第16話 実力
この国のお金の単位はドール。貨幣は上から金貨、大銀貨、小銀貨、大銅貨、小銅貨、石貨の六種類。
石貨が一ドール、小銅貨が十ドール、大銅貨は100ドール、小銀貨が500ドール、大銀貨が1000ドール、金貨が一万ドールとなっている。
ドールは貨幣によってばらつきはあるが、金貨は一枚日本円で今は二十〜三十万ほど。
レーナは300万〜450万ほどとなった。
ちなみに僕のお小遣いは一週間で大銀貨一枚。
平民の一般家庭の一ヶ月の給料が大体、小銀貨一枚と大銅貨少しと言った感じだ。
まあ、それは良いとして。
全ての競りが終わると、買った者たちは商品を受け取りに向かう。
僕らは呼ばれた部屋へと向かう。
「どうぞ、お座りください」
部屋に入ると早速奴隷契約が始まる。
座って暫く待っていると、レーナが連れてこられた。
相変わらずボロボロな服を着ているレーナだが、姿は元敵ながら美しいと言わざる負えない。
が、目は未だに虚ろだ。
「こちらの商品でお間違えなかったでしょうか?」
僕は聞かれ頷く。
しかし、違和感しか無い。人を商品呼ばわりするのは、いくら僕でも慣れない。
「それではここに血印を」
慣れた手付きで売買人はレーナのへその下あたりに契約の魔法陣を描く。
僕は言われるがまま、持っていた剣で指を少し切って血を出す。
そのまま親指をその魔法陣に当てる。
「う”、うう」
魔法陣が一瞬光り、レーナは痛みを我慢する声を上げる。
「これにて契約完了でございます」
売買人はニッコリと言う。
どうやらこれで終わりらしい。意外と簡単だった。
「付きましては、代金の十五万ドールですが」
揉み手をしてすり寄ってくるので、僕はフードを脱いで顔を見せて言う。
「ブルボン家のルイと言えば、僕の金を預けている商業ギルドに行くと貰える」
「こ、これはこれは、ブルボン家の嫡男様でしたか。今後ともよしなにお願いします」
「ああ、また面白いのが入ったら言ってくれ」
「はい」
そんな話を終えて、その場を後にした。
もちろん三人の配下を連れて。
「ルイ兄様はあのような場でも堂々としていてかっこよかったです」
「そうか?アルスも慣れるといいぞ」
帰る途中、アルスに何故か憧れられた。
前世で経験は無いが、別に身構えるほどの場所でもない。
「そうですね・・・坊っちゃまはしっかりしすぎています。何回か来たことある私でも身構えてしまいますよ」
「そういうものなのか」
オールドは来たことがあるのか。
家にも何人か奴隷はいるし、両親の護衛で来たのだろう。
そんな他愛もない話をしながら路地裏を歩く。
相変わらずだんまりのレーナ。
手足には枷が嵌められており、オールドが引っ張る感じで歩かせている。
「・・・本当にこの娘で良かったのですか?」
唐突にオールドが聞いてくる。
「どういうことだ」
「いえ、ただ、元貴族の娘って言うだけで買われたのでは無いかと心配で、その〜」
「大丈夫だ。そういう用途で使おうとは思っていない。単純に戦闘能力があるからだ」
「そう、何ですか!?」
オールドは驚いたようにレーナを見るが、とてもそうは見えないため首を傾げる。
「ああ。貴族界では有名人だったよ、天才として」
僕は一瞥するが、あいも変わらず聞いているのか分からない顔をしている。
「ん?」
路地裏を出る直前、気配を感じる。
「坊っちゃま。アルスも」
「ああ、囲われたな」
狭い路地裏で前後を武装した奴らに囲まれる。
二人はすぐさま剣を抜く。だが、敵は数十人。
「やあやあ、そこの坊主。どこの商家のボンボンか知らねえが、その奴隷を置いて行きな。そうすれば命だけは助けてやる」
僕の正面の武装集団の後方から上から目線で言われる。
豚のように肥えた腹。顎のラインが分からない顔立ち。
顔を見て、最後まで競りを僕と争った奴だと思い出した。たしか、商人だったかな?
「なるほど、僕に取られたから欲しいから奪いに来たと」
「ふん、お前のようなガキには勿体ないからな」
はぁ〜こんな目先の事に囚われている奴が商人とは・・・
ちょうどいい、レーナの力も見てみるか。
自分でやってもいいが、配下の実力を試すのも上司の役目だ。
「レーナに命じる。こいつら全て、そこの馬鹿商人以外は倒せ」
コクッ
僕が命じると虚ろな目をしながらも頷いた。
本当に大丈夫か?と一瞬心配になったが、どうやら杞憂だった。
「眠れる民の、糧のため、夢を見よ、【ラー・ラー・スリープ】」
ボソボソと詠唱する。すると足元に大きな魔法陣ができ、周囲に煙を出す。
もっともその煙は僕らを避けるように周囲へと散らばる。
器用にも指示した通り馬鹿商人には届かないぐらいまで調整されており、武装した奴らだけを眠らせた。
「「おお!」」
「ば、馬鹿な!」
アルスとオールドは感心したような声を上げるが、馬鹿商人は守ってくれるやつがいなくなり、怯えた様子で尻もちをつく。
僕はそんなみっともない姿のやつに近づいていく。
「わ、私に、て、手を出してお、置いてタダで、ひっ!」
うるさいその口を黙らせるため剣を抜く。
「お前こそ僕を誰だと思っているんだ?」
「ぇえ!」
フードを脱ぐと驚愕の表情を浮かべた。
「僕はこの街を治めるブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボンだぞ!」
この街で一番偉いのだ!
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