第36話 私のしたいこと

いや、私が欲しかったのはツルハシだし。確かにお母さんからはかわいい髪留めもらったけど、ちゃんとお父さんからツルハシもらったし。私でも持てるような小さめのやつ。お母さんは呆れてたけど、またそれもいい思い出……思い出? 


そして次の日、窓から差し入る陽の光で目が覚めた。そしてお父さんとお母さんから昨日もらったお洋服に身を包む。


「お父さん、お母さんおはよう! 」


「おはよう」


「おはよう、リター。あら、早速おめかししちゃって。お母さんが、髪の毛やってあげるからこっちにいらっしゃい」


お母さんが手招きする。


「うん!」


「今日、お天気だしお出かけでもしましょうか。」


「お出かけ? 」


リターは首を傾げる。


「そうよ。せっかくおめかしするんだからお出かけしなきゃ損じゃない? 」


「うん! お出かけする」


「それにしてもリターはかわいいのが好きなんだな」


「うん、お父さん。女の子は可愛くないとね! 」


あれ? 私そんなこと言うっけ?


「当たり前よね? リター」


確かに大事だと思うけど。


「うん、大きくなったら白馬の王子様と結婚するの」


ちょ、ちょっと待って私。絶対そんなこと言わないし。私がしたいことはファームだし。


「あらあら。それならもっと可愛くならないとね」


「うん、頑張る」


んー、何この会話。この子、私のはずだけど私じゃない。誰? まるで三人称で私をみてるかのような。それに一つ訂正しなきゃいけないことがある。


「違う」


「あら? どうしたの急に。他の髪型の方がよかったかしら? 」


「違う、私のしたいことは」


「白馬の王子様だろ? それはさっき」


「違う‼︎ 私のしたいことは」


大きく息を飲み込む。そして出せる最大の声で


「私はファームがしたいんだあぁぁぁぁぁ‼︎ 」



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