第150話 金の力で!

初日から配下を得た僕。


だが、クラスからはあきらかに仲間はずれにされていた。


アルスとレーナはよく話しかけられるのに、僕には誰も挨拶にも来ない。


たまに二人は裏に呼ばれてコソコソと話をしていて、何を話しているか聞いても「別に」と言うだけ。


それだけならまだしも二人の様子がおかしい。


突然いつもの帰り道から別のルートを勧めてきたり、早く登校させようとしたり…


その時の二人の表情は、何故かいつもより笑顔?!


普段と違う彼らの振る舞いを不気味に感じながらも、数日が過ぎた。



「それでは、実戦授業を始めます!」


このクラスに来て初めての実戦授業が行われる。


カリキュラムは母国の学園と変わりはない。


普通に座学の授業があり、実戦授業もある。


相違点といえば、レベルが学園と比べて高いということ。


そして一学期に一回テストがあり、基準以上の点を取らないと退学になるシステムが存在することだ。


留学中は存分に羽根を伸ばして、悠々自適に学生生活を過ごしたい。


だから、興味ないものはテキトーに済ませたい。と言っても、落第するほど僕もバカではない。


ま、もちろん、万が一には金で解決するつもりだが。



「・・・ルイ君?その二人は誰ですか?」


授業を始めようとしていた先生だが、不意にこちらの方に顔を向ける。


「ん?誰のことだ?」

「あなたの両脇にいる大男の方々ですよ!」

「ああ、ジョンとマイケルのことか」


見る者を圧倒する、ゆうに百九十はあるだろう背丈に、着衣ごしにもわかるムキムキのゴリマッチョ。


黒いスーツを着、サングラスを掛けて目を隠す二人。


「ちゃんと学園には許可を取りましたよ」

「そ、そうですか。しかし何故この二人が授業に出ているのですか?」

「それはもちろん、僕の代わりに実戦授業に出てもらうためです」

「・・・えぇ!!!」


先生も生徒も驚愕の表情でこちらを見る。


「そ、それは流石に駄目だよ!自分自身の力で―」

「学校に許可を貰ったので大丈夫です」


もちろん金の力で!


今回の提案をしてきたのは実はアルスたちだった。


もし、授業が面倒くさいのであれば受ける必要はない、と助言してきた。


それを聞いて、僕は或る一つの事をしようと決めた。


それは、この国でどれだけ無茶苦茶できるか試す事だ!!!


腐ったこの国、いやこの学校では、金を払えば大体は許可が貰えることがここ数日で分かった。


入学も、授業も、試験も全て解決できるだろう。


「ですが、ルイ君!それでは自分のためになりませんよ!」


変な正義感を持ち出してくる先生。


「いえいえ、ご心配には及びません。大丈夫です。僕、最強だから!」

「そういう問題ではありません!」


じゃあ、どういう問題なんだ?


僕にしたら、実戦授業は休みたい。


こちらに来ても毎朝セバスに稽古はさせられているし、休みの日はダンジョンにも潜ったりしている。


で、あるならば、この授業を受けなくても別に問題ないだろう。


「先生!授業が進みません。そんな勝手な奴、放っておいて授業を進めましょうよ!」


一人の生徒が挙手して発言をする。


「し、しかし、」

「そうですよ、放っておきましょう!」

「かまっているだけ時間の無駄です!」

「早く進めてください!」


クラス中、口々に文句を言い出す。


ふとそちらの方を見ると、蔑みの目を僕に向ける生徒たちが視野に映った。


その光景は、僕にどこか前世を思い出させた。


人間なんて平等でもなんでもない。


必ず格差が生まれる。


いかにも優しい言葉を掛け、弱者を憐れむようにしながらも、どこかで自分より劣る者を蔑んでいる目。


自分たちは善良です!潔白です!みたいな顔つきで自分たちと違う奴らを攻撃する。


「ククククク」


自然と笑みが溢れる。


そうだ!僕は、こういう欺瞞的なところをこの国に求めて来たんだ。


ここ数日、このクラスを観察して理解した事がある。


それは、クラスの中にはいくつかのグループがあり、そこに入れず仲間はずれになっている生徒たちもいることだ。


僕だけじゃない。


何人か、いじめられている。


他の生徒のストレスの捌け口にされている。


結局、人間の間に平等はないし上下格差は必ず生まれる。


そういう現実はあるが、十代のガキにはそんな洞察もできないからと、この国の大人たちは自分の子供たちに「平等」を押し付ける。


だがそれも、後、数年も経てば隠された真の現実に彼らも気づくだろう。


本当の力というものがどういうものか、そういう奴らに今からお見舞いしてやりたい!


それもこれも貴族に転生したからこそできることだ。



めちゃくちゃにしてやるぜ!!!!!!!



不敵な笑みが止まらないルイ。


そんなルイのたくらみは、アルスとレーナにはもちろん想定内だったが…


―――


明日も投稿します!

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