第138話 決闘
「な、何でそんな事をいきなり言い出すの!?私、ルイ君に何かした?傷つけたりした?・・・何もやってないじゃない!!」
「様を付けろ、様を!この平民が!!」
僕はパニックを起こしているリリスを見つめた。
「いいか、リリスよく聞け!僕はお前のような平民が学園にいること自体、反吐が出る。ここは、家柄のある由緒正しい貴族様だからこそいて良い場所なのだ。だから、選ばれた人間ではない平民のお前と一緒の空気を吸うだけでも嫌になるんだよ!!」
身分も低く、魔法も使えない。
そうだリリス。お前は二つの意味で選ばれなかった存在なのだ。
「おい、ルイ!公爵家の人間だろうと言って良いことと悪いことがあるだろ!」
「側室の子は黙れ!」
アレックスに向かって言う。
「なっ、アレックス殿下になんて言い草だ!」
「ふん、家族に捨てられた無能も黙っとけ!」
ハンネスを一瞥して言う。
「くそっ、偉そうにしやがって!」
「ああ、偉いぞ!実家から逃げ出したお前とは天地ほど違うからな!」
フレッドに向かって軽蔑を込めて言い返した。
「ルイ、俺を側室の子と言おうが構わない。だが、俺の友人を馬鹿にするような発言は絶対許さないぞ!」
「何故に?」
「それは人としてやってはいけないことだからだ!そんなことをしたら、いつか必ず痛い目に遭うぞ!」
こいつらは本当に理解していない。
この国は身分、家柄、血筋が大事なのだ。
正義だの、悪だのは関係ない。
身分、家柄、血筋さえあれば何したっていいんだ。
何を言ってもいいんだ!
「痛い目に合わせるなら、合わせてみろ!第三皇子ごときがこの僕に口答えできるとでも思っているのか!」
もし仮に僕とアレックスが政治的に対立した場合、向こうには誰も味方する者はいない。
なにしろ男爵家の娘が自分の母親だから大した後ろ盾もないし、皇室だって、公爵家の長男と皇位継承順位も低い第三皇子のどっちにつくかと問われれば、百パーこちらの味方につくだろう。
ブルボン公爵家を敵に回すことは出来ない。
「お前らが、僕に何が出来るっていうんだ?この嫌われ者の集まりが!」
全員の顔色が明らかに変わった。
こいつらの過去ぐらいは前世の時に小説で読んだ。
家で厄介者扱いされていただの、家族に捨てられただの・・・
そういう部分は同情できなくもない。
前世の実家では、僕も同じ境遇にあったからだ。
だが、こいつらと僕が決定的に違ったのは、その時周りに救いの手があったかなかったかだ。
こいつらは結局、仲間を見つけて同じ境遇を分かち合った。
常に行動を共にし互いを支え合い、傷を舐め合ってきた。
だが、前世の僕にはそういう存在はいなかった。
差し伸べてくれる手も、助けてくれる仲間もいなかった。
自分の生き方が間違っていたんだ、と気づいた時にはすでに大人だった。
そして流されるままに生きた。
希望もないし、人生でやりたかったこともない。
ある意味、前世の僕がこいつらのふるまいを小説で読んで怒りを覚えたのは、そういう自分との違いに憤ったからかもしれない。
それぞれ苦悩がありながらも自分を誤魔化し、欺き、毎日をキラキラさせて偽りの生活を送っている奴ら。
なに?そんなのは僕のただのやっかみ、妬み、理不尽な逆恨みだって?
そうだ、そうだとも!
憎いし、嫌いだし、羨ましくも思う。
「許可のない決闘は校則に違反する、ということは分かっているの!?」
「ああ、知ってるさ!」
それでも貴様らを潰さなければならない。
この世界は理不尽に出来ている。
だが、その理不尽さは今は僕のためにあるようなものだ。
それを全力で活かさせてもらう。
・・・なかなかリリスは動かない。
というより、「戦う」と言わない。
他の三人と何やら話している。
流石に遅すぎる。
僕は苛ついてきたので奴らを煽った。
「おい、まだかよ!?」
「やるとは言ってないわ!」
「平民は判断が遅いな!」
言葉を続ける。
「なあ、リリス。そこの三人とつるんでいるから知らないかもしれないが、お前の居場所はここじゃない。良くて売春宿だぞ。ククク・・・」
「なっ?」
僕の言葉に周囲の全員が唖然とする。
だが、少し様子がおかしい。
少ししてアルスが僕に寄って来て耳打ちする。
「ルイ兄様。今の時代、娼婦というのは地位のある職業なのですよ。地位の低かった時代は数年前までです」
そ、そうなのか・・・時代が進んだな。
まさか地位が向上しているとは。
まあ僕も前世では彼女たちにお世話になっていたし・・・悪くは言わないでおこう。
「と、とりあえずリリス。貴様は僕と戦わなければならない!でないと、お前に関わった全ての奴を殺す」
はったりではない。本気で言っている。
でないと、仲間想いなリリスは本気で僕に向かって来ないだろう。
本気で戦わなければ後で魔法協会にも文句を言われる。
「ルイ君、私だけならまだしも他の人にも危害を加えようとするのは絶対に許さないわ!!」
お!リリスの目が本気になったぞ。
じゃあ、やりますか!
「リリス・・・」
「大丈夫だよ、アレックス君!私が倒すから」
何とも頼もしい言葉だ。
だが、その余裕も今のうちだな。
「それでは、行くぞ!」
僕はすぐさま転移魔法を展開させた。
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