第29話 まるでデカ◯チャン

 軽く3回ノックしてドアを開ける。前よりすんなり開いた気がする。


「おう、嬢ちゃん。例のもんは出来上がってるぞ。ほれ」


指さされた方に目線を向けるとそこには確かにハンマーがあった。あったんだけど、


「でっか」


思わず口に出してしまった。


「こんなでかいんですか?」


「おう。嬢ちゃんだったら上手く扱えると思ってな」


さすがに買い被りすぎでは? プロが言うなら間違いはなさそうだけど。ほんとに持てるんかな?


「疑うならちょっと持ってみい」


「分かりました」


言われたまま、半信半疑で持ち上げてみる。


「「おお」」


2人の声が重なった。一つは思ったより軽かったことに対して。もう一つはほんまに持ち上げやがったことに対して。


見た目にそぐわず思ったよりすんなり持てた。体感は木製の野球バットよりちょっと軽いくらい。これなら振り回しやすそう。ジュラルミンだっけ? 軽くて頑丈な合金。そんな感じの技術なのかな?


「どうだ? 」


「思ったより重くなくていい感じです」


「そ、そうか。ならよかった」


「はい! ありがとうございます!」


「どういたしまして。それで一つ忠告なんだがいいか?」


「なんですか?」


「じ、実はな。そのハンマー、防犯用に重力魔法がかけられていて、嬢ちゃん以外は基本持てないようになっている。だから店とかには持ち込まない方がいいな。もし床に置きでもしたら床が抜けてまうかもしれんしな。あと思ったより殴った衝撃も強いはずだから持ち歩く時は注意を」


「分かりました!」


へー魔法ってすごいな。そんな器用に使えるんだ。でもそんなに手を込んでたらきっと値段も跳ね上がるんだろうな。ん? 値段……あ、やっば。


「すいません」


「どうした急にかしこまって」


「いや、あの、代金のことなんですけど……今持ち合わせがなくて……一ヶ月後には返しますからそれまで待ってもらえませんか? お願いします!」


そう言って頭を下げた。でもおっちゃんの反応は思ってたものとは違った。


「はっはっは。いいよいいよ、代金は。ニーアには借りがあるからな」


「でも……」


「なら、ちょくちょく武器の点検ついでに鉱石を持って来てくれると助かる」


「分かりました! 任せておいてください!」


「そいつは頼もしいや」


それから少しだけお喋りしてから、店を出た。これでやっっっっっとファームができる‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る