第17話 裏口から出るのってなんだかワクワクするよね

 「リターちゃん、リターちゃん」


背中を揺さぶられる感覚で目を覚ます。おはよう世界! そしておやすみ!


「リターちゃん、今起きたわよね? 」


いけないいけない。どうやら眠ってしまっていたみたい。時計を見ると一時間くらい経っていた。口についた涎を半ば無意識で拭おうとすると、


「はしたないでしょ」


と、お姉さんがハンカチを貸してくれた。なんて優しいんでしょうか。お礼を言って口元を拭わせてもらう。ほんのりいい香りがした。このハンカチ返した方がいいのかな? 普通だったら洗ってから返すのが礼儀ではあるんだけど……私、家ないんだよね。


「家に着いたら洗濯物として出してくれたらいいわ」


迷っていると、そう声をかけてくれた。やっぱりこの人エスパーなんじゃ……


「それじゃあ帰るわよ。ついてきて」


そう言ってギルドの正門とは逆向きに進んで行くお姉さんについて行った。あれ? 正門から出ないんだ。なんて私が不思議そうな顔をしていると、


「裏口から出るのよ。正門は閉まっているから」


そう教えてくれた。確かに受付時間は過ぎてるしそういうもんなんだろうけど、チラッと見えた正門の鍵がやけに厳重そうに見えたのは気のせいなのかな? そんなことより、裏口から出るのってちょっとワクワクする! 特別感を感じるよね!


「そういえば、結構職員さん残ってるんですね」


話すことがなかったので、ふと思ったことを口に出す。


「そうね。残業よ」


この世界にも残業の概念があることを知って顔が引きつる。世知辛いなぁ。意味はあまりよくわかっていないけど、ふとそんな言葉が頭をよぎった。

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