学園編 4章

第113話 新たな魔法


夏休みが終わり、新学期が始まる。


と言っても何かが変わることはない。


僕らはいつものように登校をして、勉学を適当にこなし、訓練を遊び感覚で行い、帰るだけだ。


最近の変わったことといえば、とある魔法を開発していることだろう。



「本気で作る気ですか、ルイ兄様?」


先程からアルスは僕の意見を否定する。


「さっきから何で否定する?くどいぞ」

「それはまぁ、その実験が危険だからです」


その意見に僕はやれやれと言った感じで肩をすくめて首を振る。


「危険だと?この僕が!?」


僕は自分が危ない目に合うような事はしたことがない。


・・・アルマー侯爵家の件も、コカトリスの時も勝算があって挑んだんだ。


僕は不可能なことが嫌いだ。


前世でもこの異世界でも英雄となった者は常に不可能なことに挑んできた、と言われるが・・・それは馬鹿なことだと思う。


確実で、絶対なことをやればいいのだ。


そして、確実で絶対ではなくてもそれに変えてけばいいだけ。


「とりあえず、僕の心配は無用だ。失敗するはずがない!」

やるんだ、危険になんてなるわけがない。

僕は自信満々に言う。


「それにしても、転移魔法ですか・・・」


僕が実験しようと思っているのが、転移魔法だ。


瞬間移動の【ワープ】と似ている、というかそれを応用する同じ魔法だ。


瞬間移動は設置型、転移魔法は展開型である。


設置型は地面に魔法陣を描いてその上で詠唱する仕組みとなっている。


瞬間移動も学園とダンジョンを繋いでいる。


展開型は一般的に使われる魔力を魔法陣へと変化させる。


詠唱が必要なのはどちらも同じだが、便利さで言ったら展開型の方がよい。


僕が使いたい転移魔法は、いまだに実現されていない魔法の一つ。


ある地点からある地点まで、一瞬で行ける優れものである瞬間魔法が必要不可欠である。


だが、それが難しい。


瞬間移動の魔法陣を見たが、あれをすぐに理解することが出来ない。


複雑な図式と大量の魔力。


それらが必要、だからこそこれまで実現不可能だった。


だが、僕には実績がある!


無詠唱魔法を使えるようになったという実績が。


そう自負し、実験を始める。



まずは魔法陣をしっかりと理解しなければならない。


僕は瞬間移動の魔法陣が描かれた場所への立ち入りを学園に求めた。


難色を示されたが、誠心誠意(アルスが言うには脅し)お願いしたら許可が下りた。


僕は早速直行して、写していく。


流石に魔法陣の仕組みは専門でも無いから最初は理解できなかった。


そこで使えたのがレーナだ。


レーナは才女と言われていただけあって魔法陣についても詳しかった。


「魔法陣については色々と議論が交わされてきて、ある程度のルールがあります。今は詳しく説明しませんが、この瞬間移動の魔法陣は二つの魔法陣を繋いで成り立つものです」


二つを繋ぐ???


あー確かにダンジョンにも同じ奴があって帰ってこれたな。


「でも、使い分けれるのか?僕らと同じ魔法陣を使ったはずのBグループがどうして別の道へと行ける?」


僕の疑問にレーナが答える。


「恐らく二重になっているのだと思います」

「二重?」

「魔法陣を二つ重ねて描くことです。微妙な違いがあり、流す魔力の流れで使い分けられているのだと思います」


・・・ややこしすぎだろ。


「で、その魔法陣は再現可能なのか?」


僕の質問に顔を顰める。


「難しいですよ。まず、瞬間移動の魔法陣を描くことさえ難易度が高いです。恐らく一日は要します。更に二つ必要。人間が詠唱して作り出せるものではありません」


レーナの言葉に僕は考え込む。


前世とは違い、無から有を作り出せる魔法が存在するこの世界。


都合が良いように見えて、意外にもめんどくさい世界だ。


全てを生み出せるわけではないし、作れるわけでもない。


でも、不可能ではない。


不可能では無いなら絶対できる。


何せ僕はブルボン公爵家という選ばれた家柄を持つ選ばれた人間なのだから。


しばらく考え込んでいた僕はとある妙案を思いついた。

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