第143話 いざ留学へ!
「何か言うことはあるか?」
父の書斎に呼ばれた僕とアルス、レーナ。
「どの件ですか?」
「一応自覚はあるんだな!」
「ええ、まあ。流石に僕にも心当たりはありますが……転移魔法の件ですか?魔法協会の件ですか?決闘の件ですか?ナーレの件ですか?学園祭の件ですか?あ、同級生をボコボコにしてしまったことについてですか?」
「・・・ふむ?最後の三つは俺の知らないことのようだが……」
そうなのか・・・
ああ、そう言えば、セバスにも言っていなかった件がいくつかあったな。
「とりあえず、」
「とりあえずじゃない!」
ツッコまれるがスルーする。
「父上、それでお話というのは?」
「・・・そうだった。お前と喋るといつも話が逸れる」
そう愚痴をこぼしながら父は話し始めた。
「先程学園から留学通知が来た。お前の思惑通り、一年間どこかへ留学をしてもらう」
「そうですか」
うんうん、作戦通りだな。
「どこに行かされるか聞きたくないのか?」
「留学先は父上が決められるのですよね?」
「ああ、そうだ」
だったら何となく予想はできる。
「アメルダ民主国だ」
「そうですか」
「驚かないんだな?」
アメルダ民主国。第三大陸の北にある第一大陸の中でもフランシーダ帝国に最も近い海を挟んだ向かい側にある国家だ。
名前の通り、民主主義の国である。
議会を中心とした大統領制で貴族という存在がいない国。
前世とよく似た国だ。
三百年続く歴史ある国で、その間一度も大統領制が崩れたことはない。
僕の敵とも言える国家だ。
「何故ニヤニヤしているんだ?嫌がらないのか?」
父が聞いてくる。
僕はそれに満面の笑みで答えた。
「まさか僕が貴族社会を否定するような国に行くのを嫌がるとお思いですか?」
「そう思っていたぞ。お前が少しでも苦労するところに送ろうと思ったんだ」
なるほど、だったら失敗でしたね!
「父上、僕は嫌がりません。むしろ有難いと思っています。貴族の強さを示すまたとない良い機会を頂けたことに」
「お前・・・」
民主主義だって?
僕を殺したやつじゃないか!
そいつとまた対面できるんだ。
「ルイ、あの国は俺ら貴族にとっては大変居づらい国だ。コネも権力も通じず、家柄も自慢できない。俺も学生の頃、特権的身分であることに天狗になっていたからか、親父に行ってこいと命じられたよ。案の定、向こうではものすごく苦労した。鼻はへし折られるのは勿論のこと、最後は、威張っていた自分が馬鹿に思えてくるほど洗脳社会、矯正圧力が酷い」
一拍置いて続ける。
「それでも本当に行くか?」
「そりゃ、行きますよ!」
「・・・即答なのか?」
それはそうだ。
「父上はあの国を勘違いしています」
「勘違い?」
「ええ、あの国は民主主義などという国ではありません。むしろ、資本主義という国です」
「???」
もしかして、この世界には資本主義という言葉が存在しないのか?
僕はとりあえず父に資本主義について説明する。
「資本主義というのは、簡単に言うと自由に土地や物などの【資本】を個人が持つことが出来、自由に商売も行える仕組みのことです」
「ならば、まさにあの国そのものだな」
アメルダ民主国はこの異世界において、商会を簡単に始めることができる数少ない国だ。
フランシーダ帝国は商会を開くのに一定のお金を収めないといけないため、新人は有名商会で一定数経験を積んでから独立するか、旅をしながら商売をする行商から始めなければならない。
ただ、アメルダでは誰でもどこでもいつでもいろいろなことを始められる、所謂、自由と呼ばれる国だ。
ただ、あくまで資本主義だ。
「ルイ、お前は何を企んでいる?」
「いえいえ、何も」
この
もっと言うと三百年続いているからこそ、内部が腐っているあの国で簡単に生きていける方法がある。
「ルイ兄様。まさかあれをやるつもりですか?」
「アルスは知っているのか?」
「いえ、父上。ただルイ兄様ならやりそうな事なので」
僕はアルスを睨む。
するとそれに同調する者が現れた。
「私も予想できますね。ルイ様だからこそやりそうなこと」
「レーナもわかるのか・・・あ、俺も分かったぞ」
「確かに有効ですし、ルイ様らしいです。でも、本当に行けるのかなという疑問もあります」
それなら問題ない。
すでに実体験済みだ。
「大丈夫だ。金がすべての国だ。バレなければいいだけ。ある意味、貴族にとって生きやすい街だぞ」
「お前は本当に俺の子か?」
「ええ、そうですよ」
ただし、民主主義に殺されたという前世、肩書きを持つ子です!
ーーー
もう少しで学園編が終わります。
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