異世界貴族は家柄と共に！ 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

第179話 契約

ゆっくり近づく僕を見て、ルーベルトは怯えるように後ずさる。

そうさせないよう背後に土の壁を魔法で形成する。

「ヒッ！」

追い詰められた子どものように体を小さく縮こませる。

「さて、では話し合いと行こうか」

そう語りかけながら僕はアルスとレーナの方に視線を向ける。

すでに二人も戦いを終えており、敗れた進学コースの生徒たちを引き連れてこちらへと歩いて来た。

ルルドも普通コースのモブ民たちをしたがえてこちらに来る。

「は、話し合いってなんだよ！」

「まずは、立って喋れ」

渋々といった感じで、服の汚れを払いながら立ち上がったルーベルト。

それを確認して質問に答える。

「契約を結んでもらうんだよ」

「何っ！契約？」

「ああ、血の契約だ」

その言葉を聞いて、ルーベルトのみならず他の生徒たちもざわつき始める。

「血の契約」は、ただの契約ではない。命を懸けるということ。

それは魔法によって縛られ、契約を破ることはすなわち死を意味する。

とても危険な行為なのでほとんど使われないし、そのための特別な契約用紙も簡単には手に入らない。

やり方は血の契約用の紙にお互いの血を染み込ませ、詠唱するだけ。

「か、紙は手に入れたのか！？」

「当たり前だろ、僕を誰だと思っている。人数分ちゃんと用意してあるから心配するな」

希少品だが、金を積めば手に入る。

「け、契約内容は何だ？」

恐る恐るといった感じでルーベルトが言う。

「二つだ。一つは、一切僕への干渉はやめること。もう一つは、僕への協力を惜しまないこと」

「？？？」

二つ目の契約内容を聞いてルーベルトは首をひねった。

「お前も含め、ここにいる奴らは将来、親の跡を継いだり、官僚になったり、会社を立ち上げたりするんだろ。まあ、何にせよ社会的地位の高い奴らになるんだ」

血の契約の意味を理解し、そこにいた全員がゴクリと唾を飲み込んだ。

これはつまり投資だ。

彼らが利用価値のある人間になることを見越して血の契約を結ぶ。

そうすれば今後、この隣国アメルダ民主国と交渉をする際にも僕には有利に働く。

他にも裏情報を貰えたり、特別優遇されたり。

僕にしたら何でも言うことを聞いてくれる優秀な人材が一挙に六十人も手にいれることになる。

ま、奴隷契約みたいなものだがな。

「ぼ、僕らにメリットはあるのか？」

この期に及んでも、生徒代表として交渉してくる強気なルーベルト。

「今更なんだ。お前らに選択の余地なんてないだろ？敗者であり、しかも、弱みも握られているんだから」

「う、だが、」

「安心しろ。お前らのメリットも考えてある」

全員が聞き耳を立てる。

「今回お前たちが僕に対して仕出かしたことを帳消しにしてやる！」

半分ほどが、僕の発言の真意を理解できず首を傾げている。

「分からないのか？今回の一件が世間にバレればお前たちの経歴に傷がつくだろ。そうなると約束された将来も無くなるんだぞ」

僕にとっても、こいつらが落ちぶれるのは困る。

「どうだ、それでいいよな？」

全員が頷いた。

「よし、じゃあ一人ずつ名前を書いていけ。言っとくが、偽名とかは無しだぞ。すぐにバレるからな」

こうして僕は全員と血の契約を結んだ。

もちろん、僕が優位な形で。

全てを終わらせた僕は、泣き崩れたり、自分の弱さを痛感したり、誰かに当たろうとしたりしている生徒たちを置いて帰ろうとする。

そこにルルドが近づいてくる。

「ありがとう、ルイくん！」

思いっきり頭を下げる。

「今までいじめられてきたことを誰にも言えず、でもどこかで見返そうと思っていた気持ちが晴れたよ。本当にありがとう！」

最初の拒絶が嘘のように明るい表情でお礼を言ってくる。

「別にお前のためじゃない。僕が満足したいからやっただけだ」

こんな平民のために誰がこんなことをするか。

僕にちょっかいをかけてきたから潰したまでだ！

「ルイ様も素直じゃありませんね」

「ルイ兄様。世間ではそういう発言はツンデレと言うのですよ」

何故か要らぬことを言い出すアルスとレーナたち。

本当にうざい奴らだ。

「お前ら、僕に何の恨みがある！」

「いえ、別に。予定にない、転移魔法で数名の生徒を押し付けられたことに腹を立てているわけではありません」

絶対それだろ！

・・・・・・まあ、いい。

「それよりだ。おいルルド！お前はまだ血の契約をしていないのだろ？」

「そうだけど・・・まさか！」

「ああ、そうだ！お前もやれ！」

呆れるアルスとレーナ。

「まあ、これもルイ兄様らしい」

「ですね」

僕はもう一人、手駒をゲットした！