第63話子供が欲しい

一日の疲れを洗い流すように

シャワーを浴びる立花は


ここに来て女神の

メッセージが入っているか?

心配になってきた。


朝からバタバタして

急遽、群馬県に

緊急出張をして


帰ろうとしたら

台風で電車が止まり


宿泊しようと宿を探すが

空きは無くやっと見つけた

ボロいホテル


食事などなくコンビニで

おにぎりを買って、

やっとホテルでシャワーを

浴びれている。


女神の事を考える余裕が

全く無かった。


シャワーが終わったら

おにぎりを食べながら

スマホをチェックしよう


そう考えていた時に

『ガチャ』と

浴室のドアが開いた。


『失礼します』

そう言って藤波係長が

バスタオル一枚で

風呂に入ろうとしてくる。


頭を洗っていた立花は一瞬

何が起きたか理解出来ずに

お湯を浴びたまま

固まってしまった。


『デカい』


恥ずかしそうに

入ってきた藤波係長だが

立花の立花が

視界に入ってきて

釘付けで見つめている。


その視線に気づいた立花が

慌て前を隠しながら


『係長、何ですか?』と

大声を出した事で


藤波係長も

『いや、先にシャワーに

入ると言ってたから

私も準備をして』と言うと


立花の頭に

疑問符が浮かぶ。


浴室で見つめ合う事3秒


立花が理解して

『先にシャワーを浴びるって

そういう意味じゃないです』


『恋人同士じゃ

ないんですから

そんな失礼な事を言う訳

ないじゃないですか?』と

立花が説明した事で


藤波係長は

自分のフライングが

恥ずかしくなり

真っ赤な顔をして


『申し訳ないです』と

部屋へと走って行った。


『係長って、もっと

冷静だと思っていた』


そんな独り言を言いながら

立花はシャワーを再開する。


立花が服を着て部屋に

戻るとス-ツ姿に

戻っている藤波係長が


『本当に申し訳ない』と

謝ってきた。


『大丈夫ですよ』と

立花が笑顔で対応すると


藤波係長は

『じゃあ、私も

お風呂に入ってきます』と

浴室へと向かう。


1人になった立花は

スマホを取り出し


メッセージを確認すると

3件入っており


『あなたが好きです』と

女神から

短いLINEが入っていた。


次のメッセージも

女神からで

『あなたが好きです』の

1文だった。


最後の3通目は、

まさか違うよね?


そう思いながら

メッセージを開くと


『あなたが好きです』と

同じ言葉が書いてあった。


怒っているかもしれない

立花を刺激せずに


自分をアピールする方法を

寝不足の頭で

必死に考えて送った

女神の苦肉の策である。


時間軸を見て

立花は気づいた。


昨夜、女神からの

心配をするメッセージに

返信をしていないので


24時間近く

放置していた事になる。


『そりぁ、あなたが

好きですメ-ル

3連発になるよな』と

苦笑した顔になった。


立花が女神に

お詫びメ-ルをするが

少し脚色をしようと考えた。


恋人と

付き合っている時には


全て正直には話さない

優しい嘘もある。


『メッセージが遅くなって

すいませんでした』


『実は昨日は

体調が良くなくて

昨夜に貰った

メッセージの後に

返信しようとして

寝落ちしてました』


『朝も寝坊状態で

遅刻寸前で

会社に行って』


『返信が、こんなに

遅くなっています』


『日中もメッセージが

出来ない状態で

仕事の緊急対応で』


『実は今、群馬県にいます』


『自分の担当先から

機械が動かないと

連絡が入って』


『電車に乗って、群馬県まで

来て修理対応でした』


『修理が完了して、

帰ろうとしたら台風で

電車が止まってしまい』


『急遽、群馬県の

ビジネスホテルに

泊まっています』


『明日には

東京に帰る予定です』


『返信が遅くなってしまい

すいませんでした』


『俺もアナタが好きです』


そう書いて

グ-グルマップで自分が

群馬県にいる事を

スクショして

女神に送ったのである。


日曜日には蝶野と

一緒にいた事や


今は藤波係長といる事は

隠して

メッセージしているが


余計な事を伝えると

心配を招くと思い

内緒にしたのであった。


このメッセージを読んで

許してよ


立花は、そう考えている。


その時、立花が気づいた。


藤波係長、ゆっくり

風呂に入っているな


ゆっくりメッセージが、

打てたので

おそらく15分は

風呂にいるだろう。


『見に行く訳にもいかないし

おにぎりを食べていよう』

そう思って食事を始める。


その藤波係長は浴室で

シャワーを浴びて

大変な事になっていた。


『立花はシャワーの件は

勘違いのように

説明していたが』


『間違いなく

避妊具を買っていた』


『もしかして突然襲ってくる

そんな事も

あるかもしれない』


『よく洗っておかないと』

最初はそう考えていた。


洗っている間に頭の中に

浮かんでいた物


それは、さっき見てしまった

立花の立花だった。


『大きかったな』


藤波係長も当然、

男性経験はあるので


過去の彼氏のサイズは

覚えている。


あれが更に

大きくなるのか?


