婚約者にするとは…さすがタフィリア殿下ね!」
侍女長は嬉しそうにルイーザの手を握った。
「侍女長のお祖母様は王国の出身なんだ。
彼女は王国贔屓だから、頼るといいよ」
ルイーザを安心させるよう僕が耳打ちすると、ルイーザは安心したように「それはよかったわ」とつぶやいた。
「こちらがルイーザ様のお部屋です!
こちらにマチルダさん用の控室もありますよ!」
侍女長が新しくルイーザの部屋となった皇子妃の部屋にルイーザを案内する。
そこは侍女の控室もある、最高級の部屋である。
ルイーザはその部屋に驚いたようにキョロキョロとあたりを見回す。
「…さ、ルイーザ。
部屋に感心するのもいいけど、まずは家族に紹介しなければいけないから行こう」
ルイーザとマチルダが荷物を置き、息つく間もなく僕がそう告げた。
「…ええ」
少し緊張した面持ちで、ルイーザが決心したようにうなずいた。
「タフィリア殿下。
国王様は少し庶務がありますので、まずは皇太子ご夫妻からご挨拶されてはいかがです?」
案内役のフィルがそう提案してくれた。
「母上があんなに僕の婚約者を楽しみにしてたのに…まぁ仕方ないか。
よし、兄上のところに行こう、ルイーザ」
「は、はい…」
「タフィリア!!!」
その時、タフィリアを呼ぶ女性の声がした。
「本当に帰ってたのね!
久しぶり!」
「マリーじゃないか!
久しぶりだな!」
マリー・ウッドフィールド。
僕の
ルイーザは少し不安そうな顔をしている。
皇子と”幼馴染の令嬢”と言えば、婚約を妬むと思っても仕方ない。
ではその不安を解消してあげようかな。
「マリー紹介するよ、彼女が僕の婚約者のルイーザ嬢だ。
ルイーザ、彼女は僕の幼馴染で、ルイージ兄上の婚約者・マリー・ファルセット嬢だ」
「ごきげんよう、ルイーザ嬢!
ルイージ皇子の婚約者のマリー・ファルセットでございます」
マリーはにこやかにルイーザに挨拶をした。
「…あ、ああ、ええ、宜しくお願いいたします、ルイーザ・レゼド、王国の侯爵家の娘でございます」
一瞬何を言われたのか分からなかったのか、呆然としていたがすぐに気づいて、ルイーザも頭を下げた。
「マリーはね、僕とルイージ兄上の幼馴染の令嬢なんだ。
周りはルイージ兄上か僕、どっちかと婚約させたかったらしいし、彼女が兄上を選んだから兄上の婚約者になったのさ」
「…そう、だったの…」
小さく「よかった」とつぶやいたのは聞こえないふりをしておこう。
「ルイージが護衛してきたのよね!
せっかく騎士になったのだから、こういう時役に立つわ!」
「…」
マリーは昔から相手が皇子だろうと臆することなく意見を言う女性であり、帝国ではそういう女性は俺様男に嫁がせて性根を叩き直したり、逆におとなしい男性を後押しするような縁を結ばせたりと、実に大切にされている。
特にマリーは侯爵令嬢でありながら一歩引くなんてことは一切考えない強気の女性だったから、皇子の婚約者にぜひ、となり、騎士として強いものの、いまいち優柔不断なルイージ兄上とは良縁であると僕は思っている。
「…ははは、さ、ルイーザ、マリー…ポーレア兄上のところに行こう」
その名前に、ルイーザがふっと緊張したのがわかった。
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