第34話 センだのちひろだの

 別に助けを求めたところで、来てくれるのは魔物くらいなんだけど。その魔物をスプラッシュしつつしばらくするとシエラが立ち止まった。


「着いたよ」


意外と近いんだね。もっと森の奥まで入るのかと思っていた。ますますCランクの理由が分からなくなるんだけど。


「何でCランクなのって聞きたそうな顔をしてるね」


「そりゃ、まぁ」


顔に出てたみたい。


「別にもう隠すことでもないし、いいかな。何でCランクなのかっていうと、この辺りで行方不明が多発したんだよ。一年くらい前の話だけど。」


「行方不明? 」


「そう」


冒険者なんていつ死ぬかわからないんだから行方不明くらいで騒ぐとは思えないんだけど。うんと頷いたシエラはいつの間にか摘んできた薬草を片手に、歩きながら話し出した。


「もちろん始めはみんなよくあることだと思って気にしてなかったよ。元々Dランクのクエストだったからゴブリンかなんかに襲われたんじゃないかって。でも帰ってこない冒険者があまりにも多いもんだからギルドは一回、CやBランクの冒険者に調査に行かせたんだ。結果は成果なし。弱い魔物はいるけど行方不明が多発するような魔物はいなかったんだ。初心者が踏み込まないような場所まで調べたらしいんだけどね。それでDランクのままになったんだけど、やっぱり行方不明者が絶えなかった。それでこれ以上被害を出さないためにもCランクに上げたってわけだね。不思議なことにそれ以来行方不明者はほとんど出ていないんだ。そのうち誰かが言ったんだ。あれは神隠しだって。その噂が広がって、みんな怖がっちゃって今このクエストがずっと残ってるってわけ。黙ってたのは君が怖気付いて逃げないようにするためだよ。ごめんね。」


絶対ごめんって思ってないだろこの人。でもまあ理由はわかった。日本よりこの世界の方が宗教色も強いだろうからそういうのを本気にしやすいのかもしれないし。


「よきかな」


「ん、何か言った? 」


「何でもないよ」


この世界にこのネタが通じる人はいないんだろうなぁ。

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