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設立に至る経緯

第1話 大魔王の引退

魔界、それは別次元の異世界を人間たちが勝手にそう呼び表した名称である。当然そこは地底ではないし、そこに住む住民たちは悪魔ではない。その世界に住む者たちは人間たちが「神」と呼ぶ存在と本質的に同じ水準の生物である。

但し彼らは総じて陽気で悪戯を好む。例えば愚かな人間たちが恐怖の代名詞として使う「悪魔」という蔑称を敢えて自ら名乗る事もあるし、親愛を表すほんの些細な悪戯として人間をからかう事もある。その結果として百万人もの人間が死ぬ事があるのはあくまで結果であり悪意がある訳ではないのだ。

そして彼ら全てが混沌性を持つ訳ではない。発生当初から秩序性を持ち、その性質に従って秩序を確立させようと考える者も居る。

そうした者達の中に後に大魔王オルブレルと呼ばれる存在も居た。オルブレルは人間が考えあぐねている社会体制に興味を持ち、それを自己流にアレンジして実践してみることにした。そして彼は彼らの世界の1/3程を自らの支配下に置いた。

オルブレルはその領土内で平和で公正な千年王国を築くと約束しそれを実現した。彼の王国は本当に千年の平和が保たれたのである。なお平和と公正という言葉の解釈については別の機会に譲ろうと思う。

そうして多くの同族たちと交わした約束を守ったオルブレルは、当然その約束に基づいて大魔王を引退した。いやこれは正しい表現ではない。彼はその生涯で大魔王と称した事は一度もなく、執政と称していた。そして引退後はピーター・シールドという名を名乗った。名前の由来は不明である。

そしてピーター・シールド氏は、千年もの長きに渡って階層社会の頂点に君臨していた事に飽き飽きしており、かと言って完全独居となるのはいろいろ不便だと考え、それを都合よく解消する手段を思いついたのであった。