最近してないから入るか?


そんな事を考えて

下半身にシャワーを


当てていた時にスイッチが

入ってしまったのだ。


シャワーの圧力を強めて、

当てる場所を微妙にズラす。


目をつぶった頭の中には

立花の立花が

思い出されていて


時間が流れるのを忘れて

没頭してしまったのである。


そのまま5分が経過した。


しまった。


絶対に怪しまれる。


自宅でいつも

している、つもりで


トリップしてしまったが

出張中で立花が一緒だった。


藤波係長は急いで

風呂を出てブラウスと

タイトスカートを履き

部屋へと戻った。


おにぎりを食べ終えて

ビ-ルも飲んでいた立花が


『ずいぶん、

ゆっくりでしたね?』


『お風呂で

寝ちゃいましたか?』


そう立花に言われた

藤波係長は

『そうなんだよ、

疲れが出たみたいで

居眠りしちゃったみたいで』と


チャンスとばかりに

説明をする。


『すいません、

お先にご飯を食べて

ビ-ルも、飲んでいます』と

立花が言うが


『いいよ、気にしないで』

藤波係長は頬を、

赤くしたまま立花に伝えた。


立花は、それ以上何も聞かずに

スマホを操作をしている。


『彼女には今日、

帰れなくなった事を

報告したのか?』


藤波係長が素朴な

質問をすると


『たった今、

台風で帰れなくなったって

LINEをしました』と

サラッと答えてきた。


『私と一緒の部屋に

泊まっている事も

伝えたのか?』と

驚きながら質問すると


『そこまで詳しくは

伝えていません』と

笑顔で立花が返答する。


シャワーを使って

スイッチが入った藤波係長は

考えがエッチモ-ドだ。


言わないって事は

男女がホテルで同部屋を

意識しているって事だよな


藤波係長はそう考えて

『立花が思う浮気って、

ドコからだと思うんだ?』と


哲学的な質問をしてきた。


『浮気ですか?』

『難しいですよね?』と

言った後に考えこんだ。


『男性と女性で

考え方が違うし、男性でも

年齢や経験してきた

経験値で違う』


『頭の硬い人から見たら、

今の俺達みたいなのは

許さないって

言うかも知れませんし』


そう言って頭を

悩ませている立花に


藤波係長は

『だったら、違う質問です』


『頭の中で想像をして下さい』


『彼女以外の気になる女性と

2人きりで部屋にいました』


『立花は今、頭に

誰が浮かんだ?』


藤波係長に

そう聞かれた立花は


『言えませんよ、

そんな事』と言って

慌てている。


蝶野正子の日曜日の

ファッションが

頭に浮かんでいた

立花だったのだが


藤波係長は

自分をイメージしていると

勝手に思って喜んでいる。


『ある日、本命の彼女に

想像していた子と

2人っきりで会っている事が

バレてしまいました』


『あなたは

浮気していないよ、と

彼女に言いました』


『それは想像していた子とは、

ドコまでの

関係だったからですか?』と

藤波係長は質問を締め括った。


藤波係長が使ったのは

心理学の誘導回答である。


例え話をしていき

自分が知りたい本音を

相手答えさせる方法であった。


藤波係長に言われた立花は

蝶野正子の黒のニットを

脱がせて胸を揉んでいる

自分の姿までは

頭の中でイメージしている。


それを踏まえて

『最後の最後、入れてなければ

浮気じゃないって

言えるんじゃない

ですかね?』

そう立花が答えた。


今の心理学で

立花は重要な情報を

藤波係長に流していた。


それは彼女との

愛の深さである


付き合った彼女以外は

一切目に入らない人物は

浮気の定義に厳しい。


キスなんて、もってのほか

手をつなぐのも許せない。


自分自身の恋愛経験が

少ないタイプは相手にも

潔癖さを求めてしまう。


ある程度の年齢に

達していても


付き合い始めで

1番大好きな時期は


他の人が

眼中無くなっているので

浮気に対して厳しい。


だが、自分がある程度は

異性経験が豊富だったり


恋人との付き合いが

安定期に入った場合は


多少、別の異性にも

興味が出てきており

ガ-ドがゆるくなる。


立花は彼女はいるが

異性に興味ありで


ガ-ドがゆるく、

入れなければ


浮気じゃないと

考えるタイプだと


藤波係長に

教えてしまっていたのだ。


だが、そうだとすると何故

避妊具を購入してきたのだ?


