第142話 決着

すべてを読んでいた僕。


敵が最も注意するのは僕の魔法であると。


特に強大な水魔法。


リリスには防御魔法が無いので防ぐすべがない。


僕はあえて接近戦になるように、近づいてきたリリスを誘うよう半歩下がった。


その後の剣とのぶつかり合いのとき、こちらは敢えて隙を見せて攻撃を誘発。


その後はリリスが間近まで接近してくればいい。



剣を離し、拳でこちらへ攻撃してくるリリスを見てほくそ笑む。


僕は右手でその拳から守るように前に出す。


そしてそのまま転移魔法を使った。


左手に。


剣を握った左手だけリリスの背後に転移させ。剣の力でリリスの横腹を殴る。


「うぐっ!」


急な攻撃に対処できず、体をよろめかせるリリス。


もちろんそれを見逃すわけもなく、拳を防ごうとしていた右手で魔法を作り出していく。


リリスがスキルを使おうとしたときには、すでに放つ準備は整っていた。


これで決着がつく。


そう思い、僕はニヤニヤしながら言う。


「じぁあねぇ〜〜〜」


威力の強い水魔法の水圧で放った方向の壁に凹みができる。


もろに食らったリリスはその場で膝から崩れていた。


だがしばらくして立ち上がろうとするが周囲に剣は見当たらない。


そんな姿が煩わしく思えた僕は、ゆっくりとリリスに近づいていく。


「おい!ルイ!すでに勝負は終わっているぞ!」


外野の皇子がうるさいが無視する。


リリスを目の前にした僕は間髪入れずに持ち上げて、そのまま風魔法で逆側の壁へと叩きつける。


「外道な野郎め!」


???


これは教育ぞ?


平民ごときが僕に勝てると思ったことへの。


・・・正直に言うと、こいつは危険すぎる。


僕の脅威となっていつか襲いかかってくるかもしれない。


その時、勝てるだろうか?


いや、勝つには勝つ・・・そんな自信を言えないぐらいに強い。


今のおそらくスキル第一段階時点で僕より少し弱いぐらい。


これが、もし段階をどんどん上げていったとき対抗手段があるのだろうか?


そう思ってしまうからこそ、ここで心を挫いておきたい。


あるいは二度と戦えない体にしてしまえばいいのかもしれない。


だから僕は今、リリスをボコボコにしている。


何度も何度も地面に叩きつけていく。


死んでも構わない。


たまに反撃をしてくるが、体力のないリリスの攻撃は簡単にいなせる。


会場中でギャラリーの悲鳴が聞こえてくるが聞こえないようにする。


僕が八回目の攻撃をしようとした時、割って入る者たちがいた。


アレックスら三人と、レーナだった。


僕はレーナを睨みながら聞く。


「なぜ邪魔をする?まだ決闘は終わっていないぞ?」

「ルイ様。決闘というのはどちらかが戦闘不能になった場合はその時点で終わりです」

「何を言う?それは審判がいた時だろ?これは普通の生死をかけた決闘だぞ!」

「いえ、違いますよ。この試合の審判は私です」


なんだって!?


「そういう嘘を言うな!」

「いえ、嘘ではありません。この会場を借りるときに使った名前は私の名前です。あくまで保証人がルイ様なだけで」


そうだった、めんどくさかったからレーナに任せていたんだ。


クソ、裏目に出てしまったか・・・だが、


「保証人である僕が命ずる!これを正式な決闘と―」

「却下します!」

「何でだよ!?」


クソ、普通に却下された。


こんな馬鹿げた会話をしていたら、いつの間にかリリスたちがいなくなってしまった。


「お前、時間稼ぎだな」

「何のことでしょうか?」


そのレーナのとぼけ顔には妙に品があるのがこれまたウザい!


「・・・お前、ナーレとして行動してリリスに情でも移ったか?」

「・まさか、そんなことはありません」


かすかに言い淀んだのは見逃さなかったが・・・まあ、仕方ないと思うしかない。


よくよく考えればこいつはまだ子供。


そこまできっぱりと何かを切り捨てられるわけではない。


だからといって優しくはしないが。


「ルイ兄様。そろそろラオス先生が来るそうです」

「手はず通り行くな?」

「ええ、向こうとはしっかりとリハーサルは終えています」


よし、だったら大丈夫だな。


この学園とオサラバするか!

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