第60話出張
『はい、OKです』
監督の声でCM撮影は
終了した。
休憩後、
撮影に復帰した女神は
さっきまでとは
別人のような表情で
撮影に望み
スタジオに居た全員が
引き込まれる笑顔を見せて
完璧な状態で
CM撮影を完了させた。
撮影していた監督は
『さっきとは
別人みたいだね?』
『今の彼女なら
売れているのも納得の
美少女だよ』と
隣に立っている濱口に
話しかけている。
その話を聞きながら
絵色女神を見て
微笑んでいた濱口は
休憩後に撮影を始めた
女神を見て心の中にある
願望を芽生えさせていた。
絵色女神を抱いてやる。
そんな事を微塵も見せずに
撮影した女神に近づき
『良い仕事、
ありがとうございました』と
あくまで広告代理店の
社員として
出演タレントに礼を言った。
無理矢理、
キスをされていたが
その後の彼の話に
納得してしまった女神も
『色々とご迷惑をお掛けして
すいませんでした』と
仕事人として頭を下げる。
立花にLINEを
打ちたかった女神が
スタジオを出ようと
した時に
濱口が女神に近づいて来て
『明日の撮影も
宜しくお願いします』と
言ってきた。
『明日の撮影?』
女神が不思議そうに
聞き返してきたので
『そうか、打ち合わせ無しの
撮影だから
まだ全部聞いていないか?』
『明日のジャックモンドの
CM撮影も俺が担当だから
宜しく』と伝えてくる。
また、この人と一緒なの?
女神の表情が
一瞬曇ったのを濱口は
見逃さなかった。
『明日の撮影は
今日の最初みたいな表情は
無しでお願いしますよ』と
みんなの前で話すと
『ハハ』っと、
その場にいたスタッフが
みんな笑う。
一人複雑な表情の女神に
濱口が近づき耳元で
『明日もキスしてあげるよ?』と
囁くと
女神が濱口から離れて
彼を睨みつけるが
濱口は大笑いをしている。
この人、嫌い
女神は改めて、
その事を心に焼き付けた。
場所は変わって
立花と棚橋が働く会社
月曜日の朝、
オフィスに着いた立花は
金曜日に武藤慶子に
強い言葉を
ぶつけていたので
どんな顔で彼女と
接したら良いのか?
困っていた。
あくまで会社の仲間として
普通に接して、いこう。
そう思っていたが武藤慶子は
体調不良で休みとなっていた。
それはそれで、助かった。
いないなら、しょうがない。
そう思って通常業務に入る。
蝶野正子も同じフロアで
働いていたが
特別、立花に甘えたり
馴れ馴れしくする事は
なかった。
今までの蝶野なら
会社内の女性陣に
昨日のデ-トを自慢して
他の女子に勝利宣言を
していた事だろう。
だが立花の彼女の存在と
自分が立花に
恋愛している事を認識した今
彼に嫌われるような事は
したくない。
蝶野が戦線離脱して
武藤慶子が休みは
チャンスと思った
他の女子社員が
立花に積極的に
話し掛けているが
蝶野は余裕で
静観している。
社内の女子との
戦いなら勝算はあった。
今度の日曜日の
池袋デ-トの約束だ。
他の女子は知らないだろう、
立花のアニメ好きの事を。
同じ趣味は強い。
今までは気に入った男に
取り込む為に
相手の好きな事に
興味を持った。
だが今回は自然体でいける。
立花の好きな事が
自分の趣味だからだ。
他のフロアの女子が
立花を野外の音楽フェスに
誘っているのが
聞こえてきたが
立花は断っていた。
会社内では、
立花さんの迷惑にならない
大人しい後輩に
徹する事にしよう。
昨夜、立花と
別れてから家に帰って
蝶野が考えた事だ。
そんな事を知らない立花は
女子社員の誘いを
やんわりと断り
自分の仕事に
取り掛かろうとする。
だが立花は
背広の胸ポケットに入れた
スマホを気にしていた。
今朝は、いつもの
女神のおはようメ-ルが
来ておらず気になっている。
昨夜、女神が送ってきた
体調を心配したLINEに
自分が返信をしてないくせに
女神から、
LINEが来てない事で
怒らせたか?と
心配になっていた。
土曜日、日曜日に会えずに
スネて
不貞腐れているくらいの
気分だった。
女神がアイドルとして
成功していくのに
自分が
邪魔になるのでは?と
思っているが
女神の事は
変わらず好きである。
小学生が好きな子に
チョッカイを
出すのと同じように
心配なら言葉じゃなく、
直接会いに来て欲しかった。
だが立花が昨夜の
女神の体調を心配した
LINEに
返信しなかった事で
女神が怒っているかも?
と思い
何て書いて送って良いのか、
わからず
結果、女神の出方を
伺っている状態だ。
女神からLINEが来たら、
すぐに返信をする為に
臨戦態勢に入っていたのだ。
だが、そんな時に限って
LINEは来ない。
女神は一睡も
していない状態でCM撮影を
していたからだ。
『立花君、ちょっと来て』
藤波係長が慌て
立花を応接室に呼ぶ。
悪いタイミングの時には
トラブルが続く。
藤波係長が受けた電話は
立花が1ケ月前に設置した
取引先の工場の
オンラインシステムが
立ち上がらないと
緊急連絡が入ったとの
事だった。
場所は群馬県のみなかみ。
目黒区に本社がある会社が
群馬県に新規工場を
建設したので
群馬県と東京都を
オンラインでつないで
双方を社内LANでつなぎ
複合機で同時に
プリントアウト出来る工事を
請け負ったものだった。
システムが、入らず
仕事にならない。
『すぐに、どうにかしてくれ』
お得意様に、
そう言われたので
藤波係長は
群馬県の隣の埼玉支社に
状況確認と修理を
お願い出来ないか?
頼んでみた。
だが埼玉支社は
新型コロナウィルスが
社内で流行っていて
何人も休んでおり
自分の支店が
応援が欲しいとの事だ。
そこで立花の今日の訪問先を
こちらの人間で分散して
ヘルプして
立花に群馬県に向かうように
指示を出す事にする。
現場で一人では
対応出来ない場合を
想定して藤波係長も
同行する事となった。
普通の月曜日で、
通常の仕事をしながら
女神のLINEを
待っているつもりが
緊急対応となり
それどころでは、
なくなっていた。
群馬県のみなかみまでは
電車で2時間半で
着くだろう。
今から行けば、お昼に着いて
午後からの復活も
可能と考えて
2人で急いで駅へと向かった。
群馬県に向かう電車の中でも
2人はノ-トパソコンを広げて
他の作業をしている。
台風が近づいており
雨風が強くて電車の遅延を
心配していたが
やがて群馬県に着いて
タクシーで工場に向かい
予定通りに、
お昼前に工場に着いた。
すぐに機械を確認したが
不調の原因が見つからない。
PC側も確認するがエラーは
見つからない。
両方にエラーが無いのに
オンラインが繋がらない?
藤波係長も首を左右に振って
お手上げ状態を説明してくる。
作業にかかり切りに
なっている立花は
待ちに待った
女神から入ったLINEに
気づく事が
出来なかったのである。
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