一応建前上、

入れるつもりはありません

って事にしといて


でも流れで、

そうなった場合は避妊具を

使用するつもりなんだな。


そう勝手な解釈をする

藤波係長だった。


『浮気な線引きを聞くなんて

係長どうしたんですか?』


『さては俺が

彼女に怒られないか?


心配してくれて

いるんですか?』と

立花がビ-ルを飲みながら

聞いてきたので


藤波係長も

缶チューハイを飲みながら


『一緒にいるだけは浮気に

ならないんじゃ

ないのか?』と言った後に


『私はクチが硬いから

大丈夫だぞ』と

立花に説明する。


『それじゃ浮気をする

前提みたいじゃ

ないですか?』と

立花が答えると


『私は、いいよ』と

藤波係長が答えてきた。


またも頭に

『???』が浮かぶ立花に


『エッチを

したいんじゃないのか?』と

藤波係長が単刀直入に

言ってきたのである。


『はぁ?』


驚いた頭をする立花に

藤波係長も驚いている。


『違うの?』


お互いに不思議そうな

顔をしており


『どこからエッチをする話に

なったんですか?』と

立花が聞いてきたので


藤波係長が

『同部屋で泊まる事が決まって』

『その後で立花がコンビニで

避妊具を買っていたから』


『部屋に戻ってきたら

私相手に使うつもりじゃ

ないのか?』と

説明をしたのだ。


そこまで説明されて立花も

藤波係長の一連の行動が

理解出来た。


『係長すいません』


『避妊具は彼女が次に来た時に

使うつもりで買った物です』


『係長を相手に使うつもりで

買った訳じゃ

ありませんでした』


『誤解を招くような行動で

すいませんでした』と

立花が説明をした。


それを聞いた藤波係長は

『そうだったんだ』と


少し残念そうな

表情を浮かべて


残っていた缶チューハイを

一気に飲み干して、

ため息をつく。


期待していたのか?


立花は藤波係長の

落ち込んだ雰囲気を心配して


『係長、大丈夫ですか?』と

聞くと


『年上のおばちゃんじゃ、

立花もイヤだよな?』と言って


缶チューハイの2本目を開けて

グビグビと飲み始める。


どう接して良いのか

分からない立花は


『係長は、まだ30歳だから

おばちゃんじゃないですよ』と

フォローをしたが


『もう恋愛するのも疲れたし、

結婚するのも諦めているから

大丈夫なんだよ』と

クダを巻き出したのだ。


『係長ほどの美人なら、

すぐに恋人も出来ますよ』と

立花が、おべっかを言ったが


『私は5年も

彼氏がいません』と

地雷発言だった事が

分かってしまった。


何を言っても

地雷になってしまいそうと

考えた立花が黙っていると


『結婚は

出来なくても良いけど

子供は

産んでみたかったんだよ』と

藤波係長が

自分の思いを語り出した。


『女として生まれたからには

母親になってみたかった』


『でも5年も

恋人が居ないと、結婚は

諦めるしかないと思い始めた』


『だから今日、立花が私を

抱きたくなったと思って

嬉しかったんだ』と

心境を吐露してきた。


『すいません、ついさっき

彼女に愛していると

メッセージをした

ばっかりなんです』


立花には、

そのつもりが無い事を

告げると


『大丈夫だ、

1人は慣れているから』

そう言って

残りの缶チューハイを

飲み干し


立花に背中を見せる形で

ベッドに寝た。


何か声をかけた方が良いのか?


だが何を言っても

傷つけるだけだろう


そう思った立花は

ビ-ルを飲んだ。


酒を飲んで酔ったのか、

藤波係長は

寝息を立てて寝ている。


明日は朝早く、駅に向かって

東京に帰らないといけない


立花も係長に背中を向ける形で

寝る事にした。


その夜、立花は夢を見た。


寝ている立花に

藤波係長がキスをしてきた。


優しく唇に触れた後に、

立花の全身に

キスをしていった。


気がつくと

朝になっていった。


すでに藤波係長は起きており

『おはよう』と

立花に笑顔で挨拶をしてくる。


寝ぼけながらも

立花は昨夜の事を

思い出しながら


『おはようございます』と

藤波係長に挨拶をした。


『電車は運転再開

しているみたいだよ


早く準備して

駅に行こうか?』


藤波係長は、

いつものようになっている。


安心した立花は

『すいません、

すぐに準備します』

そう言ってトイレに行った。


『あれ?』


立花は違和感を感じて

自分の履いていた

パンツを見ると


パンツが表裏、

逆になっている。


風呂を出る時に、

急いでいたんだな


そう思って東京に帰る為の

準備を急ぐ立花であった。

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