第89話22才の処女 3
突然の小林の告白に
立花は言葉を失った。
『立花さんが違う世界を
見せてくれたんですよ?』
引っ込み思案で、
人に話し掛ける事が
苦手だった小林は
自分でも
信じられないくらいに
自然と自分の気持ちを
喋り出している。
『さっき会社の前で
ナンパしてきた男の人に
向かって行ってくれた姿』
『今まで、読んだ
どの小説の主人公よりも
かっこよかったです』
『会社で誰も
助けてくれなかった時も
イメチェンした後の私でも』
『全く態度が変わっていない』
『信頼出来る人間って
現実の世界でもいるんだな』
『私、人を好きになった事が
なかったから』
『分からなかったんです』
『でも、さっきマスクと
メガネを再び着けるように
言われた時に泣いたのは』
『1番キレイな私を
見て貰えなくなると
思ったからです』
『それに気付いた時
私、立花さんが好きだって
わかりました』
小林は自分の正直な
気持ちを立花に全て話した。
立花は驚いて動けない。
会社の後輩の
世話をしていただけ
小林を恋愛対象と
見ていなかった。
それに自分には
恋人である女神がいる。
『小林、あのさ...』
立花が、そう言い掛けた時に
『いいですよ、返事とかは』
『これは私が感情を吐露した
だけですから』と
小林が真っ赤な顔をして
制止していた。
その時
立花と小林が座っている
テ-ブルの横に
大学生と思われる2人組が
立っている。
そして、こちらの雰囲気など
お構いなく
『良かったらLINEを交換して
くれませんか?』と
声を掛けてきたのである。
またかよ?
そう思った立花が、
追い払おうとした時に
『邪魔だから
アッチ行ってよ!』と
小林が店内中に響くような
大きな声で怒鳴ると
声を掛けた2人組は
店内の視線を一点に浴び
恥ずかしさから
逃げて行った。
『ヤダ、どうしよう?』
大きな声を出した張本人の
小林はアタフタしている。
『すごいな、ナンパ男を
撃退したじゃないか』
立花がそう言って
小林を褒め称えるが
当人は困惑している。
『さっきみたいに
ナンパされたら拒否する』
『もう出来ているじゃないか?』
そう立花が解説しているが
小林は自分でも
大声を出したのが
信じられなかった。
『わたし、あんなに
強く言っちゃった』
そう自分で呟きながら
半信半疑でいる。
『良かったな』
『また一つ、成功体験が
増えたんだよ』
そう立花に言われた時に
前日に言われた
『1cmの成長で自分は
良いんだ』と言う事を思い出し
嬉しくなっている。
『今、断った男は名刺を
配った男と一緒だったか?』
立花が小林に確認するが
『全然、覚えていません』
『最初に声をかけてきた人も
そうなのかも分かりません』と
答えてくる。
時間はもうすぐ20時
『やっぱり、今日は自宅に
戻らないようにするか?』
立花が、そう質問すると
『出来れば、
そうしたいです』と
彼女が答えた。
なら今晩泊まる
ビジネスホテルを
探さないと、いけない。
ファミレスなら
安心出来ると思っていたが
ここも安心出来ない。
小林を促して
立花が店を出た。
2人の勤務している会社の
最寄り駅から3駅先に
有名なホテルチェ-ンがある。
電車内でも小林に視線が
集中しているが
彼女は、むしろ
それを楽しんでいるようだ。
横にいる立花の方が
オドオドしている。
立花と並んでも遜色ない
身長の小林は何も言わず
立花を見つめ微笑んでいた。
『緊張するから、見るなよ』
クチを尖らせて
立花が言うが
『そんなの私の自由じゃ
ないですか?』と
彼女は笑って取り合わない。
やがて駅に到着した彼女は
『着替えとか無いから
ドンキ.ホ-テに寄って
良いですか?』と
立花にお伺いを立てている。
『そうだな、
必要だよな』と言って
立花も入店もすると
『立花さんも着替えを買って
一緒に泊まりませんか?』と
小林が悪い笑顔を浮かべて
聞いてきた。
『バカ言ってんな』
立花は、そう答えたが
一緒、小林が裸体を
くねらせて悶える姿を
想像してしまった。
すると小林は
『ちょっと下着を
見てきます』と言って
買い物カゴを持って
女性下着売り場方面に
消えていく。
下着売り場から離れて
立花はオモチャ売り場を
見ている。
いくつになっても
オモチャ売り場は楽しい
ATMそっくりの貯金箱や
ゴムで出来たニワトリが
奇声を発する人形
時間が経つのを忘れて
見ていると
小林が選び終わったようで
カゴを持ってレジへと
向かおうとしている。
『いかん、置いていかれる』
そう思った立花は
小林に追いつき
何気なくカゴを
見てしまった。
本当に悪気などなく
買い物は終わったのかな?
程度だ。
チラッと見た
買い物カゴの中には
レ-スが派手に
装飾されている
黒や白の下着が
目に入ってしまった。
いかん、いかん見ちゃダメだ。
そう視線をズラした
その瞬間
ある物が目に入った。
避妊用のゴム?
再度、確認しようと
した時には
角度が変わっていて
断定は出来なかったが
彼女はレジで会計を
済ませるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます